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17 赤毛の……

 実は私、密かに文字を読む練習もしておりました。


 そこで今日はご主人様に、校内の図書館に連れてきてもらいました。

 こちらの世界に来てもうすぐ二カ月です。今までにも図書館に来ることは考えましたが、ここには学生のIDが無いと入れません。ようやく今日、ご主人様の都合が合ったのです。


 この機会に、何としても日本に帰る方法を、探し出すのです!


 

 高くて大きな本棚に、上から下までぎっちり本が詰まっています。分類もきちんとなされているようで、本棚にはジャンルが書かれていますし、一冊一冊の本にもラベルが付いています。


 まず、魔導書が並んでいる棚に行ってみました。空間移動の魔法から探そうと思ったのです。

 でもこの国の魔法使いさんたちは、移動の時は使い魔に乗っちゃうので、こういう系統の魔法は全然発達していないんですよね。

 属性で言えば光の魔法なんですが、光属性の魔法使いは絶対数が圧倒的に少ないんです。それも空間移動の魔法が発達しない理由でしょうね。


 ちなみに時間移動は、魔法をもってすら出来ないのだと、ご主人様は断言してました。

 ああ、時をかけてみたかったですよ、ドク……。何か混ざりましたけどどっちも魔法じゃなくてSFですね。


 ただでさえ研究が進んでいないというのに、ましてや異世界に行く方法などがあるわけはありませんでした……。


 次に見たのは、召喚術系の魔導書です。が、これもどれを見ても、呼ぶだけ呼んだら後はご勝手にって感じなのですよねー。なんって無責任な。ペットはその辺に捨てちゃいけません!! 使い魔はペットじゃありませんが。


 仕方が無いので、歴史書の棚へ移動します。過去に異世界から来たっぽい人がいなかったかを調べるのです。


 私は目の前にあった、「フェレス国の歴史」というそのまんまなタイトルの、三センチくらいの厚みの本を抜き出しました。


「せ、せいふくおう、フェレスは」

 征服王……。「制服王」と書くと、とってもマニアックなイメージになりますよねえ。

 それはともかく。


「かみ……紙? よりたまわりし……あ、神より賜りし土地に、うに……じゃない国を傷……築き」


 隣で聞いていたご主人様が、肩を震わせています。

 ――日本語は母音が少ないし同音異義語が多くて大変なんですよ!


「貸せ、読んで説明してやる」

「自分で読みます! ご主人様はゆっくりなさっててください。折角のお休みなんですし」

「そうか? じゃあ俺も何か探してくるか」


 ご主人様が離れた後も、私はそこにしゃがみ込んで、創世記らしいその歴史書と格闘していました。


 嫌味な声が降ってきたのは、本当に突然でした。


「忌々しい魔女が神聖な学び舎に入りこんだというのは本当だったようだな」


 何ですかこの失礼な人は。

 燃えるような真っ赤な髪に、金色の瞳。外見年齢は、ご主人様と同じくらいでしょうか?

 赤毛のアン……だけどこの人は男だから、アン(仮)でいいですかね。


「殿下、恐れながら申し上げますと、彼女は悪しき魔女などではありません。私の使い魔です」


 いつの間に戻ってきたのか、ご主人様が私の隣に立っていました。

 あれ、いつでもどこでも誰に対してもエラそうなアレックス様が、敬語?

 しかも、一人称「私」? この俺様が? それに……「殿下」って何?


 こんな失礼なの、アン男でいいじゃないですか! とは言えない空気です。

 いくら私が空気清浄機の勇名を馳せていたところで、ここではお呼びじゃないねと裸足で逃げ出すレベルです。


 状況が分からずにきょとんとしていた私を見て、アン男改め殿下が鼻で笑いました(やっぱりアン男でいいですかね!?)


「随分ソレに執心のようだな。まあ良い。アレックス、お前には我がここに滞在するしばしの間、護衛役の栄誉を与えよう。もちろん、そこの頭の悪そうな使い魔も一緒にな」


 人に対して頭悪いとか、人を指してソレとか言う人、人格疑います。さぞかしご立派な教育を受けていらっしゃるんでしょうねえー? と、思っていても言えませんでした。ええ。

 寄らば大樹の陰、長いものにはとりあえず巻かれてみる日和見主義ですが、何か?


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