Sugar☆love12
放課後。玲生以外の部員は全員、生徒会室に集まっていた。
「…リトルスノーホワイト?なんですか、これ」
楓は美妃の持っていた英文の台本の表紙を首を傾げて見た。
「アホ。そんなんやからウチに入れへんねん。なんでカタカナ英語やねんな」
翔太は笑顔で頷いた。
「あは。本当だねー。あ、お茶っぱ切れたから買ってきて」
「はい!行ってきます」
楓は喜んで出ていった。
あまりの不憫さに棗は軽く目頭が熱くなる。
…一体、生徒会長サマになにをしたんや楓…。
だが美妃の声に、棗は一瞬で切り替えた。
「えっと『Little Snow-White』…を今回のステージで上演したらどうかな、と思って急遽台本を作ってみたんですけど…」
手渡された簡素な台本を眺めて棗はちらっと翔太の顔を盗み見た。
案の定、いつになく完璧な苦笑いを浮かべている。
「えーっと、なんで白雪姫?しかも…なんかすごい話し変わってない?」
美妃は遠い目をして、台本に目線を落とした。
「…昨日、雪姫から白雪姫の絵本が送られて来た後、電話がかかってきまして」
翔太は仰天した。
「嘘っ!雪姫から、かかってきたの!?ハルヒちゃんがかけたんじゃなくって!?」
詰めよってくる翔太の真剣な眼差しに思わず美妃は後退りした。
「えっ…ええまぁ」
「翔ー太。ちょっと静かにしーひん?」「あ…すまん。あまりに羨ましくって……。ごめんねハルヒちゃん…先どうぞ」
グズッと鼻水をすする翔太を気遣わしげに眺めながら、美妃は説明を急いだ。
「…アンタがマネージャーになって初めての仕事は前から決めてたの。このお芝居を必ず成功させて、撮ったデータをコッチ(英国)に送ってきなさい。…との。あ、この台本は原作を元にした改造版らしいです。雪姫が香坂先生に頼んで創ってもらったそうで」
「はぁ…流石姉妹…声似てる…まるで雪姫みたいだったよ…」
一旦は止まった涙も、声色を少し似せた美妃の朗読で再び復活したらしい。
そっとしておこう。棗はそう判断し、美妃に訊ねた。
「そっかー。じゃ、役フリとか決めなあかんなぁ。白雪誰するん?ハルヒちゃんは出えへんの?」
美妃はコクコク頷いた。
「私は全力で裏方にまわらせて頂きます。…人数的に足りなかったら、木の役とか動物の役とかなら出来ますけど」
美妃のキッパリとした発言に、翔太はまったをかけた。
さっきまでのウジウジ姿はドコへやら、その甘い美貌を輝かせて美妃に宣言する。
「いや!役フリは会長である僕に任せてもらおうか。貴重な収入源であるハルヒちゃんは絶対参加で。…じゃ、今日はこれで終わろう。解散!」
雪姫が観る、という事を思い出した翔太はギラギラと意欲を燃やしていた。棗と美妃は勢いに押され、すごすごと退散することにした。