Sugar☆love34
美妃から見ると馬鹿馬鹿しい(仕事なので文句は無いが)撮影も無事終わり、瑠璃花と美妃は手配しておいた旅館でくつろいでいた。
「やっぱり瑠璃花がいて良かったよ。こんな旅館まで用意出来たし」
「ふふん。こういう時美人は得やなぁ」
「うん、さすがにここまで良い旅館はなかなかね。あー疲れた」
あれから何かと生徒会に遊びに来るようになった紫紅と蛍なのだが、行き先を伝えたらなんとこの旅館も蛍の家が経営するものを準備してくれて、かなりのサービスをしてくれている。
自由にゴロゴロしていると、翔太たちが雑誌を片手に部屋に来た。
「見た?玲生がのってたんだけど」
差し出された雑誌を見ると、華道の特集に白鳥家が取り上げられていた。
「今日の発表展の宣伝みたい。今回のは刹那さんの作品を主にしているみたいだね…ほらここ」
翔太の指か差した所に玲生と刹那の写真が載っていた。
美妃は感動しながら瑠璃花に訊ねた。
「ねぇ知ってた?すごいね」
「うん?刹那さんには何回かあったことあるし。って言うか美妃知らんかったん?華道家元やんか、玲生んち」
「そうなんだ……」
記事に目を通す。
あ、と驚いて理桜を見上げた。
「この、よく出てくるAkinoってもしかして…?」
「うん。ウチ」
こっくりと頷く理桜に美妃は固まった。
お金持ちなのは知っていたが…。
棗が楽しそうに説明してくれた。
「理桜の家は昔から、国内最大シェアの生花輸出入販売をしてんねんけど、そのなかでも超最高質品だけを扱っているAkinoは国内外問わずかなりの高級ブランドなんや。Akinoは白鳥家御用達でもあるし…理桜の父ちゃんかなりのヤリテで、花以外にも色々やっとるみたいやけど、最近ではマカオでホテルとかカジノとか経営してるな。俺らん中でも理桜の家はかなり上クラスやもん」
棗の丁寧な説明は、一応家系的にはめちゃ高貴な身分とはいえ、そこまで馬鹿みたいにセレブでもない世間知らずの美妃にとって衝撃の連続だった。
ついでに訊いてみる。
「えと、翔太さんとか棗さんとかのお家は、どんな…?」
翔太はクスッと笑って棗を見た。
「棗とか瑠璃花の家は、主に医療系…ほら病院とか持ってる。ウチは…ケーキ屋?」
戸惑った美妃に瑠璃花が笑いながら説明した。
「翔太はうちらに比べたら庶民やでー。かなり美味しいケーキ屋やけど、翔太のお父さん…パティシエの方針でチェーン店も出しとらんし。あ、でも翔太のお母さんは有名な女優さんやけども」
どこが庶民?身近にいた人たちの後ろ楯に唖然とする美妃に翔太が苦笑した。
「性格悪いな瑠璃花。そんなお嬢様がウチのケーキ屋でバイトなんかすんなよ。…あ、でも生徒会は雪姫が厳選した奴らばっかだから、月岡学園のなかでも上のほうばっか集まってるから、驚くことないよ」
そういう問題なのだろうかと美妃が思っていると、理桜がンーと伸びをした。小さく呟く。
「それよりここら辺やっぱイるー…。海の近くってやだね」
翔太が心配そうに瞬きし、携帯を覗き込んだ。楓は正式な生徒会役員ではないので手続きに時間がかかってしまった。
「蛍の言う通りだな…大丈夫か?一応楓呼んだけど、あと30分くらいかかるらしいよ」
他愛ないことで瑠璃花と笑いあっていた美妃が顔を強ばらせた。
「え…なんの会話ですか。まさか」
珍しく目を細めた理桜がこっくり頷いた。
「…イルね、ここら。この旅館から出たらうじゃうじゃ」
凍りついた美妃を棗と瑠璃花が慌てて励ました。
「もうすぐ楓くるから大丈夫やって。あいつ凄いねんで〜、理桜は視える人けど、楓は居るだけでソウイウの祓えるんや。楓は視えへんらしいけど」
「な?元気だしぃや。この旅館内は蛍先輩が理桜の為にソウイウの近づけへんようにお札とか貼ってくれてるから安心やし」
理桜は視るだけでなく悪いものにはアテられて倒れてしまうので、翔太が事前に蛍に頼んでおいたのだ。ホテルや旅館経営をしている百目鬼家はソウイウ方面の専門家も雇っているらしい。
理桜いわく、この旅館は不自然なくらい清められていて、とてもキレイな状態のようだ。
美妃は青い顔でがっくりしていたが、なんとか微笑んだ。
「あは。いや別に私は視えるわけでは無いので…。ただあんまり得意じゃないだけです…気にしないで下さい」
うーんと翔太が提案した。
「じゃさ、楓が来るまで旅館から出れないんだし、課題でもやっとく?」
一斉にゲッと嫌な顔をした部員ににっこり微笑み、翔太はかばんから大量のプリントを取り出した。
「理事長さまが、授業受けないんならヤレって」