Sugar☆love33
「いや良かったよ、本当に今日は美しいものを見ることが出来た」
銀髪の紳士に賞賛を受け、玲生はにっこり笑って頭を下げる。
生徒会が撮影のため海で遊んでいる時、玲生は華道家元白鳥の個展に少しだけ携わっていた。
玲生は会場の一角で自身の作品を少し飾っているのだが、幼少から花を活けるのに最高の環境で育った玲生が活けた花には決して少なくないファンがついている。
先ほどの初老の紳士もその一人。
個展も無事終了し、てきぱきと着物を着替え、玲生はある人に会いに行った。
待ち合わせ先は個展を開いていたホテルの下にあるカフェ。白鳥と昔から友好な関係の萩野家の跡継ぎでもあり月岡学園の理事でもある、萩野芙美子がほんわかとした笑みで優雅に玲生に顔を向けた。
「お疲れさま。流石ね、見事だったわ」
「有難うございます。ですがまだまだ兄には敵いませんよ」
自分のお気に入りである玲生の兄、刹那の名に芙美子は微笑んだ。
「そうね。私は刹那君が活けた花のほうが好きだけど、気にすることないわよ?相手がちょっと早く産まれただけなんだから」
玲生は心で毒づきながらにっこり笑った。
アンタと俺は違うよ?
「えぇ。でも僕は兄を尊敬していますから。僕の花と兄の花が違うのは当たり前ですし。それは今もこれからも変わらないと思います」
なるべく自然に言ったつもりだったが、芙美子は気が付いたらしい。一瞬冷たい目を玲生に向けた。
が、すぐいつもの柔らかな表情に戻り玲生を見た。
「さてと、貴方たちのことだから話は知ってるわよねぇ。今日は貴方の意見を聞きにきたのよ」
(…はい。ですよね)
静かに微笑む玲生に芙美子はため息をついた。
「その様子じゃ、決まってるようね。もういいわ帰って」
「……失礼します」
ココアを飲みながら芙美子はキリキリと唇を噛んだ。
玲生といいあの娘といい本当に気分が悪い。
少しして、玲生と入れ違いになるように玲生がさっきまで座っていた席に猫のようにしなやかな動作で和服姿の青年が腰を下ろした。
玲生と刹那は6歳差の兄弟なので刹那は現在22歳。二人とも他を圧倒する美しさだが、真紅の薔薇が玲生なら刹那は純白の百合に例えられる。
猪突猛進型で生命力あふれる玲生に比べ、少し体が弱く細身なのでまた儚げだった。
刹那は小首を傾げた。
「…大丈夫ですか?芙美子さん」
芙美子は目を細めた。
「えぇ。どうせ目障りな女はみんな死ぬもの。今は、早くそれより」
芙美子はにっこり笑った。
「生徒会を潰さないと」
花戸です。
新しい人物が多くなってきましたので少し整理してみますと、
柏木雪姫…美妃の姉。18歳。
柏木志貴…美妃の兄。18歳。
二人は二卵性の双子です。現在イギリス。
萩野芙美子…美妃たちの母の妹。月岡学園理事。36歳。
白鳥刹那…玲生の兄。病弱。22歳。
…と、このくらいでいいですかね。
では、ご一読下さり有難うございました。