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40話「精霊の使いの白い馬と黒い馬が僕たちを導く」



 



その時、窓の外からいななきが聞こえた。


僕はバルコニーに出て外を眺めた。


兄様も僕に続いてバルコニーにやってきた。


庭に二頭の毛並みの良い馬がいるのが見えた。


一頭は雪のように純白で、一頭は黒曜石のように漆黒だった。


どこの馬だろう?


手綱や鞍をつけていないから、野生の馬かな?


それにしては……凄く神聖な感じがするような?


この神聖な波動はどこかで……?


そうだ!


精霊から白樺の枝をもらった時もこんなオーラを発していた。


ということは……。


「兄様、もしかしてあの馬は、M(エイワズ)のルーン文字から生まれた馬かもしれません」


泉になったラグ様から頂いたルーン文字M(エイワズ)


シュトラール様はそれは馬を意味すると言っていた。


あのとき彼は馬をシュタイン邸に送る……みたいな事を言っていた。


でも、僕がラグ様からM(エイワズ)のルーン文字をもらったのは二カ月も前だ。


「今頃になって、精霊が屋敷に馬をよこしたということか?」


「そうだと思います」


「なぜだ?」


「そう言えば以前、シュトラール様はシュタイン侯爵領で起きたことは、みな把握してると言っていました。

 陛下からワルフリート兄様とティオ様が魔王に捕らえられたという知らせが届いたこのタイミングで、彼が屋敷に馬を遣わせたってことは何か意味があると思います」


シュトラール様に会えば、きっと答えが出るはず。


「カール、あの二頭の馬はきっとシュトラール様が僕の為に遣わせた馬だ!

 手綱と鞍をあの馬に取り付けて!」


「はい、殿下。すぐに準備に取り掛かります」


カールは、そう返事をすると退室した。


シュトラール様が僕に何を伝えたいのか、それはわからない。


わからないなら、直接行って聞くしかない!


「待て、エアネスト!

 どこに行く気だ!?」


僕がジュストコールを羽織り部屋を出ようとすると、兄様に腕を掴まれた。


「精霊の森です!

 シュトラール様が僕に馬を遣わせたのには、何か理由があるはずです。

 彼に聞けば魔王を討伐し、ワルフリート兄様とティオ兄様を助ける手段がわかるかもしれません!」


「あんな奴らのことは放っておけ」


「嫌です!

 身内が魔王に捕らえられたのに、知らんぷりなんか出来ません!」


「そなたは本当に……一人で突っ走ろうとする」


兄様が深く息を吐いた。


「わかった……。

 そなたが行くなら、私も一緒に行く」


「でも……兄様は精霊の森には……」


彼はシュトラール様の結界に弾かれて、森に入れないはず。


「奴はわざわざ馬を二頭よこしている。

 そなたの他にも、精霊の森に来てほしい者がいるのだろう」


確かに兄様が言うことも一理ある。


シュトラール様は、兄様と僕、二人揃って精霊の森に来てほしいのかも。


「それでも森に入れなかったら、その時は強行突破するまでだ」


彼は精霊の森に魔法弾でも打ち込む気だろうか?


「兄様、一緒に来てくれるのは凄く嬉しいです。

 でも無茶はしないで下さいね」


彼なら、魔法弾を精霊の森に打ち込むくらいのことはしかねない。


「それはこちらのセリフだ。

 そなたは放っておくと無茶ばかりする」


兄様に頭をぐりぐりと撫でられてしまった。


「痛いですよ……兄様」


彼は僕の行動に腹を立てているようだ。


色々なことが起きて僕は少し視野が狭くなっていたかもしれない。


兄様の感情も考えず、突っ走って、彼に迷惑をかけるところだった。


「忘れるな。

 そなたがどこかに行くときは私も一緒だと」


兄様が僕のことをぎゅっと抱きしめた。


「はい、兄様。

 一人で突き進もうとして、ごめんなさい。

 それから一緒に着いてきて下さりありがとうございます」


僕も彼の背中に腕を回した。


兄様が僕の唇に口づけを落とし、僕はそれを素直に受け入れた。


彼とチュッチュしてる間に、カールが手綱と鞍の取り付けを終えて僕たちを呼びにきた。


カールに、兄様とイチャイチャしてる所を見られてちょっとだけ恥ずかしかった。




◇◇◇◇◇◇





僕と兄様は身支度を整え、玄関へと向かった。


カールが見送りに来てくれた。


「カール、僕たちが出発したら王都に『魔王退治の件、引き受けます』って手紙を出しておいて」


「そなたはまた、そのような軽はずみなことを……。

 現時点では、精霊がそなたを呼び出した要件はわからぬ。

 カール、国王への返信は我々が帰宅するまで待て」


「承知いたしました。

 ヴォルフリック殿下」


カールは兄様の言葉に頷いていた。


使用人にも僕の行動は軽はずみに見えたのかな?


そんな訳で、王都への返信は保留になった。



◇◇◇◇◇




僕たちは、シュトラール様が屋敷に遣わせたと思われる馬にそれぞれ跨り精霊の森へと向かった。


僕は白馬に跨り、兄様は漆黒の馬に乗った。


僕だって元王族の端くれとして、乗馬ぐらいたしなんでいるのだ。一人で馬ぐらい乗れる。


……兄様みたいには上手く扱えないけど。


彼は僕に合わせてゆっくりと進んでくれた。


いつだったか、馬をもらったら兄様と遠乗りしたいと思っていた。


その夢が叶って幸せだ。


でも出来れば次は兄様と二人乗りしたいな。


もしくは馬車での移動の方がいいな。


馬車での移動なら、キャビンで兄様とラブラブできるから……。


……って、腹違いとはいえ兄が二人も魔王城に囚われているのに……そんな状況で、好きな人とイチャイチャすることしか考えられないとか……駄目だろ僕!


それからシュトラール様にお会いするんだし、もっと緊張感をもたないと!




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