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めぐる世界の光と闇と  作者: 弦巻桧
番外編・後日談
43/65

童話のパロディらしき小話③ 人魚姫

人魚姫というより、人魚と変態?

 人魚のメグは好奇心旺盛で、陸の上に興味を持っていました。

 そんな時、親切な魔女のチヨコさんが、一時的に人間になれる特別な薬をくれました。

 メグは喜んでそれを飲み、しょっちゅう陸の上に遊びに行くようになります。



     *



 人間になった彼女の姿をひそかに見て、一目惚れしてしまった男が居りました。その男は、金色の目と髪を持っていて、名前をアレックスと言いました。

 アレックスは毎日メグに話しかけますが、いろんなものに興味津々の彼女は、彼のことなんてすぐに見向きもしてくれなくなってしまいます。


 ある日彼は、こっそりメグの後をつけていて、彼女が本当は人魚であるということに気付きました。

 人魚の姿のメグを捕まえようと、彼は網を持って海に出かけました。でも、当然のことながら、彼女は逃げて行ってしまい、捕まってくれません。


 そこで、アレックスは閃きました。追えば逃げられるのならば、こちらにおびき寄せればいいのだ、と。

 彼は上着を脱いで、冷たい海の中に入りました。そして、溺れたふりをして、メグが助けに来るのを待っていました。


 最初は遠くの岩陰から様子を窺っていたメグでしたが、アレックスの異変に気付いて、彼の思惑通り、助けに近づいてきました。

 近づいてきたメグの体に、アレックスはしがみつきました。陸に上がると、離れようとするメグをしっかりと抱きしめました。


「あ、あのう、大丈夫ですか?」

 心配そうに彼の顔を覗き込むメグに、アレックスはわざと苦しげに呼吸して、

「苦しい……。人工呼吸をしてくれないか」

と要求しました。


「人工呼吸? どうすればいいのですか?」

「こうするんだ」

 彼はメグの頭を掴み、彼女の唇に、自分の唇を押しつけました。



     *



 メグは、パニックを起こす頭を必死で働かせて考えました。


 ――えーっと、これ、人工呼吸とは違います、よね? 

 そういえば人間の人工呼吸の仕方は、前にチヨコさんに教わってたんでした。

 その時、それとよく似た、全然違う意味を持つ行為のことも聞いたような……。何でしたっけ? んーっと……。


 メグがぼんやり考えている間に、アレックスのキスはだんだん濃厚になってきました。


 ――それにしてもこの人、不思議な人ですね。

 人魚の国でもあんまり見ない、とってもきれいな人です。人間にはあまり近付いちゃいけないって言われてたから、今まであんまりお話出来ませんでしたが、ホントはちょっと気になってたんですよね。

 ……あれ? なんでしょう、この口の中の異物感は。はうっ、なんかにゅるにゅるしてます! ………………ふぎゅー。


 ついにメグの思考は、脳の許容量を超えてしまいました。そして彼女は、気絶しました。



     *



 メグが気絶したのを幸いと、アレックスは彼女を自分の家まで運びました。そして、あらかじめ用意しておいた透明ガラスの水槽の中に、彼女を入れてやりました。


 アレックスが満足げにメグを鑑賞していると、悪い魔法使いの遣いの、エリシアがやってきました。

「夜の間だけ、人魚を人間にする薬はいらんかね?」

「貰おう」

 アレックスは即答しました。


「一生人間のままにしておける薬もあるが、そなたにはそちらの方が良かろう?」

「そうだな」


 こうして人魚のメグと、薬とを手に入れたアレックスは、昼の間はメグを水槽に閉じ込め、夜になると彼女をベッドに連れ込みました。

 そうして一生、めくるめく甘い生活を送りましたとさ。



     *



「今回はあたし、出番なしか。メグもあっさり捕まってー。アレックスが強引で変態なんは例によって、やね」

「ううう、騙されました……。夜も、一緒に寝るだけって……添い寝するだけって、言いましたのに……」

「いやメグ、それはそのまま信じたらアカンて」


人魚のメグはエラ呼吸なので、キスのせいで息が出来ないってことはまずあり得ません。でも、考えすぎるとすぐに脳がパンクします。


人魚姫の原形をとどめていない気がしますが、メグを人魚にすると、アレックスはどうしても捕獲する方に動くんです……。

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