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めぐる世界の光と闇と  作者: 弦巻桧
番外編・後日談
52/65

メグの初夢

あけましておめでとうございます。

皆さんは良い初夢を見られましたか?

メグの場合はこんな感じです。

 目が覚めて、なにか頭がむずむずすると思い、目の前にあった鏡を見て仰天しました。

 なんと、ウサギの耳が生えていたのです。

 どんなに強く引っ張ってみても、痛いだけで、取れません。


 体の違和感は、それだけではありませんでした。何やら、お尻の方もむずむずします。

 そっと手を伸ばしてみると、ふわふわ、もこもこした丸いものに触れました。まさか。

 ――どうやら、ウサギの尻尾のようです。


 そして、私が着ているのは、レオタード風の衣装でした。


 耳、尻尾、そして衣装。

 どこからどう見ても、バニーガールでした。

 それにしても、む、胸が足りない……。


「メグ」


 いつからそこにいたのか、私の真後ろにエリーちゃんがいました。


「この時計を持って逃げるのじゃ。アレックスが追ってくるからの」


 そう言って手渡されたのは金の懐中時計。

 んん? これってもしかして、不思議の国のアリスですか? なんでそれで私がウサギなんですか?


「いいから早く逃げないと、アレックスが来てしまうぞ。捕まりたいなら、逃げずとも良いがな」


 エリーちゃんの怪しい笑みからは、嫌な予感しかしませんでしたので、とりあえず逃げます。どっちへ逃げたら良いですか?


「奴はさっき、あっちで見かけたぞ」


 私は、エリーちゃんが指差した方とは反対の方へ駆け出しました。



 少し走ったところで、日本人形みたいな女の子に出会いました。彼女は華奢な腕で豪快に杵を振りかぶっていました。餅つきですね! お一人ですか?


「ええ。手伝わせるはずの方が、まだお見えでないので」


 じゃあ、ちょっとだけお手伝いしますね!!

 初対面のはずなのに、私はこの少女に妙な親しみを覚えていました。特に胸囲的な意味で同族意識が湧きます。ぺったん、ぺったん。餅をつく音さえ、嫌味に聞こえてきますね。


「それにしても『月でウサギが餅つき』ならぬ『月子とウサギが餅つき』とは、作者も芸がないですね。才能ある方ならこんなことはしません」


 臼を叩き割らん勢いで杵を振り下ろしながら、彼女は毒舌を吐きました。

 つきあがったお餅には、彼女の並々ならぬ情念を思わせる粘りと弾力がありました。私も一つ、頂きました。一個で十分お腹に溜まりましたよ。


 月子ちゃんは三個目のお餅を食べながら、私の持っていた時計に目を止めました。


「その時計の針が一周するまで逃げ切れれば、あなたの勝ちです」


 そういうルールなんですか。エリーちゃんってば何にも教えてくれないんですから~。


「このお餅でお雑煮を作っておきますので、逃げ切れた暁には是非食べにいらしてください」


 はい! 楽しみです! 私はうきうきしながら走りだしました。


「まあ、あなたが食べられてしまう可能性の方が高いですけどね。その時は、お雑煮は全部食べておきますからご心配なく」


 後ろで何やら変な呟きが……。気のせい、気のせい、です。



 私、疲れているんでしょうかね。前方に、コスプレ集団が見えます。

 目の錯覚でなければ、あれは亀ですね。亀が三匹……いえ、三人。と、なんでか亀仙人が一人混じってますね。亀になってるのは、トムヤムクンと水泳部さんと筋肉馬鹿、もといソリアム君とスイアーブさんとフレイムさんですね。ということは、亀仙人はイースさんですか。


「やいウサギ! オレたちとかけっこで勝負だ!!」


 ああ、ウサギとカメですかー。なんて安直な。そして亀仙人は関係ないじゃないですか。

 トム、じゃないソリアム君以外はやる気なさそうな集団ですね。スイアーブさんとフレイムさんは呆れ顔、亀仙人はひたすらニコニコ。でも、あの、なんでこんなことに……?


