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嘘の告白  作者: かっきー
17/47

十七話 動き出す

「高木君・・・やっぱり玲奈が・・・」


「早見がいるし大丈夫だと思うよ」


追跡隊を抜けた高木と桜井は近くのファミレスに入り、二人でいた。高木は最初から乗り気ではなかったが、桜井は笠井がまだ心配の用でそわそわしている。なぜこうなったのかは数分前にさかのぼる。



映画館を出て早見と笠井のデート追跡をつづけようとしたが、高木は桜井を別の場所に引き付けた。


「桜井さん・・・遊ばないか?」


「えっ?えぇぇぇぇぇ!?な、なななななに何!?」


「落ち着いて・・・深呼吸」


スーハー・・・スーハー・・・


「それってつまり・・・デートですか?」


「まぁ、そういうことになるね」


「ででででででで・・・デートですか!?」


「深呼吸」


スーハー・・・スーハー・・・


さっきもこんなやり取りした。


「落ちつきました」


「さっきからキャラ崩壊してるよ」


「でも、私とデート・・・」


ボンッ


デートって呟くだけで・・・


「頭から湯気出てる・・・嫌ならかまわないけど」


「いえ、ぜひ!!ジェヒ!!お願いしましゅ」


なんか目がグルグルしてる・・・落ち着こう


「噛みすぎ・・・どこか行きたいところある?」


「そうですね・・・」


桜井が考え込むと・・・


「軽くお茶でも・・・」


「そうだね、ファミレスに行こうか」



そして今に至る。


「今日はおごってあげるよ、パフェでもドリンクでも良いよ」


「いえ、そんなこと・・・」


「遠慮しないで」


メニューを見る。遠慮はしないでと言ったが、遠慮してしまう。


「じゃあ・・・ドリンクバーで」


「僕も・・・そうだな、軽く食べようかな」


注文を終えて、二人でドリンクを持ってきて、高木はガーリックトーストを注文した。


「実は・・・話があるんだ」


「はい、何ですか?」


そう、正直デートではなく桜井に伝えたいことが高木にはあった。それは早見と話した屋上の出来事。


「君は・・・茨木洋介の娘ではない」


「・・・あり得ません」


すぐさま否定した。ふてくされるようにドリンクを飲む。明らか不機嫌になってしまったが聞いた話だ。事実とも限らないのは確かだ。


「産んだ親は違うみたいだ」


「・・・どこの情報ですか?」


恐る恐る聞いてくる。そうだろう。自分を苦しめてきた過去を払拭できるかもしれないのだから。


「早見が永岡堅太と接触したらしい・・・その時に聞いた。それともうひとつ・・・君と笠井玲奈と永岡堅太の話が噛み合わない」


「え?」


「君はあったことある?笠井さんの親」


「いえ・・・そう言えば会ったことないですね」


これ以上は彼女は知らないらしい。おそらく進展はないだろう。


「・・・ここからは君次第だが、確実ではないけど会ってみる?永岡堅太と」


「どこですか?」


「怪しいバーだよ。なんかのため早見に聞いたら学校の近くみたいだ・・・地図はこれ。真実を知るか・・・自分で決めな」


そう言うと、席を立ち二人分の料金を置いてファミレスを出た。


「・・・逃げたままは嫌だ・・・現実と向き合うんだ。行こう・・・」


決心した。桜井の止まっていた歯車は動き出した。


桜井が訪れたのはあのバーだ。もらった地図通りに訪れた場所におずれると怪しい雰囲気だが、オープンはしているようだ。いるのだろうか?だが、いたところで何を話せばいいのか?そんな不安と葛藤する。しかし、逃げないと決めた彼女は勇気を持って扉を開ける。


