二月といえば 【メグの誕生日編】後編
ついにメグまでキャラが壊れました……。
「……じゃあ、他にしてほしいことは?」
そうですね~。
「腕枕、してほしいです」
ベッドの上に、二人で寝転びます。
襲ってこないアレックスの腕ほど、快適な枕はありません。
私がアレックスの方を向くと、アレックスもこちらを向いていました。
ああ、この上腕二頭筋、素敵です~。それにこの大胸筋も、やっぱりいいですねえ。筋肉フェチではなかったはずなのですが、彼の体だと思うからでしょうか。
薄いシャツ越しに筋肉を触っていると、アレックスが空いている方の手で私の手をそっと包みました。
「そういうことされると、その気になるぞ」
えへへ、それでも、今夜はダメなんです~。
「男に二言は無い、ですよね?」
無表情で黙り込むアレックス。
シャツに顔を寄せると、彼特有のいい匂いがしました。ついつい、くんくん嗅いでしまいます。彼のニオイなら汗臭さでも好ましく感じます。
ニオイフェチ? いえいえ違います。私はアレックスフェチですから!
ところで、シャツについてるボタンって邪魔だなって思ったことありませんか?
私、今まさしくそう思ったところなんです。なので、目の前のボタンを一個一個はずしちゃいます~。
るんるる~♪ 鼻歌が零れます。
「お、おい、メグ?」
御開帳~!
はうう、生筋肉! 生筋肉ですよ、なか○まきんに君じゃないんですよー!
それにしてもこのきれいな肌、恨めしいですよ全く。触っても触っても手触りが良すぎますよどういうことなんですか!?
「だから、そういうことされるとその気に」
今夜は、アレックスは手を出してこないんです。我慢我慢の夜なんですウフフ~。
手で触るだけじゃ物足りないので、キスしちゃいましょう。ついでにちょっと舌を出してみたりもしますよ。
んー、ちょっぴり汗の味がしますね?
「こら、舐めるな!」
あ! それ、もっと舐めろっていうフリですね!
「ぐ……っ」
あ、アレックスが耐えてますねぇ。辛そうなこんな顔、レアですよー!
嬉しそうな顔も見ていて胸がキュンキュンするので大好きです。でもこういうのも、たまにはいいかもしれません。新しい趣味に目覚めてしまいそうですよ。
体を密着させていると、アレックスの下半身の変化をなんとなく感じます。でも今回だけは、アレックスんちのジョニーさんも我慢の夜~なので~すよ~ほほーい!
「メグ……! やっぱり俺――」
眠くなってきました。おやすみなさい。
んー? なんかおっきな溜息が聞こえたような?? ……気のせいですね。
*
まさか、こんな形で薬の効果が出るとは……。
いつもより積極的なのは間違いないが、あれではただの酔っ払いではないか?
クリスマスまで散々お預けプレイを食らった挙句、今夜も我慢大会。
それでも薬がない時の方が、俺のペースには持ち込みやすかった。どういうことなんだろうな、これは。
それにしても、今夜のメグは妙に舌使いが――。
いや、考えてはいけない。感じてもいけない。朝が来るまで、手は出せないのだから。
……いや待て。手を出すなとは言われたが、口を出すなとは言われていない。
俺は穏やかな表情で眠る彼女に、唇を寄せた。名前を呼び、一言だけ囁いて。
*
柔らかい陽射しの中を、花びらが舞っています。
私の隣にはタキシード姿のアレックスが……そうか、結婚式ですね。私も純白のウェディングドレスを着ていて、アレックスと腕を組んで歩いています。
お父さんもお母さんも、雛ちゃんも……みんながいて、みんなが笑ってお祝いの言葉をかけてくれます。
不意に彼が、顔を近づけて囁きます。
「めぐる、愛してる」
はい。私もです、アレックス。
私たちがキスをすると、祝福の声は一層大きくなりました。
教会の鐘が鳴り、目を開けると、みんなの姿はありませんでした。
その代わり、私のまわりには子どもたちがいました。視界がぼやけていてよく見えないのですが、多分七、八人いると思います。彼らは年齢も容姿も少しずつ違っていて、黒髪の子も金髪の子もいますし、男の子も女の子もいます。――全員、可愛い子たちです。
その中でも一番年上なのは、黒髪の男の子のようでした。やっぱり顔ははっきり見えないけれど、そのお兄ちゃんと、なんとなく目が合ったような気がした、と思ったら。
目が覚めました。夢ですか……。
でも今、とても幸せな気持ちです。私は一人っ子で、兄弟姉妹の多い家族に憧れていましたから、本当にあんなふうに子宝に恵まれれば嬉しいですね。
こんなふうにあったかい夢が見られたのも、アレックスが一晩中抱きしめていてくれたおかげです。
彼の胸にすり寄ると、私の大好きな匂いがしました。彼が目を覚ますまで、もう少し、このまま――
「メグ」
夢の続きでしょうか? 目の前に涎を垂らしたライオンさんがいますね。
ああ、せっかく夢の余韻でほのぼの、幸せな気分だったのに。
「お前の誕生日は祝ったし、今度は俺の誕生祝いだ。遅れた分、これからたっぷりもらうからな」
ニヤッという、とっても悪い笑い方。それなのに、ちょっぴり胸がきゅんとしてしまう私は、きっともう頭からネジが三本くらい飛んでしまったんでしょう。
「激しいのは、いやですよ」
「大丈夫だ。優しくしてやる」
綺麗な鬣をそっと撫でてあげると、私を狙う視線がほんの少しだけ柔らかくなりました。
仕方ないですね。お腹を空かせたライオンさんに、ごはんをあげましょう。
……お願いですから、手加減してくださいね。優しく、ですよ。
いつになく、とても穏やかな気持ちで、ライオンさんの牙を受け入れました。
彼の誕生祝いをあげ終わったら、サーカスに行って猛獣の扱いを習ってこよう、と思いながら。
メグ、順調にアレックスの変態が感染中……?
二人の未来予想図も出ましたし、次の話で完結予定です。