「よーい、ドン!」


 人の話を聞かないソリアム君が、勝手に走り出してしまいました。残りの亀二人と亀仙人も渋々といった態で走り出しました。

 四人の姿は、あっという間に見えなくなりました。亀なのに早すぎです。それにしても一体何だったんでしょう?


「ウサギとの勝負に勝てば、出番が増えるらしいよ」


 わっ!? いつの間にか隣に、ジャックさんとチヨコさんがいました。――出番って?


「亀の格好をしてウサギとの勝負に勝ったら、アレックスとの絡みで番外編への出番を増やすと作者が言った――というデマを、私が流しておきました」


 デマですか! しかも発信源チヨコさんですか!


「いやあ、僕もチヨコも冗談のつもりだったんだけど。ソリアムは簡単に信じちゃったね」


 爽やか笑顔のジャックさん。なのに何だか黒い! 黒いですよご両人!!


「スイアーブさんとフレイムさんも付き合いがいい方ですよね。イースさんは……」


 あの恰好は、完璧に楽しんでますよね。そういえば、あの人なんで亀仙人知ってるんですかね。

 ところでお二人は、ここで何を?


「それは内緒。それよりメグ、逃げなくていいの?」


 ああ、そうでした。

 ジャックさんとチヨコさんのことが気になりつつも、逃亡再開です。



 はあ、疲れました。アレックスの姿は全然見えませんし、大丈夫でしょう。

 ちょうどいい所に椅子があったので、休憩しようと思って腰掛けました。


「メグ」


 座った途端、耳元でアレックスの声がしました。

 ビックリして振り向いても、誰もいません。気のせいか、と思って前に向き直ったその時。

 椅子の硬い感触が柔らかいものへと変わり、背後から伸びてきた腕に腰回りをがっちり固定されました。


「メグ。俺だ」


 椅子から人の姿に戻ったアレックスは、逃げようともがく私の体を抱きすくめ、ウサ耳に唇を這わせました。


 ――――!!

 だ、ダメです耳は!!


 思わずびくりと体を震わせると、そんな私の反応を楽しむように、彼は耳を食み、食み――。

 抵抗する気力もなくなり、ぐったりする私を支えながら、彼はなおも両耳をいじめてきます。私は変な感じがして、涙まで出てきているというのに、アレックスは妙に嬉しそうです。


 私の体を片手で抱え直すと、空いたもう一方の手を、彼は私の尻尾へ……。

 ――!?

 彼の指が、手のひらが、私の尻尾に触れるたび、体が勝手にピクリと跳ねてしまいます。


 その手はやがて、ゆっくりと私の衣装へと伸び、少しずつ、私の素肌が彼の目にさらされていきます。

 こういうのは、まだ、こわいのに。流されちゃ、だめだ……って思うのに。

 このままじゃ、私――――。



「はっ!?」


 目が覚めました。何だ~、夢ですか。

 でもあれ? なんだか頭がむずむず……して……。


「ぎゃ――――!!」


 鏡に映っていたのは、ウサ耳を生やした私でした。そしてその後ろには、獲物を狙う目をしたアレックスの姿……。

 夢、ですよね? お願いですから、早く醒めてください――!!



     *



「メグ、めっちゃうなされてるやん! アレックス、そんな舐めるような変態ちっくな目でメグを見んとって! メグが汚れるやろ!!」


「お前が新年早々寝ているメグにべたべた触るなというから、視線で犯すにとどめてるんだ。俺が脳内でメグにどんなことをしてようがお前には関係ない。

そもそも、なんでお前がこの空間にいる? 俺はメグ以外、この空間に立ち入る許可を出した覚えはないぞ」


「一週間も同じ魔法を維持しつづけたら、ナンボあんたでも綻びが出る。力技で入れたわ。

そんなことより、いい加減メグを帰し! クリスマスからこっち、メグを監禁して引きこもりって何考えてんねん!! ってこら! 魔法を強化するな――って、もう聞こえてへんな。何ちゅう早業や。メグ、成仏しいや……」


アレックス「ウサギのメグの口に俺のニンジンを(以下略)」


新年からこんな話でごめんなさい。

ほぼオールキャスト! と思ったのに、赤毛王子を忘れました。それについてもお詫び申し上げます(汗)


今年もどうぞよろしくお願いします。

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