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Sugar☆Love letter

花戸です♪


シュガプリ、かなり前に完結させて頂いたのですが、PV16000とか越しちゃいまして…。


嬉しくて…番外編を書いてしまいました。


今回のお話は、まだ白雪姫の劇が終わってすぐのお話です。


お楽しみ下さい☆

まだ日は高かった。


両親は仕事をしに行って、暇になった俺は近くを散歩することにした。


この国に来たのは二度め。

とは言っても昨日着いたばかりだから、外を探検しようかな、という今では考えられないほどの好奇心と可愛らしさを持った俺は、お手伝いさんの目を盗んで一人で家をぬけ出した。


だけど、幼くて無邪気といっても、所詮同じ人間。


疲れた俺は綺麗な庭園で一休みすることにした。……誰の敷地か?まぁ、問題ないだろう。


予想通り襲ってきた眠気に従い、そのまま芝生にころんと横になった。


大人になれば、もうこんな自由に出来ないだろうから、今のうちに休んでおこう。とか思いながら。


「かあさまー。みてみてー。だれか…ねてるわー」


3歳くらいだろうか…。幼児特有の可愛らしい声にうっすらと目を開けた俺の頬に、小さな手が置かれていた。


その子の近くにしゃがみこんだ黒髪美女が、涼しげな目元を面白そうに細めて俺を見た。

この国で家族意外で日本人を見たのは初めてだった俺は、少し吃驚した。


「ほんとねぇ…。あら、起きたわ」


そう言ってぷにぷにと俺の頬を細い指で押してくるので、俺は起き上がった。


「うわー。きれいなおめめねー」


そう言って笑いかけてきたその子はキュッと俺の手を握った。


黒髪の母親に駆け寄ってきた驚くほどそっくりな二人が、むうっと頬をふくらませた。

着ている服からして、多分男と女。双子、かな。


「しき。あのおとこあたしたちのハルヒとてぇつないでるわ」


くるくるに髪を巻いた女のほうがヒソッと隣にいる男に言った。


「ゆるせないね、ゆき。どうしてやろうか」


ヒソヒソヒソヒソ何か言い合っているのはわかったが、そこまで英語が堪能ではなかった当時の俺には聞き取れなかったのをおぼえている。


きょとんとする俺に、黒髪美女はあぁ、と頷いた。


「秋野さんのお子さんね。初めまして。えっと」


日本語で話しかけてくれたので俺はいくらか安心出来て、名前を言った。


「り…りおう、です」


「まぁ、どんな字を書くの?」


「えっと…。るりの、さくら」


「瑠璃…。璃桜くん。まぁ…綺麗な名前。ほら、貴方たちは?」


しがみついている双子にその人は言った。


「…ぼくは、しき。よろしく、りおう」


ニコッと笑った男のほうとは対称的に、女はツイッと顔を背けながら言った。


「………ゆき」


ほんわかと笑んだその人は、まだ俺の手を持っている子を見た。


「このこは美妃よ。ほら、ご挨拶」


ギュッと俺を抱き締めたハルヒはえへへと笑った。


「はるひです。さんさいです」


……こいつが一番しっかりしてるように見える…。


ハルヒは黒髪美女を見た。


「かあさまはー?」


「あら、そうね。ごめんなさい」


黒髪美女はにっこり笑って俺の頭を撫でた。


「花奈子です。……あぁ、そうだ。おうちの方々が必死になって貴方を探していたわよ?貴方、黙って出てきたのね?」


「だって…。ひまなんだ」


「あら。お部屋より外のほうがお昼寝には気持ちがいい?奇遇ね、私もこっちが好きだわ」


「……かあさま。父さまだよ」


志貴がほら、と後ろを差した。


そこには金髪のいかにも美男、といった男が滝のような汗をだらだらと流しながら必死の形相で俺たちに駆け寄ってきた。


「かっ…花奈さん!どーしていきなりふらっと子供達つれて居なくなったと思ったらリオウ君と一緒にいるの!?君が誘拐したと思われたらどうするんだ!」


