Sugar☆love31
「…離れて下さいってば。何度目ですかねこれ言うの」
「えー…。厳しい…」
「熱いんです!もう初夏です…って!」
ベリッと腕に貼り付いた理桜を剥がす。
二人のやり取りを見ていた香坂が呟いた。
「…はたから見ると普通にBLだな。いやオイシイ」
はぁ!?と真っ青な顔をする美妃。
翔太はまぁまぁと笑ってパソコンを指した。
「ほら、もうすぐ雪姫が…あ、ほら」
数秒後、画面に満面の笑みを浮かべる雪姫が映った。
『はぁい♪美妃元気〜?みんなも〜』
「雪姫!」
美妃は思わず手を振った。理桜もペコと軽く頭を下げる。
『うふふ、見たわよビデオ。良かったじゃない。香坂先生ありがとー』
香坂はえっへんと胸をはった。
「ああまぁな。ちゃんと題名は白雪姫にしたから、お前も一緒だ」
『ふふ、嬉しいわ』
美妃は軽く驚いた。
そういう意味があったのか。
…いや普通もっと早く気付くか……。
美妃が自己嫌悪に陥っていると雪姫が不思議そうに瞬きした。
『あら?玲生は?』
「雪姫!それよりなっ、あのねっ」
自分も褒めてもらおうと身を乗り出す翔太を押し潰し、棗は苦笑いした。
「ちょっと野暮用…ちゅーかな〜。気にせんで」
『そう?あ、…美妃。叔母さまの事は知ってるわ。でも私に出来ることはないから』
「え」
『みんなで頑張りなさい。遠くから応援してる』
「え、ちょっと待っ」
美妃は眉をひそめた。理不尽な言い方ではなく…画像が悪いからかも知れないが、雪姫の顔色が。
翔太も気付いたようだ。心配気な表情で話しかけようとするが、雪姫の笑顔に遮られる。
『…じゃあ、頑張りなさいね。……あら、志貴』
画面一杯に兄の顔が映った。
『…おっと間違えた。難しいネ、コレ。美妃!元気かい!?』
雪姫と同じ黒曜石色の瞳が美妃を見つけてキラキラ輝く。
翔太が一瞬ゲッとした顔をした。
かまわず笑顔の兄に美妃は頷いた。
「あ、うん元気。久しぶりだね」
そういう美妃にいきなり理桜が目を覗き込んできた。
「……なんですか」
「…やっぱり、綺麗な薄い茶色だよね、美妃は」
「……目ですか?父に似たんですかね。そういう理桜さんも紫ですよ」
「俺は日本人の血のが薄いからね。まぁ黒髪カツラで黒カラコンつけたら見た目日本人だけども」
『ボクの妹に触るんじゃないよこの変態オヤシ。知ってるかい、セクハラだよそれ……あ、そろそろ時間かな、……ショータさん?…美妃をよろしくネ』
「あっちょっと!雪姫〜」
フッと画面が切り替わった。追いすがる翔太が最後に見たのは志貴のアッカンベーと舌を出した顔だった……。