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12 魔法と陰陽道の相関

明日使えるかもしれない、無駄かもしれない知識の時間です。

 夜中に目が覚めて寝付けなくなったので、こっそり部屋を抜け出しました。庭を散歩します。


 私は、元の世界で書きかけにしているレポートのことを考えました。「平安時代の思想と文化」というテーマで、主に陰陽道のことを調べていました。


 これは、私もその時初めて知ったことなのですが、「陰陽」も「五行」も中国産の思想なのに、「陰陽五行」はどうやら日本産らしいんですよね。

 そして中国語には「陰陽」はあっても、「陰陽道」なる言葉は存在しないそうです。

 驚きですね。武士道、剣道、柔道、茶道、書道……。昔から日本人はとにかく「道」が好きだったんだなーとも思います。


 さてここで問題です。平安時代における「科学」とは、一体どんなものだったのでしょう?

 シンキングタイム三秒!


 …………では正解です。

 平安中期における科学とは、宇宙を主宰する存在「天」の意志を正しく読み取ること、だったそうです。


 その時代、世の中に起こる多くの物事は、「天」の意志すなわち「天意」のもとにあるものとされていました。

 天意は、宇宙の全ての物事をかたちづくっているとされた「気」を左右し、「気」によって人々に意志を伝えた、と考えられていたのです。

 この思想のもとでは、神や仏すらも「気」の一形態であるという考え方がなされるのだと知った時には、鳥肌が立ちましたね。だって「天」、最強じゃないですか!


 そして、その天意を読み取り、「気」の状態をうかがい知ることのできる特殊能力者こそ、「陰陽師」と呼ばれる人々だったのであります。


 ちなみに、陰陽師を扱う映画や小説なんかでよく聞く「急急如律令きゅうきゅうにょりつりょう」というあの文句は、書き下すと「急ぎ急ぎ律令の如くせよ」となります。

 「律令」は簡単に言えば法律のこと。この文言は、紀元前三世紀の中国における、公的命令書の末尾の定型句だったそうな。それがいつしか「願いがかなう万能呪文」になっていたのだから、不思議なものです。


 とにかく、陰陽道について語る時は、まず「気」という概念を根幹に置かないと、式神についての説明がつかなくなるようです。要するに式神も、「気」でかたちづくられているということですね。

 この「気」が陰と陽に分かれ、五行に分かれた、というのが陰陽道の考え方のようです。


 ――と、ここまで思い出してみて、ふと思ったんですが。

 この「気」とやらが、この世界で言う「魔力」に相当するのでは?


 ご主人様は魔力を持つ人間は限られていると言っていました。が、本当にそうなのでしょうか。有る無しではなく、強弱の問題であると、ここでは仮定してみたいと思います。


 誰もが「魔力」で出来ていながら、魔法使いになれるのはごく一部。それは、誰もが「気」で出来ていながら、陰陽師になれるのがごく一部だったのと、同じではないでしょうか。陰陽師が陰陽寮のお役人さんだったように、魔法使いも魔法庁なる所や、その他の国家の公的機関に配属されるのが通例だそうですから。

 魔法使いは、この世界では公務員みたいなものだったのです。びっくりですね。



 さて。

 木、火、土、金、水。五行のエレメントを東西南北と中央に配置します。東が木、西が水、南に火、北に金、中央に土といった具合です。

 この五行の図の、東を風に、北を土に、中央を光に置き換えてみます。するとどうでしょう、この世界での属性の関係図が完成します。――力技ですが。


 だけど分類って、この場合そんなに大事でしょうか?

 だってエリーちゃんも言ってたじゃないですか。『魔物は分類という概念に希薄だ』って。それでも魔物たちは「魔法」に近い事をやっています。それってもう、魔力や自然の有り様を理屈ではなく、本能で知ってるってことではないでしょうか。


 私は本能ではなく、理性で生きる人間ゆえに、枠組みが与えられなければ事物の本質を捉えられません。

 そんなわけで、今から陰陽五行の思想で魔法が使えないか、実験してみたいと思います。


 ――木は火を生み、火は土を生み、土は金を生み、金は水を生み、水は木を生みます。

 木は土にち、土は水に克ち、水は火に克ち、火は金に克ち、金は木に克ちます。

 そしてあらゆる物質は、世界という閉じられた系の中で、決められた法則と方向性に従って、循環しているのです。


 こうしたことを頭の隅に置いた上で、マツもどきに手を触れます。

 木克土。木が土から栄養――「気」を吸い上げ、成長するイメージ。


「急急如律令」


 マツもどきの幹や枝が薄い光の膜に包まれ、枝が伸びていきます。

 どうやら成功のようです。


 私はこの時初めて、魔法の何たるかを理解できた気がしたのでした。

陰陽道について参考にした文献は活動報告にて。

多少間違っていても、フィクションなので大目に……。


第一話でレポート云々って言ってたのは、このためでした。

唐突に思われたかもしれませんが、日本を連想させるものはちらほら出てきていたはずです。

メグは、エネルギーが何だか分からんとか言ってたくせに、「気」の概念はやけにすんなり受け入れてしまいましたね。まあそれも、レポートのために勉強した成果ということで……。

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