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Sugar☆Love10

星降る夜……。

そんな抽象的でよくある表現を使いたくないが、本当に、そんな空だった。


その時は、星を見る余裕なんて無かったけれど。

「…………は?」


「だーから。生徒会長、なってよ」


白い息をはきながら、学校でなにかと有名なその美女はさっきも言った台詞を繰り返した。


「いえ、結構です」


学校からの帰り道、彼女はいきなり現れ、俺にずっとつきまとっていた。俺と同学年のはずだし、初対面だと思うが、随分親しげに話しかけてきた。


「どうして?」


彼女は心底意外そうに首を傾げ、眉間にしわを寄せる。

俺は息を吐いた。


「だって……面倒じゃないですか。だいたいどうして俺なんです?成績はかなり良いと思いますけど、生徒会長がタバコ吸ってたり酒呑んでたらダメでしょう」


一気にまくし立てる。

別に嘘じゃないし。

これで、諦めるだろう。

早く、帰ってくれないだろうか。


「ん?別に問題ないわ」

飄々とした表情をする彼女に正直苛々した。


「……何故。なにが目的ですか?」


きっと返ってくる答えは平凡なものだろう。いつもそうだ。

正直、このテの勧誘はよくある。

まだ高校入って1ヶ月と経たないが、すでに軽音楽やら文芸部など、手の指では足りないくらい、こういう事があった。しかも全部女子。

今回も、そう変わらないだろう。

それに、と俺は言う。


「たしか柏木さん、俺と同じ一年でしょ。なんでそんな権限あるんですか、おかしくない?」


「……別に。それより、なぜ貴方を選んだか、知りたいかしら?…でもその前に」


愛想笑いを引っ込めた彼女は、急に強い眼光で視線を合わせてきた。


彼女がふ…と笑い、俺がその美しすぎる表情に思わず見とれてしまった、その時。


一瞬で間合いを詰めた彼女に…。


「…グ…ッハ…。……ゲホッ…………」


思いっきり、殴られた(グーで、顔を)。


「…貴方を選んだのは顔よ?ソレ以外なんの取り柄があるの?ま、いま傷つけちゃったから、もう要らないと思うけど」


「……………………」


何をされ、言われたのか分からず、自分でも驚くぐらい呆然と相手を見ていると、彼女は一瞬心配そうな表情を浮かべた。

そのまま急いで携帯を取り出し、彼女は電話をかけ、相手と話し始めた。

「えぇ、ごめんなさい志貴、あの人殴っちゃった。……うん、だって死ぬほどナルシストだし、人の事馬鹿にしてるし、むかつく…あ、別に大丈夫?よかった、って言うかもう志貴が会長なったらいいのに〜、あ、うんもう帰ります。…バイバイ」


幸せそうな顔で携帯を切ったと思うと、本当にさっさと帰っていってしまった。

俺のほうには、生ゴミでも見るような顔を向けただけ


……その時は彼女の背中をみているだけしか出来なかった。




でもすぐ、追いかけた。

びっくりするほど、遥か遠くにいた、彼女を。



「ね、俺かなり頑張ったと思わない?」


クスクス笑いながらのろけてくる翔太に、棗はため息をついた。


「なー…、何回聞かせんねん。久しぶりにウチ来たと思ったら。……そりゃ、お前の努力はありえへんやけどな。煙草も酒もやめたし」


翔太は不敵に笑った。


「そんなの小さい小さい。それより土下座して会長にさせてもらってからのが大変だったなー」


名前覚えてもらって嬉しくて、誉められると嬉しくて。

雷が嫌いっていう、以外な可愛さを見つけたり。山のようにつみあがった仕事は、雪姫が側に居るだけですぐ終わったし。

「翔?いい名前ね………って!やっと笑ってくれてさぁ、滅茶苦茶可愛いんだよねーうふふ」


不気味なほどの笑みでクスクスわらう親友に、棗は引いた。それはもうのけ反るほど。


うふふ…って…。

瑠璃花居なくてよかった。


「お前ー…。いや、いっそのこと感服するわ。ってかお前が一番恐い。何回きーてもそー思う。だってそんな…なぁ」


「うっせ。お前にはわかんねーよ」


「いや、わからんやろ。そな設定。…でもよかったわ。瑠璃花をこんな意味わからん男にやるやんて絶対いやや」


翔太は飲んでた烏龍茶を吹いた。

そのまま爆笑する。


「はぁ!?瑠璃花が俺の事好きなわけないだろ。美形のナルシだし、幼なじみだぞ」


…誰のお陰で美形のナルシが嫌いになったか本気でしらんねんなー。結果オーライやけど。

とりあえず、笑う。

昔はどうでも、瑠璃花は今、全くそういう感情を翔太に持っていない。見事なほどに。というか、もってたら兄として困る。


「そやなーってか、例えばやんか。志貴さんの気持ちになってみたかっただけやし」


「…あー…、雪姫、いま志貴さんと一緒に住んでんだよなー…」


急にテンション低くなった翔太を、棗は慌てて励ました。


「だっ、大丈夫やって!お前、今は誰よりもお前が雪姫さんの近くにいるやん…あっ!まさか自分もイギリス留学しよーとか間違っても思うなや!ハルヒちゃんどーすんねん。ってか俺らどうすんねん、わかっとるかー、自分。流されんなや」


翔太は苦笑いした。

昔と変わらず真剣に翔太とむきあってくれる棗は、やはり親友だった。


「あぁ。そんなことしたら雪姫に殺される。俺、ハルヒちゃんも心配だよ」


「…うーんそうか?雪姫さんの後やから、皆随分明るくなったし余裕も出てきたやん。ハルヒちゃんもいい娘やし。…あ、理桜めっちゃなついとったな、雪姫さんよりハルヒちゃんのほうが気に入ったみたいやった。玲生も」


翔太は頷いた。


「ま、実際雪姫は重しみたいなものだったからな。少しでも自分の意思で生徒会にいてくれるようにならないと。ただでさえ人手がギリギリなのに、理桜とかフラフラーってどっか行っちゃうし、玲生は仕事あるからあんまし生徒会こねーし」


はぁーとため息をつく翔太に、棗は以前から思っていた疑問を訊いてみることにした。


「なぁ、なんで楓、正式に生徒会いれへんの?雑用はさせてんのに。俺この前泣きつかれてんで。まぁ、そんな綺麗な顔しとるわけじゃないし、女子にもあんまモテとらん、総合的に中途半端…あ、それ理由?」


納得した顔で尋ねてくる棗に、志貴はにっこり笑った。


「うん。そうだよ」


「うわ嘘やん。えー、教えてくれへんの?ひっどいなー自分」


「うるさいな、今月仕事増やすよ」


「あ、はぁーい。もういいでーす」


翔太はすっくと立ち上がった。


「あれ、もう帰るん?」

「ああ。邪魔したな。雪姫に電話かけないといけないから帰る。また明日」


「おー、じゃな」



花戸です。

何だか、番外編っぽくなってしまいました…。


これからも、ちょっとずつ入れていけたらいいなーと思ってます(笑)


今後も作品をよろしくお願いします。

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