Sugar☆love23
歓迎舞台2日前の放課後、演劇部専用体育祭にて
「ハル……なにあのちびっこ。何度も言うけどなんであんなの連れてきたの」
いつになく不機嫌そーな白雪理桜。
「や……すいません。まさかあんな豹変するとは。…ってか」
美妃は理桜の姿をもう一度感慨深く眺めた。
スラリと背の高く華奢な理桜は女装でも似合っていて、煙るような睫毛に縁どられた淡い紫の瞳は神秘的に美しく、白い肌は少々の化粧で可愛らしさを帯びている。
せっかく普段の黒いカラコンを外すんなら、と翔太のすすめで瞳に合わせた薄紫のドレス。菫のように小さな黄色いレースがポイントになっていて、綺麗、という印象だ。黒髪はあくまでいつもの少し癖のある形でカツラは被っていない。それでも翔太に言われ、役の為に伸ばしているので女装に支障はない。
(でも…白雪って自然派な可愛さじゃなかったのかなぁ。なんか百戦錬磨の美女ってカンジ?)
「…キレイですねー」
「女装誉められても」
美妃は苦笑した。
「ですよね。私もさっきいろんな人に誉めて貰いました」
我ながら珍しいタイプの女の子だよなと思う。
談笑していた美妃たちに、‘ちびっこ’から怒声が飛んだ。
「おいそこの王子と白雪!!ダベってる暇があるんなら台詞カンペキに言えるようにしとけ!特にハルヒ!」
「はいっ!?」
蛍は容赦なかった。
「やる気ねーだろお前!棒読みもいい加減にしろよ。死ぬ気でやれ!」
竹刀を振り回しながら怒鳴る蛍はまるで鬼神(小鬼?)のようだ。
綿菓子のようだった蛍は、一瞬にして逆らったら命の危険を感じさせる人になってしまった。
個人的に指導を受けるため美妃は蛍の前に行き、台本を睨み付けて息を吸った。
「…御義母様、では行って参ります」
「もっと感情こめて!今から嫁探しに行くってゆーウキウキ感と、可愛がってくれた女王との別れって言う哀愁!でもあんま哀愁強いとただのマザコンだから。適度に!」
「………すごいな蛍。噂には聞いとったけども」
居残り組(美妃と理桜)を可哀想に見ていた棗は少し蛍へ尊敬込めて呟いた。
魔王の衣装は動きにくく重いので、役者で棗のみジャージを着ている。
「ちょっと翔太に似とらん?二重人格って言う」
「そうか?……あ、ハルヒちゃん終わったみたいだな。今日はもう帰るか」
見た目の才能を最大限に使っている翔太は、実際白雪役の理桜より可愛らしかった。理桜が綺麗系なら翔太はどこまでも姫系。
美妃の心配を受け止めると、多分翔太が白雪を演るべきなのだろう。
赤いドレスを引きずって翔太は蛍に手を振った。
「終わろー?」
蛍は舌打ちして頷いた。
ギロッと美妃を睨む
「今日の課題は、分かってるな?」
「はい!家で死ぬ気で頑張ります!ご指導ありがとうございました」