表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/65

32 決着!

 コンニャロー人がコケた隙を突いて襲うとは悪賢いですなー!


 あの時と同じ触手が、にゅるにゅるとこちらに伸びてきます。


 さすがに次呑み込まれたらもう助からない! もはやこれまでか雛ちゃんごめん!!

 と、思った時。


 ザッ! と何かを切り裂く音がして。


 予想した衝撃が来ずに、あれ? と思いながら顔を上げると、そこには見慣れた後姿が。


「アレックス様? なんでここに?」


 杖を地面に突き立てて炎の壁を展開しながら、アレックス様は私に手を貸してくれます。

 私が立ち上がっても手をぎゅっと握ったまま。


「アレックス様?」

 見上げると彼は、泣くのを我慢しているみたいな顔をしていました。


「――二度とごめんなんだよ。あんな思いは。目の前で、何も出来ずにお前を失うなんて」

「でも、アレックス様にはこの後あれを封じるという大仕事が」

「大丈夫だ、そっちもきっちり片づけてやる。……だが」


 彼は杖を振り、炎の壁を消して、

「好きな女一人守れないで、何が魔法使いだ!」

 そう叫んだ直後、辺りに爆発音が響きました。



 私は、ひたすら走っていました。アレックス様に手を引かれたまま。

 後ろを、魔王がついてきています。何故かさっきからずっと、私を追ってきているようです。


 魔王の後ろから、火竜さんとフォックスさんとモグラさんが攻撃を加えて、少しずつではありますが確実に奴の体力を削っています。


「もうすぐ神殿だ」

 ラストスパートを掛けるアレックス様についていけず、またしてもコケそうになりました。

 彼はそんな私をひょいと抱えあげました。……タフですね。と言うか私、この期に及んでどんだけお荷物なんでしょう。

 私だって、アレックス様を守りたい、のに。


 アレックス様が、私が描いた五角形の空いている頂点に滑り込み、私を地面に下ろします。

 呻き声のようなものを上げながら、おどろおどろしい魔王――怨霊が近づいてきます。


 私は近くにあった木の枝を伸ばして、素早く魔王の体に巻きつけました。それをぽいと陣の中に放り込むと、土で造った腕でその体を拘束しました。


「今です!!」

 一斉に、五人のそれぞれ一番強力な魔法が発動しました。


 眩い光に包まれた、魔王の咆哮、そして悲鳴。


 それが消えた頃、光の中に、狩衣姿の男性が現れました。その姿を認めた瞬間、私の胸は熱くなりました。その一瞬の熱が冷めたかと思うと、目の前には、いつか夢で会った気品のある女性の姿がありました。


 彼女はまっすぐに、光に包まれた魔王――安倍の元に駆け寄っていきました。安倍も、彼女――女王をしっかりと抱きしめます。


 ――良かったですね、再会できて……。

 その幸せそうな様子からは、在りし日の二人を容易に想像することが出来ます。

 安倍は、あんな姿になっても、女王のことが好きだったんですね。ああなるくらい好きだった、とも言えるでしょうか。


 彼女は最後に、私の方を振り向きました。その口の動きは、確かに、「ありがとう」と言っていました。

 二人の姿が石の中に消え、術は解除されました。


「やっと、終わった――」

 ドサリと、アレックス様が膝から崩れ落ちました。吃驚して、急いで駆け寄ります。

「ア……」


 聞こえてくるのは、規則正しい呼吸音。どうやら、眠っているようです。

 随分オーバーワークをさせてしまいましたものね。

 他の皆さんも疲れて動けないようですので、私はしばらくアレックス様に膝を貸そうと思います。あんまり寝心地の良い枕ではないかもしれませんが……。


 結局、アレックス様はその後丸二日、寝込んでいました。

 いつもの部屋に戻ってきた時、ああ、帰って来たと思いました。不思議ですね、私もいつの間にかすっかりここに馴染んでいたようです。


 ですが、私には、日本に待ってくれている人が居るのです。

 アレックス様が目を覚ましたら、日本に帰りましょう。


 眠っている彼の手を握ってそんなことを考えているうちに、私もウトウトしていました。


アレックス、過保護ですね。

そんな彼に、膝枕をされた記憶はありません。後から人に聞いて、地団駄を踏むという(笑)。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