十二話 桜井歓迎会
今日は日曜日で学校は休みだが、お客さんが来る。まぁ、客と言ってもいつものメンツだ。
「おいおいーお客様がいらっしゃっているというのにお茶も出んのかぁ!」
「ほんまやな。茶も出んなんて飽きませんわ」
リビングのテーブルで偉そうに座っている大西と前島が歓迎会の飾りつけをしている中、そのような発言をしだした。
「帰れ。エセ関西弁」
「ごめん!!ごめんって!!今から桜井の歓迎会を早見の家でする中俺らだけ帰らすなんてやめてよ!!」
「なんでそんな説明口調なんだよ?」
あの後、高山先輩が合流し事情を聞いた後に練習そっちのけで歓迎会についての会議を開始した。
例のごとく、ホワイトボードと机を円形に配置し会議を行う。
「早見の家にしよう!」
「いや、なんで?」
何も前触れもなくいきなり提案してきたが、周りがノリノリだ。
「だってよ、歓迎会だぜ!!後、俺は金がない」
「歓迎会だぜ!!金がないし」
「金がない」
「ただ金ないだけだろ」
「私も行ってみたいです!」
この笠井の一言が決め手だった。
そんなことがあり、6人にプラスして・・・
「なぜ僕も」
高木がいる。渋い顔をしているがちゃんと理由がある。
「桜井が高木君も呼びたいよ。ふぇ~って言うから呼んだ」
前島が中途半端に物まねをするので周りが若干ひいているが高木は少し照れているようだ。
「私ふぇ~なんて萌えキャラ感出してない!」
「まぁまぁ、楽しもうじゃないか」
「できたよー!」
台所から色々なお菓子、手作りのカップケーキや既製品のお菓子を並べただけだが、このくらいあれば十分だろう。
「今のが早見くんの妹ですか?」
「妹って中学生だっけ?」
「そうだけど」
「そうなんだ・・・えっ?そうなの?」
一見まぁ、中学生には見えんな、童顔だしチビなのでその反応は間違っていない。
「早見にはもったいないな、しっかり者っぽいし」
「そーだぜ!ってなわけで俺の妹に!いや、嫁に!」
「キッモ」
前島がなにやらキモいことを言っているが、めげない様だ。
「ブーブー!」
「前島には嫁に出したくない」
「頼ーむーよー御兄さん」
懇願してるのでもしかしてガチと勘違いしてしまうぐらいキモイ。
「失礼だよ、兄さん。まぁ、私が魅力的で・・・」
「うっせロリっ子」
「なんだと?」
「言い過ぎだよ御兄ぃ」
「黙れロリコン!後、おにぃ言うな」
「そこまで言うんなら勝負だ!!」
「急にキレんな!!でも勝負は受けよう!おもろい」
「ジェンガだ!!」
「望むとこ・・・えっ?ジェンガ?」
「いざ勝負!」
いつの間にか用意されたジェンガを床に敷き対峙する。ジェンガとは積んである積み木から一人一個ずつとっていきとった積み木は上に重ねていく。積み木を崩してしまったら負けのゲームだ。
ことっ・・・
ことっ・・・
ことっ・・・
「地味だな」
「じゃあルールを決めよう。」
見ていても地味な場面が続くので高山がそのような提案をした。
「ルールって言っても何するんですか?」
「じゃあ、負けたら早見妹を前島の嫁に出す」
「なんすかその俺に得のないルール」
「じゃあ早見勝ったら前島が婿入り」
「あんま変わんないじゃないですか!」
つまり、前島が勝ったら早見の妹がもらわれ、早見が勝ったら前島が家に来る。結果は変わらない状態だ。
「考えてみると凄いことだな」
「前島花にはさせたくないしな。俺が守ってやるよ」
そう言いながらジェンガを続ける。
「兄さん・・・」
花はときめいたような表情をしたかと思った瞬間
「いやー、無いわー。こんな決め顔で痛いセリフいう兄いる?」
「なっ!?今のはかなり恥ずかしかったんだぞ!!」
「実の妹に守ってやるよとか・・・マジウケる」
「お前らな・・・」
「妹さんがそのくらい大事ってことですよね?」
「ああそうだとも!」
笠井がフォローをしてくれはしたのだが、男たちにはあるワードを口に出してしまった。
「シスコンなのか・・・」
前島がボヤッと呟いた。
「ヤベー、シスコンだよ」
「早見・・・残念だが、兄弟姉妹とは結婚できないんだ・・・だが、安心しろ!!俺が貰ってやるから!!」
「お前らいい加減にしろ!」
早見は机を思い切り叩くと案の定。
ドンガラガッシャーン!!
