2/7
プロローグ 恋は、答え合わせじゃない
僕――伏野志貴は、今まで一目惚れで生きてきた。
好きなゲームも、
好きな食べ物も、
好きな服も、好きな歌も。
理由なんて後からついてくる。
最初にあるのは、ただ一つ。
――「これだ」と思う感覚。
直感は、案外裏切らない。
むしろ、理屈のほうが嘘をつく。
だから恋だって、同じだと思っている。
時間をかけて好きになる?
それも悪くない。
でもそれはきっと、答え合わせだ。
本当に大事なのは、一瞬。
目が合ったその瞬間。
声を聞いたその刹那。
世界の色が、ほんの少しだけ変わる。
胸の奥に、微かな電流が走る。
ああ、来た。
それが僕にとっての恋だ。
だから――
告白してくれた彼女たちの気持ちには、応えられなかった。
嬉しかった。
本当に、嬉しかった。
でも、僕の心臓は静かなままだった。
僕が求めているのは、もっと暴力的で、不可逆な衝撃だ。
僕は、あの感覚を待っている。
世界が、たった一人の存在で塗り替わる、あの瞬間を。
そしてあの日。
伏野志貴は、初めてそれを知った。




