2:従者とわたくし
知らなくても良い前知識
【王国】
国の西側に海、北側に山がある。
【領地】
貴族が管理する土地。
適正のある貴族が管理しないとヤバイぐらい荒れる。
土地と管理者は相性があるので合わないと大変めんどくさい。
【貴族】
領地が荒れないように管理する「○○伯」と、領地の管理以外の仕事をする「○○卿」の二種類がいる。
「○○伯」のほうが格上。
【カニ】
海産物、たいへん美味。
【豆と芋】
育てやすく栄養もある、とりあえずこれ育てとけな作物。
わたくしはヴェルヴェット。
お父様から理不尽にも勘当の上追放という仕打ちを受けてから数か月。
落ち延びた隠れ里での野良仕事もすっかり板についてきましてよ。
しかし隠れ里の開拓は順調ですが、やはり外部の情報収集に難がありますわね。
結局お父様がどうなったのか未だに詳細不明ですし。
「先週入った情報だと、旦那様一応生き延びたっぽいですよお嬢様」
その情報がなんで私のところに先週の内に来てないのかしら、従者?
「一応精査中だったんで。今朝裏取りが済んだんでお嬢様にもろもろご報告出きるようになりました」
結局どういう話になったのかしら?
「とりあえず旦那様は領地と財産を国が没収、所領がなくなったので格下げされて他所の領地で強制労働です」
本当にクビがつながってるあたり妖怪じみてますわねお父様。
「まぁ色々根回ししてたのと…いくつか影響力のデカい家に借金やらあったんで「その返済があるのに今処刑されたら困る」ってスジで助命嘆願が」
お家取り潰しで当事者も処刑となったら取立先不在で借金チャラか、国が没収したした資産から補填する事になるものね。
どうせお父様の事だから没収できる資産なんて大して残してないのでしょう?
「ですねー物理的な資産の大半は処分済み、残ってたのは領地ぐらいで主な借金先はカラバ伯とゴードア伯です」
どっちも国土の海側の端っこと山側の端っこじゃないの、ウチの領地を飛び地で渡されても良い迷惑ね。
「なんでまぁ借金もろもろカラバ伯に一本化して旦那様の身柄をカラバ伯が引き取ることで話が着いたみたいですよ」
カラバ領のカニ、美味しいのよねぇ。
お父様がーんば、おすそわけ楽しみにしてますわよ。
「さすがに漁船には乗らないと思いますがね」
それで、どういう名目でウチの家は取り潰しに?
「表向きは第二王子を推す旦那様が方々に金ばらまいて裏工作してたのがバレて糾弾されたところに、王国より授与された宝剣の紛失が発覚したことによる責任問題のダブルパンチですね」
その宝剣、今ここにありますわね。
裏の理由は?
「第二王子派の中で旦那様が独断で「過激な手段」を取ろうとしたので「良識ある第二王子派」の告発により未然に摘発された形ですね」
なるほど。
第二王子派の連中は第二王子が不利と見るや、泥をまとめてお父様に引っ掛けてケツまくったわけね?
「ですね、まぁそのおかげで多方面に貸し作れたから旦那様の首もつながったわけで」
没収された領地の管理はどこか引き継ぐのかしら?
「近場だった第一王子派のブラン家ですね」
はい?それお兄様のお母様のご実家ですわよね?
「とりあえず元領地近辺の管理役として若旦那が派遣されるようで」
実質跡継ぎに引き継いだたけになってませんこと?それ。
「いやー、エグいですね、どういう根回ししたらこんなインチキがまかり通るのか」
ねぇ従者、お父様ってもしかしたら本当に妖怪の類いでなくて?
「その旦那様と血ぃつながってますからね?お嬢」
本当にわたくしが何かする余地なく全部お父様の計画通りなの、なんか腹立ちますわね。
「まぁまぁ、のんびり芋でも育てながら事態が落ち着くの待ちましょう」
そこの畑は豆を植える予定だが?
無言で遊戯札のシャッフルを始める従者、良いでしょう受けてたちます。
登場人物メモ
【ヴェルヴェット】
わたくし、元・コンラート家令嬢。
勘当され追放されたため隠れ里にて絶賛開墾中。
豆派。
【テオドア】
わたくしの従者、わたくしが生まれたときから使えている。
天恵持ち。
芋派。
【グログラン・コンラート】
わたくしのお父様、コンラート卿。
なんとか生き延びたらしい。
【オックス・ブラン】
わたくしのお兄様。
今回も出番はなかった。
ブラン家に無事引き取られたらしい。