24 予想外の展開?
さて、二日目です。
今日も昨日と同じですよ。五人がひたすら戦って戦って、私は何も出来ずにボーっと見ておりました。
――あれ? ……何しに来たんでしょう、私。
でもご主人様に何もするなと言われたら、何にも出来ないんですよね。することが無いので、イースさんの使い魔のお魚さんと、女同士でお話してました。
そこで分かったのは、不思議なことに使い魔の性別は雌が多いということです。
このお魚さんも、エリーちゃんみたいに物知りですよ。本人が良いと言うのでお魚さんと呼んでいますが、もしかしたらホントは魚類ではないのかもしれませんねー。一体何年くらい生きていらっしゃるのかも気になるところです。
この日の夜は、湖のそばにキャンプを張りました。
ソリアム君がアレックス様にくっついてて何やら騒がしいので、私はその隙にテントを抜け出してきました。
湖のほとりをのんびり散歩します。闇の者の気配はありません。
水面に映った細い三日月が揺れています。明日か明後日は、おそらく新月ではないでしょうか。
「メグ、一人じゃ危ないよ」
「スイアーブさん」
私を追ってきたスイアーブさんは、何かに気付いたように一瞬目を見張りました。そして、自分の首の付け根辺りをトントンと指差しながら、
「アレックスだね」
と言います。
――鏡、鏡! と思い、慌てて湖を覗き込むと。
「……え?」
水面に映った私の首の付け根には、小さな痣が……。
これってもしや、英語で言うところのlove biteですか!? 「bite」……かみ傷っていうのが、なんか生々しくて嫌です。ああ、キスマークっていうのは和製語なんですよ~。
――とか何とか、言ってる場合じゃないです。
昨日の、ですよね。これはやっぱり。
ううー、気づきませんでしたよ~。ご主人様のバカー!!
「昼間はうまく髪に隠れてたみたいだね」
と、スイアーブさんは言いますが。……多分それも、ご主人様が上手く隠してたんじゃないでしょうか。あの人ずっと私の後ろにいましたし。移動中も、ずっとくっついて座ってましたし。
むー。気づいたからには、自分で何とか隠す方法を……。
「羨ましいね、アレックスが」
考え込んでいたら、スイアーブさんが思わぬ至近距離まで迫ってました。
「え……?」
スイアーブさんの瞳には、夜のアレックス様が浮かべるものと同じ色が見えて、私は焦りました。
スイアーブさんのことは好きですけど、あくまで友達としてであって、こういうのは何かが違います。
「最初は初恋の人に似てたから気になった、それだけのはずだったんだけどね。
君はいつも、僕の作った物を美味しそうに食べてくれたよね。嬉しかったよ。そんな君を見るのが、いつの間にか僕の楽しみになってたんだ。君が、アイツの使い魔でさえなければ――」
「スイ、アー、ブ、さん……?」
私は後ずさろうとして、
「わっ」
……思い切り後ろにコケました。尻餅ついた時、どすんっていいましたよ、どすんって……。は、恥ずかしいです。
「大丈夫?」
スイアーブさんが、クスクス笑いながら手を差し出してくれます。
その手を取ろうとした瞬間。
スイアーブさんの体が、真横へ吹っ飛びました。
……デジャヴというか、似たような光景を前にも見ました。
案の定、そこには肩をいからせたご主人様がいました。