「いらっしゃい・・・悪いがお嬢さんここはお酒を売る場所だ。身分証出しな。未成年には売れない」


マスターがグラスを磨きながらそう尋ねる。だが、用は酒ではない。


「あの・・・永岡堅太さんを知りませんか?」


「ああ?確か誘拐犯だっけか?なんだ探偵ごっこか?」


そう言ってマスターは無関係を装っているように振る舞う。確かにマスターはなぜ匿っているのだろう?そんなことを考えて話は進まないので賭けではあるがある決心をする。


「桜井春香です」


「・・・!!」


マスターが磨いてたグラスを落としパリーンッと割れてしまった。その反応を見て相当動揺していることがわかる。


「知ってるんですね!?」


「ああ、常連客だよ。それに、関わりがあるだろ?」


「はい・・・」


答えにくそうに答える。ついに真実を知ってしまう。自分が望んだことだが、正直怖い。


「そこのカウンターの端の席自由に使え」


気を使ってくれたのかマスターがコーヒーを淹れて桜井に差し出す。


「ありがとうございます」


「ちゃんと何を話すかを考えろよ」


そう言うと背を向けて、お店の準備に入った。最初は緊張して出されたコーヒーも口をつけなかったが、徐々にリラックスをしていき、コーヒーを口にして時間を待った。




そして数分後、ドアが開き目的の人物が来店した。


「マスター・・・いつもの」


いつも通りの注文をし、いつものカウンター席につく。


「ああ、あとお客さんだよ」


「・・・客?俺に?」


そう言ってマスターが指さす方向に顔を向ける。その顔を見てもいまいちピンと来ていないようなので自分から話に行く。


「・・・桜井春香です」


「えっ!?」


その名を聞き、思わず驚きの声をあげてしまった。


「・・・早見くんから聞いたのですが・・・私は・・・茨木洋介の娘ではないって本当ですか?」


「言ったのかアイツ・・・・・・ああ」


長い沈黙の後。そう言われた。聞いた瞬間肩の荷が下りたような気がした長い呪縛から解放されたような感じ。


「犯罪者の娘ではないってことですよね・・・」


「そうだ」


その後早見にも話した昔の関係について桜井にもすべて話した。実は誘拐したのは春香のこと。洋平がどうしてそんな行動をとってしまった。


「あまり驚かないのか?」


「ええ、予想はしてました。茨木洋平の言うことだったので・・・信じられなかった」


口ではこんなことを言っているが、内心驚いてはいる。だが、思ったよりは・・・という桜井自身も不思議な感覚ではあった。


「・・・玲奈は元気か?」


「・・・ええ、早見くんとデートでしたよ」


「そうか・・・あいつにも男が出来たか・・・」


犯罪者の娘だが彼氏がいる。娘を守ってくれる存在がいる。父親としては嬉しきこと限りない。


「・・・幸せそうですよ」


昔の笠井を知っている桜井も貰い泣きをしそうになる。


「そうだな・・・幸せなんだな・・・」


少しでも誰かがやさしくすれば泣き出してしまう。だが、それをぐっとこらえて、桜井にもやるべきことを言う。そう、桜井の家庭を見つけること。


「えっ!?・・・いいんですか?」


「ああ・・・お前と玲奈には苦痛な人生を歩ませてしまった・・・だから、もっと幸せになってほしい」


「お父さんとお母さんは・・・いるのでしょうか・・・」


「探す。絶対に見つける」


そう、彼は犯罪を犯した身。しかし、彼を信用してもいいのかという葛藤もあった。だが、娘のため、親友のために、他人である私のために動いてくれているのだ。信用しないわけにもいかない。


「・・・文化祭」


「えっ?」


「文化祭で軽音楽部でステージがあります。・・・玲奈はボーカルで出ます」


「玲奈は昔から歌が好きだからな・・・元気に歌ってる姿を見たいな。娘の晴れ舞台を・・・」


「玲奈も喜ぶ・・・かどうかはわかりませんが」


「何かあったときのために・・・連絡先を教えてもらえますか?」


「ああ・・・」


携帯番号を赤外線で登録した。


「もう夜も遅い・・・帰った方がいい」


時刻を見ると20時を廻っていた。


「はい、今日はこれてよかったです・・・ありがとうございました」


そういって、お会計をしようとしたのだが、コーヒー代はいらないとのこと、なのでそのまま店を出て行った。とても清々しい顔だ。


「はぁ・・・人に礼を言われたのはかなり久しぶりだ」


ため息。いや、安堵の息だ。一つの重荷が下りた。彼女と真っ向に話し合えてよかった。


「良いじゃねぇか・・・」


目の前にはお洒落なグラスにシャンパンが入ってる。


「俺の奢りだ。うちの最高の酒」


「マスター・・・サンキュー」


シャンパンを一口飲みなにかをやり遂げた気がした。


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