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29 相補的、故に求め合う関係

一部、チヨコがちょっと説教臭いかも。

 チヨコさんの話から推測するに、魔力属性を陰陽道に当て嵌めれば、光は陽、闇は陰。

 そして、必ずしも陰は悪ではない、ということですね(凶暴化する者の存在も否定はできませんが)。


 そう訊くと、チヨコさんは頷きました。


 うーん、陰と陽、ですか。

 とすればもしや、魔物にも魔法使いにも、闇に堕ちる者が現れるのは……、

「その環境下での、陰陽のバランスを取るためです」


 もしかして、闇に堕ちたと言っても、完全に陰の気だけになることはなくて、ただ潜在的な陰の気が増しているだけ、とか?

「そうですね。それも、周りの環境や状況によって、再び陽に転じることがあります」


 ははー、陽→陰→陽と辿ったのが現在のジャックさん、ということですね。


「どんなに『陰』の気を悪だとしていても、人の体には必要なものなんです。

 陰陽両方の気を持ち、しかもそれらのバランスが取れていなければならない。これは、誰もが本能的に知っていることなのですよ。


 あなたの主人があなたを求めるのも、実はこのためなんです。彼は魔力属性から分かるように、生まれつき陽の気が非常に濃い。あなたは反対に陰の気が非常に濃いので、彼の求め方も必然的に激しくなろうというものです」


 一部、誤解を招く言い回しがあるのが、非常に気になります。

 それに私、本当の属性は、フェレス国の分類に則れば「闇」だったんですね。


「使い魔召喚というのも実は、自分に不足する気を補い、バランスを取るためのものなんだと思いますよ。フェレス国の魔法使いは強くなればなるほど陽の気が増しますから、陰の気を持つ者を傍に置かないといけないんでしょう。主人と使い魔は五行で見れば同じ属性であっても、陰陽は逆のことが多いです」


 水属性のジャックさんとエリーちゃんの場合、ジャックさんが水の陽、エリーちゃんが水の陰ということですね。

 陰陽だけでなく、性別も逆のことが多いようですけどね。


「そうそう、主人から使い魔に対する魔力の受け渡しも、実は一方的なものではなく、本当は『交換』なんです。お互いに不足する『気』の、ね」


 ああ、「食事」の度に、ご主人様に何かを吸い取られた気がしていたのは、間違いじゃなかったわけですね。


「ちなみに、魔力の属性というのも、本当はそれほど厳格には区切れないものなのです。

人は誰もが陰陽、五行――フェレス国の言葉で言えば、火・水・土・風・光・闇、全ての要素を持っています。ただ、どの要素に対する親和性が高いかには個人差があるので、それを『属性』としているのですね。光と闇は、その他の要素に対してニュートラルであるのだと考えればいいのです」


 闇は、必ずしも悪じゃない、ということは分かりました。

 それじゃあ、闇に堕ちた者たちが暴れまわっているのは、

「フェレス人が『魔王』と呼ぶ者の影響でしょうね」

 やっぱり、そうなんですか。あのどす黒い気が、闇の者達を凶暴化させている、と。


「ですが気になるのは、この国の人たちが、心の弱さをも『闇』とし、『悪』として排除しようとしているように思われることです。


 心に暗い部分を全く持たない人間なんて、いるでしょうか? いたとしてもそれは生まれたての赤ん坊くらいで、ずっとそのままで生き抜いていくことなんて出来ませんよね。


 心のどこにも弱さを持たない人なんて、いるでしょうか? いたとしても、それは見せかけか、心が死んでいるだけではないでしょうか?


 それに、弱さがあるからと言って、皆が皆『悪』へ走るわけでもありませんよね。

 健康状態、その時の環境、人によっては特定の季節・気候のせいでも、一時的に心が弱ってしまうことはあるのです。

 それを一概に悪として排除してしまえば、この世界には誰も生きられなくなってしまいます」


 水清ければ魚は棲まず、ってことでしょうか。魚が棲む為には、餌になるプランクトンがいなくちゃいけませんし。あ、これはちょっと違う?

 んー、ジキルとハイドは結局、切り離すことが出来ない、という方が近いでしょうか……。


「もちろん、今のこの状況は楽観できません。フェレス国がアンヤージ排除の政策を進めてきたせいで、我々の信仰は弱まっています。そして、フェレス人が『魔王』と呼ぶ者が、力を強めています」


 アンヤージの信仰……。そういえば、

「カルロス殿下が『アンヤージは国土全体に怪しげな術を施そうとしている』って言ってましたけど――」

「あれは、鎮魂の儀式の一環と言いますか、御霊祭りです」


 なるほど。国全体を神社にして一斉に祭りをするようなものでしょうか? あれ、この喩えも何かが違う気がします。


 それはともかく、やっと分かりましたよ。


「フェレス人の言う『魔王』の正体って、鬼や怨霊の塊が魔物化した存在、なんですね?

 それが、闇の者たちの中で最強になってしまったために、押さえる者がいなくなってしまった、と」


 チヨコさんが静かに首肯。


 私が意識を失った時に見たのは、つまりは怨霊たちの感情だった、というわけです。

 しかも私は、その怨霊たちの「気」を、体内に取り込んでしまったわけです。

 多分、取り込む時には浄化作用っぽいものも働いてたんでしょう。そのまんま取り込んでたら、私が鬼になってたかもしれませんし。


 うわーぁ。ファンタジーだったはずが、一気にオカルトになりました。


 情報処理が追いつかない私に、さらにチヨコさんは、とんでもない事実を教えてくれました。


「今『魔王』の核となっているのは、女王を殺された恨みから鬼と化していた、陰陽師・安倍です」


 安倍さーん、子孫の前で言うのもなんですけど、陰陽師のくせに鬼にならないでくださーい……。


つじつま、ちゃんと合ってるでしょうか……。


話が分かりにくかったらすみません。

説明の順番とか、もう少し整理できないかなぁ。


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