50話「魔王城攻略、それは転生者の知識の一番の使いどころ!」
次の日の早朝、僕は兄様と共に魔王城に向けて出立した。
今日はなるべくモンスターを避け、最短ルートで魔王の元へ向かう予定だ。
今の僕のレベルは37。
昨日あまりレベル上げが出来なかった。
魔王討伐推奨レベルの42には到達してない。
推奨レベルは、初心者でも余裕を持って倒せるように設定されたものだ。
だから、そのレベルに到達していなくても問題ない……はず。
僕としてはもう少しレベルを上げたかったけど、昨日僕が怪我して以来、兄様は僕をモンスターに近づけたがらない。
魔王に捕らわれているワルフリート兄様とティオ兄様も心配だし、今日魔王城に行くのがベストなのかもしれない。
◇◇◇◇◇
そして、僕らはついに魔王城に到達した。
魔物を避けて来たので一時間くらいでここまで辿り着いた。
ゲームで何度も訪れた魔王城。
城の上には常に暗雲が立ち込めている。
庭には悪趣味な像があちこちに配置され、壁にはグロテスクな彫刻が施されていた。
時々稲光に照らされたそれらは、ゲームで見た時の百倍ぐらい不気味だった。
僕はゲームを何度もプレイして、トラップの位置も宝箱の位置も全て把握している。
だから、トラップを避けて最短距離で魔王の元まで辿り着ける。
魔王を倒す作戦は、僕が兄様に補助魔法をかけて彼が剣で魔王を倒すというものだ。
僕に余裕があれば魔王にデバフをかけたり、魔法で攻撃して魔王の注意を逸らす。
兄様は絶対に魔王は自分が倒すと言っている。
世界の平和の為にも、亡くなったレーア様やラグ様の為にも、魔王をこのままにはしておけない。
でも……本当に、これでいいのかな?
他に道はないのかな……?
その時、僕の右手が少し温かくなった。
自分の手の甲を見ると数字の「1」みたいなものが見えた。
なんだろうこれ?
何か意味があるのかな?
「エアネスト、今から魔王城に入る。
気を引き締めろ」
「はい。兄様」
彼は僕の手を取り、城の入口と思われる大きな門に向かって歩いていく。
でも……あの扉って確か……。
「兄様、正面にある扉は中から鍵がかかっていています。
庭に隠し通路があります。
そこから一度、地下を通って城に入りましょう」
「それも夢で見たのか?」
「はい、まぁそんなところです」
「そなたは誠に神に愛されているのだな」
兄様はにこりと笑い、僕の言葉を疑う事なく信じてくれた。
彼は僕のことを信頼してくれている。
この信頼に応えたい。
「僕、この城のトラップと宝箱の位置と人食い箱の位置も全部把握してます。
だから僕の指示に従って下さい」
「わかった。
頼りにしている」
兄様に頼られるのはちょっと気分がいい。
普段は僕が彼に頼ってばかりだから。
僕は庭の奥にある石像を動かし、その下にある隠し通路から魔王の城に入った。
床ごと回転する部屋も、見えない橋も、行き止まりの先にある上の階に進むジャンプスイッチも、僕は全て知っている。
数々のプレーヤーにコントローラーを投げさせた、石像を少しずつ回転させ、全部の石像の向きを揃えるトラップの攻略法も頭の中に入っている。
それらを攻略しながら、通り道にあった宝箱のアイテムを回収していく。
「兄様、それは宝箱に扮した人食い箱なので触れないで下さいね」
「分かった」
魔王城には人食い箱やミミックが数多く配置されている。
人食い箱は、レアアイテムを高確率でドロップする。
こいつは「死」の魔法を使う。
「死」の魔法は光属性の魔力が強い者には効果がない。
だからゲームでソフィアとエアネストにパーティを組ませた時、人食い箱はレアアイテムの収集場所でしかなくなる。
だけどソフィアをエアネスト以外のキャラと組ませたときは、絶対に人食い箱を開けてはいけない。
「死」の魔法は、光属性でないヴォルフリックと、光属性でも魔力が弱いワルフリートとティオには、高確率で効いてしまうからだ。
この魔法にかかると名前の通り即死してしまう。
ここはゲームではなく現実の世界。
死者を蘇生させる世界樹の葉も、不死鳥の尾もない。
即死魔法を使うモンスターは絶対に避けなければならない。
ヴォルフリック兄様のいない世界なんて、僕には耐えられない。
僕が兄様を人食い箱から守るんだ!




