Sugar☆love2
「説明して?雪姫」
つい15分前、最上階にある生徒会室へと急いで向かっていた美妃は、向こうから、タワーのように積み上げられた教材が歩いて…?いや、視界が見えなくなるほど教材をもって歩いてくる女を発見し、慌てて駆け寄った。
「大丈夫ですか!?半分持ちますよ、貸してください」
「あ…すまんな」
軽々とほとんどの教本を持ち上げた美妃は、反射でにっこり笑った。見かけない顔だが、新任の教師らしい。お局教師の嫌がらせでこんなもの、運んでいたのだろうか。
「いえ。貴女みたいな可愛らしい人に、こんな荷物を持たせておくわけにはいきませんから。どこへ運べばいいんですか?」
「…なるほど、凄い才能だな、さすが柏木美妃」「へ?…えっと」
戸惑って固まった美妃に、目の前の優しげでどこか神秘的な女性教師は美妃を見上げながらうんうんと頷いた。
「これなら、ウチで働いてもらっても大丈夫そうだ。…ま、とりあえずソレ、生徒会室によろしく。行くぞ」
そういうと、教師は美妃に背を向け、もと来た道をずんずん歩いていった。
それから15分後。
「…は?いまなんて?」美妃は目の前で優雅に紅茶を呑む姉をポカンと見詰めた。
「だから、私、イギリス留学するから」
「そのもっと後」
「えー、だから、その間私の代わりよろしく。簡単よ?生徒会のマネージャー」
生徒会にマネージャーってなに。
混乱する美妃の口にチョコレートを放り込んだ雪姫は、スクッと立ち上がった。
「じゃ、行ってきます。後のことは頼んだわよ、美妃。分からないことは、自力で調べるか、翔太とか香坂先生とかに訊きなさい。じゃね」
えっ、ちょっと待って。声にならない叫びを胸に抱えてながら本当に部屋から出ていった姉の姿を見送る。
「おい連れてきたぞ…って雪姫、もう行ったのか」
香坂の声に、姉が出ていったのとは別のドアの方に視線を動かす。「ハルヒ、こいつが月岡高校の生徒会長だ」
「…はあ」美妃は眉間にしわを寄せ、いやいや立ち上がった。だが一応、綺麗ににっこり笑う。
「柏木です…どうぞよろしく」
姉には逆らえない。
そんな美妃の心情を読み取ったのか、香坂の隣に立っていたサラサラした茶髪の華やかな容姿の青年が驚いたように目を見開いた。
「はー、雪姫の妹、めっちゃ美少女だけど男嫌いって本当だったんだ。えっと、ハルヒちゃん?俺、生徒会長の翔太。今高三やってます、これからよろしく」ペコリと頭を下げる翔太に、慌てて美妃も頭を下げた。
「よろしくお願いします。…ところで、今日は他の方は」
そう美妃が尋ねると、香坂と翔太は顔を見合わせた。
「まぁ、まだ入学したてだからな…。知らなくても無理はない」
「いやいや雪姫の妹なんでしょ、ハルヒちゃん。ってか一年のコ、かなりもうファンになってくれてますよ?」
「…えっと、あの?」
美妃が恐る恐る口をはさむと、はっとしたように翔太が振り返った。
「あー、じゃ、いく?のほうが早くね?」