表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/65

1 異世界召喚にご用心!

 私はいつも、何かを探していました。

 家の中で、学校で、公園で、……それこそ、あらゆる場所で。

 誰かの歌謡曲ではありませんが。

 でも、どこでもそれは、見つからなかったんです。

 私の胸の中は、いつも満たされないでいました。

 何を探しているのかは、自分でもよく分からないのです。

 ただ、見つかればそれだと、すぐに分かるという確信だけがありました。


      *


 梅雨明けも間近に迫った七月上旬のある日のことです。

 昼休み、私が学生食堂でカツ丼を食べている時でした。


「実はあたしなー、日本人と異世界人のハーフやねん」


 同じ大学の友人の、雛ちゃんこと守屋雛子が突然ぽつりと言いました。


「確かに関西人というのは、多地域出身者から見れば異世界人かもしれませんねえ。

 ……そのジョーク、関西で流行ってるんですか?」

「そういうことちゃうねんけど。冗談でもないし」


 本気で言っているんだとすれば、かなり心配です。

 でも実は、彼女が異世界云々を話題にするのは、初めてではありません。

 雛ちゃんは小説や映画やアニメなんかが大好きで、妄想癖もある人です。別けても異世界を舞台にした物語は大好物で、私も彼女のお勧めの物語を何冊も読まされました。


「異世界ですか。例えばもし、大気中に酸素が一切ない世界に飛ばされたら、地球人類は一時間と経たずにまた、天国という異世界に召されるでしょうねー」


 雛ちゃんは、

「そういう世界も無いとは言えんな」

と頷きました。

 普段は突っ込みキャラの彼女ですが、「異世界」という単語が絡む時だけはボケになってしまうようです。


「メグもな、気いつけた方がええよ。いつどこに飛ばされるか分からんからね」

 雛ちゃんは、どこをどう気をつければいいのか、よく分からない忠告をくれました。

 あ、ちなみにメグというのは、私、松影めぐるの愛称です。




 午後の講義を終えて外に出ると、汗がジワリと滲んできました。

 その足で図書館に向かい、レポートを書くための資料を借りて、一人暮らしのアパートへ帰ります。

 レポートのテーマは、「平安時代の思想と文化」。

 理系の私とは縁もゆかりも無さそうな話題ですが、般教の単位も必要なのだから仕方ありません。


 夕飯を食べ、シャワーを浴びた後は、ひたすらレポートに没頭します。

 ふと時計を見ると、時刻は既に午前一時でした。

 ちょうどキリのいいところまで書けたので、もう寝ようとベッドに潜り込みました。

 朝起きたら、続きを書こうと思いながら。



 私は夢の中で、妙な声を聞きました。

 その声はワケの分からない呪文を唱えた後、確かにこう言いました。

「この声に応えて来たれ、我に従いしものよ!」

 刹那、私の体は暗い穴の中に吸い込まれました。




 瞼に光を感じて、朝かと思って目を開けました。

 七月のはずなのに、肌に触れる空気が妙に肌寒く感じられ、クーラーを効かせ過ぎたかと思いリモコンを探そうとして、違和感を覚えました。

 ベッドの上に寝ていたはずなのに、背中に感じるのは硬くて冷たい感触です。それはまるで、石の台座の上にでも横たわっているような感覚でした。


 そして目の前には、私の顔を覗き込む、えらく端正な顔立ちの青年。

 光の加減のせいでしょうか? 彼の髪と目は金色に見えます。

 混血か帰化でもしていない限り、日本人にはあり得ない色ですね。

 きっとこれは夢なのでしょう。まだぼんやりとしたままの頭でそう判断して、再び目を瞑りました。


 額に、誰かの手が置かれました。さっきの彼の手でしょうか。

 夢の中で聞いたのと同じ声が、またしても早口で呪文らしきものを唱えます。

 その瞬間、その声に縛られたように感じました。


 そして、生来探し続けてきた「何か」が、確かに近くにある気がしたのです。

連載、始めてしまいましたよ……。

一応最後まで書き終わってるので、よほどのことがない限りは一気に駆け抜けられるかと思います。おそらく……。(←超弱気)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