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27 悪しき魔法使いの正体

「アレックスのことなら、気にしなくていいと思う。

 あいつは最初から、全部を知っていたんだから」


 猶もジャックさんは、私を引きとめようとします。

『最初から、全部を知ってた』って、どういうことですか?


「メグが異世界人だと知っていた上で契約をして、自分の元に縛ろうとした。

 危険があるかもしれないことを解っていて、君を巻き込んだんだよ」

 

 思い返してみれば私、ご主人様にちゃんと自己紹介したことありませんでした。

 何も言ってないうちから、「メグ」って呼ばれてました。


(そなたがあの男に素直に従ってきたのは、それが使い魔の契約魔法の効果だったからじゃ。

 使い魔は主人の強い意志には逆らえない。あの男はそなたに随分執着しておったからの。

 縛られていた――操られていただけだったとも、言えるのじゃぞ)


 操られていた。……本当に?


 今、彼が傍にいなくて寂しいと思うのは、偽物の気持ちなんでしょうか?


 彼がくれた優しさや、命懸けで私を守ってくれていたことが嬉しかったのも、全部?

 私の前に立つ背中が大きく見えたのも、目の錯覚だったのでしょうか。


 強引な彼を受け入れてきたのは、本当に契約のためだけだったのでしょうか。

 何度も触れ合わせた唇の感触も、抱きしめられた時の温もりも。


 一緒にいた時間は、全部、幻だったんでしょうか。


 ……幻なんかじゃありません。私にとっては。


 もし、本当に、魔法で心が縛られていただけだったとしても。


「エリーちゃん、言ってたじゃないですか。主人と使い魔は『魂の呼応だ』って。

 私、それを信じてみたいです」


 そして今度こそ、私の意志で選びたいです。契約が無くても傍にいる、エリーちゃんとジャックさんみたいに。


 たとえいつかまた、離れてしまう時が来るとしても。

 少なくとも……この世界に居る間だけでも、私のご主人様はアレックス様です。


 ――役立たずは要らないと言うなら、役に立てるように頑張ります。

 守られるだけじゃなくて、守れるようになりたいんです。


 体を張って守ることが許されないならせめて、彼の心に寄り添うように。支えられるように。

 いつでも傍に居たいんです。


 こんな気持ちは初めてです。こんな気持ちになれるのは、きっと彼に対してだけなんです。

 ……あいたい。


 私はいますぐ、アレックス様にあいたい、です。


「そう……」

 ごめんなさい、二人とも。心配してくれて、ありがとうございます。


「メグがそう言ってくれて良かったよ。

 勝手に帰したってアレックスにバレたら、後で酷い目に遭うとこだった」

 そう言ってジャックさんは、ほっとしたように笑いました。


 さて、それでは、善は急げです。早くアレックス様のところへ!

 しかしジャックさんは、この期に及んでまだ私を止めます。


「すぐにでもアレックスのところに行きたいのは分かるけど、彼女の話を聞いてからにしてくれないかな」

 そんな悠長な――!


(今回の件に関わる、重要な事実なのじゃ。聞け)

 はーい。ところで『彼女』とは?


「ここの家主で、アンヤージのチヨコ。君の世界の人を、祖先に持つ女性だ」


 ……はい? 今なんて言いました?


 ジャックさんとの会話が聞こえていたのか、ちょうど良いタイミングで、開け放されたドアから女性が入ってきました。黒髪の、楚々とした美人です。黒いワンピースがよくお似合いで、これにトンガリ帽子をかぶせて箒を持たせれば完璧な魔女ですよ。


 彼女は私の前まで来ると、優雅に一礼して、

「チヨコ・アベです」

と名乗りました。


「チョコ鍋?」

 それは何とまた微妙な……。

 失礼千万な私に、彼女は表情を変えず、淡々と訂正しました。

「チヨコ・アベです」

 

 あ、そうか。日本風に言えば

「アベ・チヨコさんですね」

 今でも普通に居そうな名前でした。チョコ鍋とか微妙とか言ってしまって、本当に申し訳ありません全国のアベチヨコさん!


 でも、アベさんが私の世界の人を祖先に持つって、どういうことでしょう?

 ていうかまたしても「アンヤージ」なわけですが、結局何なんですか、それ。


(アンヤージが何なのか、妾よりもそなたの方が詳しいのではないかの?)

 え?


 あー、アンヤージ……アンヤージ……アンヤウジ、ナンヤウジ、ノンヨウジ……オンヨウジ。

 ――陰陽師?


(それじゃ)


 え、え、え、え、え――!?

 はー!? どういうことですか!?


そんなに驚くことでもないだろう、メグよ。

皆さん予想されてたことではないかと思われます。


次回からネタばらしと称して、説明が続きます。

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