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4:元・第二王子とわたくし

知らなくても良い前知識

【王位継承権】

前王の退位後、新王ではなく前王がしばらくの間「その次の王」の任命権を握る。

新王に任せてみて「こいつアカンわ」となったらそいつをアレして兄弟とかから別の候補を任命する。

「まぁええんとちゃう?」となったら新王に任命権を引き渡して完全に隠居する。

わたくしはヴェルヴェット。

お父様の失脚から数年……時がたつのは早いですわね。

落ち伸びてきた隠れ里も今ではすっかり見違えてますわ。


「いやまぁ見違えたというか、普通は数年でこんな地方都市みたいなありさまにはならないよね?」


あら、能力はあるのに覇気が足りず神輿の担ぎ手から逃げられた元第二王子様、ご機嫌麗しゅう。


「嫌われてるなぁ僕」


いえいえ?ベつに嫌ってはいませんわよ?

今日はどのようなご用向きで?


「一応政務だよ、この元隠れ里が正式にこの国の町として認知されたから」


手続き上不備は有りませんわよね?国への申告が漏れてしまっていたのはお父様の失脚による混乱からくる書類の紛失と人手不足からくるものですから。


「納められるはずだった税もやたら書式の整った会計報告書とともに追徴金に色までついて国庫に入ったからねぇ。

今後の税収も考えたら国としては何も言えない、町の発展よりもそっちの方が成果としては凄いかも」


いろいろと頑張ってやりくりしましたから。


「……キミのところ、他にも隠れ里持ってたりしないよね?」


答えがわかり切ってる質問をする意味がありまして?


「あぁうん、今確信が持てたので良いです」


そうですわね、そちらの方は順調でして?


「国政についてはお父様と兄上が協力して上手くやってるよ、ただ問題もあってねぇ…」


前王陛下が未だに王位継承者の任命権を握ってる件かしら?


「うんそれ、僕にとってはとても不味い」


あら?前王陛下が「次の王」の任命権を持っているのであれば、元第二王子陛下にとっては有利な事でなくて?

まだ王になる目がありましてよ?


「僕は王に向いてない」


それについてはしっかりと体感してますわ。


「…ごめんね?」


そこで謝るから向いてないのよね。

実務はお父様が担ぎたくなるほど有能にもかかわらず、覇気が足りませんわ覇気が。

まつりごとというものはどうやっても不平不満が湧き出るもの、王に必要な資質は「不平不満を少なくするお利巧さ」よりも「不平不満を黙らせるカリスマ」でしてよ。


「全くその通り、兄上にはそれが有って僕にはなかった。

兄上の細かいことを気にしない性格は本当に王に向いてる。

逆に僕はダメだね、たとえ小さな不満でも気になって拾い上げてしまう」


現場で働く分には良い気質だと思いますわ。


「ありがとう、だからさっさと父上には継承者の任命権も兄上に回して僕を継承候補から外してほしいんだけどねぇ」


それだけ貴方の能力が惜しまれてるということでしょう、ウチのお父様が思わずアツいのに張って大やけどしまうぐらいには有能なのだし。


「恩人の名誉のために弁解させてもらうと、たぶん君の御父上はそもそも僕に王位を継がせる気はなかったと思うよ、ボクがやる気ないの知ってたし」


どういうことですの?


「ボクにその気がなくても国が第一王子派と第二王子派に分かれて対立するトコまで事態がこじれてたのは事実だからね、あのまま行ってたらたぶん僕は死んでた」


あぁなるほど、貴方が第一王子派から「始末」される前に先んじて事件をおこしさっさと勝敗をハッキリさせたと。


「おかげで「戦わずして負けた」僕の首はつながった、君の御父上のとお家を犠牲にして……だから、ごめん」


それについてはもういいですわ。


「そこまでしてもらって拾った命だし、ほんともう王位とか要らないから一家臣として兄上の役に立ちたいんだけど、父上の説得が難航してねぇ」


そうですわね、優秀ゆえに惜しまれてるのであればいっそ大きめの不手際をやらかしてみるのはいかが?

一つ名案がありましてよ。


「不手際?いや、民や家臣に迷惑をかけるのは……」


大丈夫、この名案で不幸になるのは一人だけ、その一人分の不幸もあなたの努力次第でなくせますわ。


「どんな名案なんだい?」


突如真実の愛に目覚めたと公言して、無能だとお家を放逐された貴族としての身分すら失った小娘を娶るのですわ。

王妃に似つかわしくない身分の娘と勝手に婚姻を決めるバカ王子などかつぐ気も失せるでしょう。


「それ、君の事を知ってる人たちからは余計に危険視されるんじゃ……いや、違うな逆か」


そのとおり、やはり有能ですわね。

事情を知ってる人間にとっては「危険すぎて手を出したくない」状況にできますわ。

私個人だけならともかく、どうやっても後ろにあの妖怪お父様の影がちらつきますもの。

お父様の策略でケツをまくって逃げ出したあの腰抜けたちは絶対に係わりたくないでしょうね。


「やっぱり結構根に持ってないかな?

まぁ確かに、あの方が関わってくるとなると今度は国が乗っ取られかねないか。

だが、その本当に良いのかい?君の気持の問題もあるだろう?

正直、僕は君の好みにそぐわない気もするんだが」


わたくしの好みは有能な人間、逆に嫌いなのは能力を発揮する機会をふいにする腰抜けでしてよ。


「……わかった、必ず君を幸せにして見せる、この件で誰も不幸にはしない」


いえ?私の幸福は私が自分でなんとか出来ますわ。

「不幸になるかもしれない一人」はあなたのことでしてよ。


「え?」


だって好みに合わなければ合うように変えればいいだけでしょう?

わたくしならそれが出来ますもの、今まさにそうして見せたように。

あなたが頑張るべきは精一杯わたくしに惚れ込むこと、そうすればあなたも幸せになれますわ。


「なんというか、凄いな君は」


お返事は?


「……誰も不幸にならない、素晴らしい案だ」


さて、それでは案を実行に移すための作戦会議と行きましょうか。

まずはもう少し恋人に甘い言葉をかけられるよう練習ですわ。

人物

【ヴェルヴェット】

わたくし、元・コンラート家令嬢。

隠れ里を発展させ

【元・第二王子】

わたくしの配偶者予定。

有能だが覇気が足りない、まぁ無くても良い環境で活用すればよいのです。

【元・第一王子】

わたくしの国の現・王様。

能力は普通、カリスマと決断力高し。

全体的な方針をエイヤと決めたら細かいところは家臣に丸投げするタイプ。

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