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3:お兄様とわたくし

知らなくても良い前知識

【カラバ領】

王国の西にある海に面した領地。

海産物が豊富。

【カラバのカニ】

カラバガニ、デカくてうまい。

だいたい人間と同じぐらいのデカさ。

【猪】

害獣、農家の敵。

たまにモンスター化した奴も出る。

わたくしはヴェルヴェット。

名門貴族コンラート家から追放され隠れ里で過ごしそろそろ季節も一巡りするころ合い。

なんだか色々ありましたが、この隠れ里で強くしぶとく生きていますわ。

こちらは今朝仕留めた猪、畑の宿敵、害獣。


「お嬢それの解体はうちらでやっとくんでお客人の対応をお願いしやす」


客人?この隠れ里に?


「お嬢のアニキだって言ってやしたが」


あらやだ、ほんとにお兄様じゃない。

変装の為の行商人ルックが全くに合ってないわね、顔面が貴すぎるし(ノーブル)体格が良すぎるもの(マッスル)


「久しぶりだねヴェル、やっと顔を見れた」


あら?わたくしの肖像を入れたペンダントは無くしてしまったのかしら?

冗談はさておき、お兄様がここに顔を出せたということは旧コンラート領の扱いは大分落ち着いたということかしら?


「そうだね、とりあえずブラン家を代表して土地に馴染みのある僕が管理することになった。

隠れココの扱いも僕の管轄になったから、いろいろと融通が利かせられる」


そう、でしたらさらに開拓に力を入れてよさそうですわね。

そろそろいろいろと手狭になってきた頃合いだったから丁度いいわ。


「いや、もうすでに大分開拓されてるよねこれ?お父様から聞いてたのの倍ぐらいの規模になってるけど」


食い扶持が増えた分食料確保は必須でしたもの、ゴブリンの群れや山賊も出ましたし。


「あぁ出たんだゴブリン……えっ山賊!?」


あそこで猪の解体やってる連中がそうですわね、意外と優秀でしてよ。


「えーっと……うん、そっかぁ……ヴェルはすごいなぁ」


思考を放棄しましたわね。

あのぐらいの山賊お兄様なら一人で蹴散らせるでしょう、なにもすごくありませんわ。


「いや……山賊が出たとはさすがに聞いてなかったから驚いた、そんな危険な事になってたなんて。

ヴェル、領地の事も落ち着いたし今ならお前をブラン家で預かることも出来る。

少し窮屈な思いはさせるかもしれないが、ここよりは良い環境なはずだ」


遠慮しておきますわ、ブラン家のお世話になればきっとお義母さまとも顔を合わせることになるのでしょう?


「やはりそこが嫌かい?」


えぇ、だってきっとまた「貴女にお義母様などと呼ばれたくはありません」って言われてしまいますもの。


「母上にも色々と思うところがあるんだ、複雑な心境というか……できれば汲んでやってほしい」


ならお兄様が呼んであげればいいのでなくて?「ママ」と。


「いや、僕の歳でそれは社会的に死ぬ、成人男子だよ?」


わたくしももう立派な淑女でしてよ!?

お義母様の事を抜きにしても、今回の件はわたくしもいろいろ思う所がありますの。

それなりに優秀なつもりだったのだけど、何の役にも立たず蚊帳の外でしたもの。


「ヴェルは優秀だよ、だからこそ僕も父上も最悪の事態に備えて色々と託す事を決めたんだ。

今回はたまたま計画が上手くいったけど、もしかしたらもっと悪い状況になってたかもしれない」


そのあたりも心得てはいますわ。

でもせっかくいい機会を得たんですもの、わたくしはわたくしで自分に出来ることを全力でやりたいのですわ。


「それがここの開拓かい?確かに僕が見る限りでは順調だが……さすがに国に対してごまかすのも限界があるぞ?」


もう数年だけ隠しておいてもらえれば何とかして見せますわ、これわたくしが来る以前の「開拓初期からの運営記録」ですわ。


「……ずいぶんとまぁ、しっかりとでっち上げて。

筆跡変えるものうまくなったなぁ、何種類だコレ」


役割ごとに三種、今回のために新しく作った筆跡ですわ。


「あぁうん、なんかもう丸ごと任せて大丈夫そうだね。

わかった!国への報告についてはブラン家でなんとかする、あまり派手に動かないようにね」


えぇ、お兄様の迷惑にならないように頑張りますわ。


「ヴェルは本当に、父上にどんどん似てくるね」


淑女に向かってそれは失礼なのでは?

そういえば、そのお父様の方はどうなったのかしら?


「父上も元気でやってるみたいだよ。

昨日カラバ領からカニが届いた、魔法で氷漬けにした奴」


あら、本当におすそ分けが来たんですの……カラバから?ココまで?凍らせたカニが?

どんだけ距離があると思ってますの!?普通途中で溶けますわよ?


「開発中の新技術の試験だってさ、品質の劣化がどの程度かも確認したいから「味を知ってる身内にはできるだけ試食してもらえ」って手紙も着いてた」


島流し先でやりたい放題やってますわねあのインチキ親父。

つまり今の話の通りなら、そのお兄様の牽いてきた荷車の積み荷は。


「うんカニ、これ解凍に必要な魔法の手順ね、ヴェルなら大丈夫だよね?」


えぇ…問題ありませんわ、しかしこの箱のサイズ……もしかして丸ごと一匹ですの?


「技術的に解体しての凍結だと味が落ちるらしい、解凍してから分解して持ってくるよりもこのままの方が運びやすかったし」


普通はこのサイズの氷塊を牽いて荷車で森を抜けるのは大仕事でしてよ?


「ヴェルが喜ぶかと思って、お兄ちゃん頑張った」


……お兄様の頑張りを無駄にはできませんわね。

従者テオドア!全住民に通達なさい、今日はカニ祭りよ!

人物メモ

【ヴェルヴェット】

わたくし、元・コンラート家令嬢。

カニを食べるときはそう、ひとりで、静かに、豊かに。

【オックス・ブラン】

わたくしのお兄様。

今回は出番があった、妹に甘い兄。

カニを剝くのが下手。

【グログラン・コンラート】

わたくしのお父様。

お家から解き放たれて趣味に走った魔法研究をしてやりたい放題の様子。

カニを食べながらでもやかましい。

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