童話のパロディらしき小話① アレックスと留守番のめぐる
拍手で公開していた話です。
「オオカミと七匹の子ヤギ」のパロディ、のつもりです。
さすがにメグを七人には出来ませんでしたが……。
ある所に、メグという女の子と、彼女に一目ぼれしてしまったアレックスという男の子がいました。
アレックスは、何とかしてメグと仲良くなりたいと思っていました。しかし、彼女にはそう簡単に近づくことが出来ません。メグの保護者・雛子が、いつでもがっちりガードしていたからです。
ところがある日、彼にチャンスが訪れます。
「メグ、しっかり留守番してるんよ! あたし以外、誰が来ても扉を開けたらアカンで!!」
「合点承知之助です!」
雛子が出かけた後、メグが一人になったのを見たストーカーのアレックスは、頃合いを見計らって扉を叩きました。
「メグ、ただいま。開けて」
正直に名乗っても扉を開けてはもらえない。そう思ったアレックスは、精一杯雛子のものまねをしました。自分でも会心の出来だと思いました。しかし。
「声紋を照合します。……不一致です。あなたは雛ちゃんじゃありません」
「風邪をひいたんや」
「風邪引き声の雛ちゃんの声紋も十パターン程取っていますが、どれとも合いませんでした」
アレックスは仕方なく引き下がりました。
しかし、諦めの悪い彼は、再びやってきました。
魔法でしっかり声を変えて。
「メグ、開けて」
「声紋、一致しました。では次に、指紋を照合します。扉についているパネルに触れてください」
アレックスは言われたとおりにしました。
「不一致です。あなたは雛ちゃんじゃありません。開けることは出来ません」
アレックスは、またもや引き下がるしかありませんでした。
しかし、粘着質な彼は三度やってきました。
魔法でしっかり指紋も変えて。
「メグ、開けて」
「声紋一致。次は指紋です。パネルに――」
言われたとおりに触れると、
「指紋も一致しました。では次は――」
「まだあるのか!?」
アレックスは、だんだんうんざりしてきました。
そして遂にキレた彼は、実力行使に出ました。
「最初からこうすれば良かったんだ」
その手にはしっかりと斧が握られていました。
彼は扉を破壊すると、家の中に土足で侵入。目を丸くしているメグを、電光石火の早業で連れ去ってしまいました。
帰ってきた雛子は、家の惨状を見て一瞬で何があったかを理解しました。
「あんのドアホ変態ストーカー誘拐犯が!」
雛子がアレックスの家に殴りこみに行くと、メグはもう既にアレックスと結婚させられた後でした。
「……うーん、なんでこうなったんでしょう……?」
首を傾げるメグに、雛子は
「ごめんなー!! メグ、一人にしてゴメンなー!!」
と、ひたすら謝り続けていました。
その後、アレックスはメグを目に入れても痛くないくらい可愛がり、メグもそんなアレックスにちょっとずつ心を開いていき、二人は幸せに暮らしたそうな。
めでたしめでた……「全然めでたないわ――!!」
メグ「なんで、魔法で雛ちゃんに変身して来なかったんですか?」
アレックス「その手があったか!!」
メグが何人いても、きっとアレックスは強引に、全員攫っちゃいますね。