ジェンガが崩れてしまった・・・
「あっ・・・」
「勝ったぜ!!」
前島は喜び跳び跳ねている。
「妹を幸せにしてやってくれ頼んだぞ!!」
早見はその場で土下座をし、捧げる決心をしたが、周りの視線がいたい。
「は?いや、冗談」
「え?兄さんガチ?」
「・・・なんだよぅ」
普段の冗談のはず・・・だが、すごくいじめられているようになってしまった。
「さすが早見の妹!ノリがいいな!」
「いぇーい!」
すごい笑顔で前島と二人でハイタッチをしてなんか踊りすら踊っている。
「1つ言いたいんだが、今日は桜井さんの歓迎会じゃなかったの?」
「あ」
高木の指摘で全員は当初の目的を忘れていた。
「よっ、よし!やるぞ!」
「私忘れられてましたよね今!?」
「じゃあ、桜井春香歓迎会始まりだ。乾杯!!」
「「「乾杯!!!!」」
それぞれがグラスを持ち用意された菓子類を食べながら雑談に華を咲かせている。
「腹も膨れたし何かゲームでもしないか?」
前島の提案でそろそろ雑談の会話が途切れたので何かすることにした。
「早見ん家ってなんかゲームある?」
「ゲーム機は携帯ゲームしかないし、大人数ならトランプとか・・・」
「良いものがありますよ」
そう言って早見は自室に戻り大きい画用紙を持ってきてそれを広げる。
「懐かしいな。俺が小学生くらいに作ったすごろくじゃん」
早見が小学生の時に図工の課題で作ったすごろくだ。なぜかそれをとっておいたかは不明だが、せっかくなのでこれをやることにした。
サイコロを振り、順番は以下の通りになった。
1早見
2高山
3大西
4笠井
5桜井
6高木
7前島
8花
「ほい」
トップの早見がサイコロを振ると、5が出た。その数時通り駒を進めイベントをこなす。
「ハンバーガーを食べた、3マス進む」
ひとまず3マス進める。
「お前はハンバーガー食ったら3マス進むのか?」
「小学生の頃の俺に言ってくれ」
大西が的確なことを言うが、そんなことは当の昔の話なので知る由もなかった。
「次は俺・・・よっと」
高山が出した数字は2だ
「えっと・・・おにぎりを食べて2マス進むはずだったが、中身が梅干しで酸っぱいから進む気が失せた」
「俺梅干し嫌いだからな」
「意味がわからないですね・・・」
笠井でさえ呆れた。
「次は俺か・・・」
大西がサイコロを振り出た目は3だった
「魔王襲来一回休み・・・」
「食べ物からいきなりファンタスティックなマスになったな」
本当に何がしたいかがわからないすごろくだ。
「じゃあ、私ですね」
笠井は4を出すと
「しゃべる熊を見つけ、話をしたら近道を教えてくれた、矢印の方向に進め」
そのマスの隣には矢印が書いてあり、進んでいく。
ゴールの1マス前だった。
「いやいや!?近道すぎるだろ!?」
「しゃべる熊。メルヘンチックだな・・・早見が考えたってなるとキモイけど」
「私ですね」
サイコロを振り桜井が出した数字は6だった。
「腕立て伏せ5回」
「・・・やりますね」
い~ち、に~い、さ~ん、よ~ん、ご!!
「フゥ、終わった」
ただ女子の腕立て伏せを見せられただけでは正直リアクションしづらい。
「え?何この空気?」
「・・・いや、ごめん」
このマスを考えた早見が少量の声で謝罪した。その後のマスにも色々めんどくさいイベントが多かったが、それとなくこなして時刻は夕方ごろ。
「次は僕・・・おっと、こんな時間か、すまないが僕はこの辺で、大事なようがあるんだ」
確かにそろそろお開きにしてもいい時間になっていた。
「なかなか楽しかったよ、じゃあ、学校で」
「用事なら仕方ないか、次は俺な!!」
こんなそんなですごろくを続けていった。
「あぁ〜もうこんな時間か」
今の時間は6時だ、そろそろ歓迎会を終えなければならない。
「じゃあ、そろそろ帰るか」
「そうだな」
そう言って、みんなは自分の荷物をまとめ始めた。
「んじゃあな、早見、花ちゃん」
「さよなら〜」
「賑やかだったね」
「ああ・・・だが、片付けくらいは手伝って欲しかったな・・・ジェンガとか崩れたままだし」
「まぁまぁ、楽しかったから良いじゃん」
そんな会話をしながら片付けを始めた。