「あら……ごめんなさい。璃桜君を見つけたから連れていこうと思ったのよ?それが何故か話し込んじゃって」


「とうさま…。いくらなんでもゆうかいにはならないわ」


雪姫が呆れたように呟く。


父、エドガーは疲れた微笑を浮かべた。


「それがね……。こっちを見てごらん」


建物を挟んだ向こう側を全員でひょいっと見ると、執事やメイドが泣き叫ばんばかりに璃桜の名を呼んでいた。


「気付かなかった…?」


「えぇまぁ…。ごめんなさいエドガー。璃桜君は私が責任もって連れて…」


「いや。お願いだから君はじっとしてて。……そうだ」


エドガーは璃桜にべったりしている娘を見てにっこり笑った。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「あのお……」


「ん?どうしましたお嬢さん」


秋野家の執事である山咲は突然服を引っ張ったかなり幼い少女に小さく微笑んだ。


四歳の若君がいなくなった一大事とは言え、人の良い彼はその少女に目線を合わせてしゃがみこんだ。


少女はえっと…と困ったような顔をして、庭の植木を指差した。


「うん?」


振り向いた彼の目にうつったのは…。


「りっ、璃桜さまー!」


慌てて駆け寄り抱き上げる。

璃桜は眠たそうな目をして老執事を見た。


「あ、山咲さん」


「あ、じゃないです!今までいったいどこに?」


「そのことあそんでた」


見ると少女はにこにこと微笑んでいた。


「ハルヒっていうんだ」


「はるひ…。隣の伯爵家の娘さんですか!?あぁ……なるほど」


こんな小さな子と遊んでいたのに璃桜さまを見付けられないなんて……完全に私どもの落ち度でございますね……。


山咲は少女に優しく微笑みかけた。


「璃桜さまと遊んで頂いてありがとうございました。また…遊んであげて下さいませ」


「うん♪じゃあね、りおうくん!」


「うん……バイバイ」


いつになく幸せそうな笑みを浮かべる璃桜を、山咲は嬉しそうな顔で抱き締めた。


「見付かってよかったー…!今度外出されるときは一言山咲に言ってからにしてくださいねっ!」


「うーん」



「あっ!璃桜さま!!」


「見付かったんですね!よかった〜」


「………………」


沢山の人に囲まれながら、璃桜は睡魔をかんじ微睡んでいた。


(また、あえる)


そしたら今度はゆっくり本当に遊びたいなー…。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「…璃桜さん、眠ったまま笑ってるんですけど」


「ホントだねー…。あ、起きたよ」


パチッと開いた瞳の綺麗な紫色に美妃は少し息をのんだ。


そんな美妃に璃桜はすっと手を伸ばした。


「……おっきくなったねー」


「へ?」


「夢、見てた。幼い美妃と…あ、そうだ雪姫さんもいたよ。多分5歳」


「んなっ!」


翔太はガシッと璃桜の肩を掴んだ。


「ずるいそ!俺も見たかったー!」


「あ、そっすか。残念だったね」


ふふん。と得意気に笑う。


……けど、俺がエドガーさんと花奈子さんに会ったのは、あの日が最後となった。


それに、美妃にも。

数ヶ月前にこの学園で再会するまで、逢えることは無かった。


璃桜は心からの笑顔を美妃に向けた。


「いーっぱい、遊ぼうね?約束したんだから」


「は!?してませんよ?」


目を丸くする美妃に翔太はため息をついた。


「寝ぼけてるんだよ。さ、ほら資料まとめないとね」


「はい…」


なにか、大切な事を忘れている気がする…ような。

小さく首を傾げる美妃を、璃桜はいつものように抱き締めた。


「美妃……大好きだよ」


「……本当に寝ぼけてらっしゃるんですね」


美妃はやれやれと呟いた。


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