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13 もこもことオアシスとサボテン

 使える! 使えますよ、陰陽道!


 その後も何度か実践訓練に出され、その度にちょっとずつ試してたんですが、もの凄く集中力が必要であることを除けば、比較的使い勝手は良いです。


 陣は描かなくていいし、呪文は何でも「急急如律令」でオッケーなんですから。

 あ、でも、陣を描いた方がやっぱり精度は増しますね。ちょっとくらい気が逸れてても上手くいってくれますし。


 一人で戦えるのかと言われれば、それはまだ不安です。

 でも今は、ご主人様が陣を描き上げ、術を発動させるまでの時間稼ぎくらいは、ちゃんと出来るようになったんですよ。


 ご主人様は、そんな私を褒めてくれながら、時々少し複雑な顔をします。

 どうしてでしょう? もっと喜んでくれてもいいと思いますのに。


 ただ、魔法が使えるようになっても、元の世界に帰る方法だけは、どうしても分かりませんでした。




 フェレス国に来て約一カ月。

 今日の訓練は三・四人のグループを組んで、森の中での実践訓練。

 アレックス様と同じグループなのは、ジャックさんとスイアーブさんです。


 そういえばスイアーブさんの使い魔さんには会ったことが無いな~と思ってたら、彼の後ろから何かがぴょこりと姿を見せました。

 もしかしてスイアーブさんの使い魔さんでしょうか? もこもこの毛玉……じゃなくて、羽の生えた、わんこ?


(こんにちは。ふぉっくしゅでしゅ)

 尻尾を振り振りご挨拶してくれました。

 えーと、ふぉっくしゅさん?


(ちがいましゅ。ふぉっくしゅはふぉっくしゅでしゅ)

 あ、もしかしてフォックスさん?


(そうでしゅ!)

 フォックス……キツネ? どう見ても犬なのに?


(きちゅねでもいにゅでもないでしゅ!)

 じゃあ何ですか?


(ふぉっくしゅでしゅ!)

 ……埒が明きそうにありません。まあ、可愛いから何でもいいですね。


(しゅっしゅしゅっしゅ五月蝿い小童よの)

 エリーちゃんたら!!


(おばしゃんに言われたくないでしゅ!)

 ああんもうフォックスちゃんまでー。


(ほう……妾を「オバサン」とな?)

(そうでしゅ! ふぉっくしゅはぴっちぴちのふぉっくしゅでしゅから――)

 エリーちゃんもフォックスちゃんも言いたい放題で、口を挟めません。



 使い魔が使い魔なら、主人も主人と言うべきなのでしょうか?

「アレックス、君も聞いていかないかい。僕の美しくも儚い初恋物語を……」

 スイアーブさんは何やら唐突に語り始めようとしています。


「聞いてなどいかない」

「それは僕がまだ七つの頃だった――」


 スイアーブさんのお話は長いので、割愛させていただきます。

 そのお話の中から、客観性のある情報だけを抽出してみると、

①スイアーブさんは七才の時、迷子になった森の中でアンヤージの女性と出会い、助けてもらった

②その女性は黒髪だった

 以上の二点。


 二点。……少なっ!

 だってあとは、「もう一度会えたら」ですとか、「美しかった」ですとか、主観的かつ個人的なことばっかりなんですもの。


 ただ一言、感想を述べさせていただきますと、「修飾過多」です。「美しい」という一言で済むところにいろんな形容や修飾が付くのでビックリしました。


 語りたがりの悪癖を除けば、スイアーブさんは名前の通り、オアシスのような人だと思いますよ。

 え? ご主人様? ご主人様はサボテンではないでしょうか。


 それにしてもスイアーブさんとご主人様は、なんだか仲がよろしくないようですねえ。さっきからピリピリしたムードが漂っております。

 ジャックさんが間に入ってくれていますが、大丈夫なんでしょうか? このグループ……。


スイアーブ:中央アジア、天山山脈北麓チュー湖畔にあったオアシス都市。現在のキルギス共和国トクマク付近。(広辞苑)


見た目は犬なのに名前がフォックス。しかもやたらしゅっしゅしゅっしゅ言ってるのって、どう考えても某テレビコマーシャルの影響としか……(汗)


サボテンはオアシス→砂漠、の連想から適当に言わせただけだったのに、花言葉を調べてみて思わずニヤリ。

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