Sugar☆Love25
(あ……、あの娘また絡まれてるやん……)
とはいえいつもの光景なので無視してそのまま廊下を通ろうとすると、突然肩を叩かれた。
訝しげに振り返ると、たしか同じクラスの生徒だと思う、男がいた。
「東条さんだよね?…ちよっと、時間あるかな」
瑠璃花はニコリと笑ってかわした。
「いえ、すみません。私今から職員室に行かないといけないんです」
じゃ、と背を向ける瑠璃花にその猫のような顔をした男は慌てて瑠璃花の肩を掴んだ。
ぐいんと引っ張られて瑠璃花はバランスがとれなくなり、後ろにこけそうになった。
だがすぐにぱし、と背中を支えられ、顔を上げると……。
(……うおっと)
その娘は瑠璃花を立たせ支えたまま、眉間にシワを寄せてその男を冷ややかに睨んだ。
「…女の子への接し方もワカラナイ男は人間のクズだよね。迷惑だって言ってんのわかんない?」
「…………っ」
その男は顔を真っ赤にさせ、どこかに走っていった。
瑠璃花はお礼を言おうと背の高いその娘に目線を合わせた。
が。
「ごめん、ちょっと来て?」
いきなりその娘ははっとした顔をし、問答無用で瑠璃花を教室の隅に引っ張っていった。
「……どしたの」
「やー、それがね…」
その娘が困った顔でうつむくと同時に、教室にがやがやと数名の女子生徒が入ってきた。
その娘を見つけ、キャアキャア騒ぐ。
「あっハルヒ君見つけた。どこいってたの、探したのよ〜」
(…そういえば)
瑠璃花はこのさい、ちゃんと言っておこうかなと思い、その娘の目を見た。
「柏木さんって女の子でしょう?なんで男子制服なんて着てんの。…あ、モテたいの?」
その娘は一生懸命否定した。
「まさか!コレはその…姉…に、着せられて…」
モゴモゴいう美妃に、瑠璃花は首を傾げた。
姉か。今まで本気で女子にモテるのが好きなのか、趣味かなんかだと思っていた。
って言うかどんな姉だ。
「ちょっとハルヒ君。聞いてるの〜?」
女子たちはハルヒに群がり、瑠璃花は弾き飛ばされる格好になった。
イラッとした。
全くこういう奴らは金持ちでもやること一緒だな。
美妃は苦笑いをし、瑠璃花と目を合わせた。
助けてーといった表情の美妃に瑠璃花はため息をついた。
「……ほらどきぃや」
女子たちは、誰が言ったのか分からない感じで瞬きしていたが、ずんずんと美妃に近づく瑠璃花に、え?という顔をした。
「本当は関西弁なんだ」
美妃のどこか嬉しそうな呟きは無視し、瑠璃花はガン見してくる女子に向き直った。
「……なんや?なんか文句でもあるん?」
「…ちょっと、あなた新規?止めてよ。ハルヒ君はみんなのものよ」
新規だと?
瑠璃花は驚いて止めさせようとする美妃の腕に手を回して不敵に微笑んだ。
「わからへんの?私、この娘に告られてん。だから…もう迷惑行為はやめたってね?」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
美妃は弱々しく笑った。
「さっきはありがとう」
「いや…別にえぇよ」
瑠璃花は気付いていた。
多分、この娘も友達いないんだろう。
「あ、さっきは告られたーなんて嘘ついてごめんな。思わず。」
美妃は首を振った。
「ううん。それに…東条さんはそういう娘じゃないって、知ってたし。本当に迷惑だったから。…それに」
美妃は顔を真っ赤にしてうつむくと、おずおずと首を傾げた。
「ずっと、友達になりたいなって思ってて…」
瑠璃花は瞬きした。
「あっ!そういう趣味とかじゃないよ。確かに男のひとより女の子のが好きだけど…いや、恋愛感情じゃないし」
「…私も、そうやな」
え?という表情の美妃。
「友達いーひんねん。私。お互いモテてつらいな。よかったら友達兼彼氏になってくれん?」
「…彼氏?」
「あ、嫌?」
傷つけてしまったか。
謝ろうとした瑠璃花に美妃はにっこり笑った。
「いいよ。周りにはそう思わせとこ。うわー嬉しい。この学校で初めて友達出来た」
瑠璃花は笑った。
「アホやなぁ」
「…そっちだって友達いなかったでしょ」
「んなっ……」
瑠璃花は面食らった。
「言うんや……。そういうこと。いつもの王子キャラはどこいってん」
「なっ!意識してやってるわけじゃないよ」
「どーだかねぇ」
「…そっちこそ。いつも優等生ぶってるじゃん」
むう~っと頬を膨らませる美妃は、瑠璃花からみたら普通の女の子だ。
美妃は微笑んだ。
「これからよろしくね」
瑠璃花も自然に頬が緩んだ。
「こちらこそ」
やっと居場所見つけた。