一緒にクエストを受けた話2
数日後。
俺は、冒険者ギルドにいた。
とくに他のパーティへ手伝いに入ってくれ、という要請もなかったので、適当に討伐依頼でも受けようかと考えいた。
依頼書が貼り付けられている掲示板を眺める。
その時だった。
バタバタと冒険者ギルドの建物へと、子供達が駆け込んできたのだ。
「た、たすけてください!!」
「おねがい!!むらのみんなをたすけて!!」
その場に居合わせた者たちが、一斉にそちらを見る。
十歳くらいの子供が二人、ぜぇはぁ、と肩で息をしながら訴えている。
男の子と女の子だ。
たすけて。
村をたすけて、と。
受付嬢が子供たちを適当な椅子に座らせ、落ち着かせつつ話を聞き出した。
そこに騒ぎを聞きつけて、この冒険者ギルドを任されているギルドマスターも現れる。
子供たちをほかの冒険者も取り囲む。
子供たちの話を要約すると、つまりはこういうことだった。
村が盗賊におそわれ、大人たちが殺された。
子供たちは幼なじみで、二人の父親も犠牲になったらしい。
それでも、ほかの大人が二人を逃がしてくれたのだとか。
そうして、村からは諸事情で離れた場所にある馬車の停留所まで行くことが出来、御者に事情を説明してここまで来れた、ということだった。
話を聞いた、腕に覚えのある冒険者達がいきり立って、盗賊退治に向かう。
アレだけ人がいるなら、俺は行かなくていいか。
実際、以前一緒に仕事をした者たちも混じっていた。
誰も彼も、相当の実力者である。
これだけ人が揃っているなら、すぐに片付くだろう。
彼らが盗賊退治に向かう背中を見おくると、俺は今日の仕事を再び探し始めた。
丁度よさそうなクエストを見つける。
受注手続きをして、俺は仕事にむかった。
――――――――
――――
――……
いやぁ、楽しかったー。
楽しくお金稼げるって、最っ高だなぁ!
クエスト場所が、Sランクオーバーのダンジョンだったから監視の人たちも、護衛の人達もさすがに来れなかったっぽいし。
いやぁ、気楽にお仕事できるっていいもんだなぁ。
さてさて、あとは報告して終わるだけだー。
と、冒険者ギルドに戻ってきたのだが。
ギルド内は、冒険者による死屍累々の光景が広がっていた。
全身に大火傷を負った者、手足を食いちぎられたらしい者、大怪我によって意識が朦朧としている者。
そんな者たちで溢れていた。
なんだなんだ、どしたどした?
こういう場面は、別に珍しくもない。
しかし、何が起きたのかは気になる。
スタンピードか??
いや、違うな。
怪我して手当受けてるの、アレだ、盗賊退治に行ったヤツらだ。
「なんかあったん?」
大体予想はつくが、確認は大事だ。
顔見知りを見つけて聞いてみる。
「盗賊に返り討ちにされたんだよ」
「マジかー」
「どうもハイランクの魔物使いらしい」
「へぇー」
魔物使い、ねぇ?
なるほど、だから手足の欠損の仕方が獣に食いちぎられてるみたいになってるのか。
「ハイランクってことは、ドラゴンもいるっぽいかね?」
「らしい」
ドラゴンかぁ。
そういえば最近遊んでなかったなぁ。
俺はいまギルドにいる冒険者たちを見回した。
隣近所の住民が全滅して、その葬式をあげなきゃいけないような表情をしている者ばかりだ。
なんなら、ヒソヒソとどうするか話し合ってるパーティもいる。
加えて、被害者たちの呻き声。
逃げてきた子供たちの不安と恐怖が入り交じった泣き顔。
「……受付さん」
頃合を見計らって、俺はいつも世話になっている受付嬢へ声をかけた。
彼女も顔を青ざめさせている。
そりゃ、そうか。
これが普通の反応なんだよなぁ。
でも、このままにしておくと被害増えるよな。
なんならチラチラと受付さんが、俺の事を見てくる。
ギルドマスターは、ここまで被害が出てるとなるとハイランク冒険者を集めてるってところか?
姿が見えないし。
待ってる時間も惜しいな。
「……受付さん、盗賊とそいつが居座ってる村のこと教えてくれる??」
あーあ、ニクスさんいたら一緒に行けたのになぁ。
あの人は俺なんかよりお人好しっぽいから、張り切っただろうに。
ま、一人でチャチャッと終わらせますか。
受付さんからわかっていることを聞き、さて出発だ、となった時だった。
「あ、いた!
アルト、こっちのお仕事おわったよー!!
一緒に、ご飯食べに行こう!」
場違いな明るすぎる声で、そんなお誘いが飛んできた。
さすがにギルド内が微妙な空気になる。
その微妙な空気を作り出した人物、ニクスさん当人は不思議そうに首を傾げるのだった。