Sugar☆love40
「たっ、大変ですわ!」
いつもの可憐な紫紅からは想像もつかないほど慌てた様子で生徒会室に駆け込んできた紫紅はそう叫んだ。
非常時を察して美妃たちは身構える。
が。空気のよめない楓が嬉しそうにポテポテと紫紅に近づいていった。
「こんなに天気も良いのに、どうしたの〜?」
「…どうしたのじゃありませんわよ!私は生徒会の皆さんに用があって来たのです。いいから貴方は空でも眺めておいて下さいませっ」
一気にまくし立て、放心している楓を押し退けた紫紅は美妃に事情を説明した。
「今や下の階はえらいことになってますわ、美妃さん。学園が、生徒会…というかアイドル部を潰そうとしているという噂が一部の女子生徒の間で広まったらしく、それが全生徒に伝わってしまって。反対を訴えデモを起こす生徒や、皆さんに真実を聞こうとこの室に押し寄せようとしている生徒までいるんですのよ!」
美妃を含め、部員全員が文字通り飛び上がった。
「と、取り敢えず落ち着いて下さい紫紅さん。多分学園長の仕業でしょうし…でも随分大雑把ですね」
学園長にも混乱は予想できたはずだけど。美妃の呟きに、玲生が口を開いた。
「まぁ権力行使が一番確実だからな。あのおばさんが考えそうな事だ」
「…紫紅さん、それで今、現場はどうなってるんですか」
「瑠璃花さんと蛍部長が取り敢えず説得に行ってますわ。この部屋に来るのだけは阻止しようと。私は連絡係です。今のところ怪我をした方はいらっしゃいません。ですが……」
いま、怪我人がいない事に安堵した美妃と対称的に、棗は青い顔をしていた。
美妃はそんな棗をチラッと見て、全体に指示を飛ばした。
「生徒の鎮静は瑠璃花と蛍さん、楓さん、香坂先生にお願いしましょう。あ、部員の皆さんは出来るだけ姿を隠しておいて下さい」
この混乱のさなか、突然部員が出ていったらどうなるかわかったもんじゃない。美妃はそう判断した。
「いつ怪我人が出るかわかりません。棗さん、多分校医だけでは全体を把握するのは無理です。早急に医師の手配をお願いします」
「…あぁ。わかった」
「あと、みんなに伝えて頂きたいんですけど。あ、紫紅さんこれを校内放送で流してもらえますか?」
美妃は緊張でひきつる顔でニコッと笑った。
「一時間後、第1体育館で説明会見をします、と」