1:お父様とわたくし
知らなくても良い前知識
【王国】
王が当地してる国、貴族もいる。
ここ最近のトレンドは王位継承権レース。
【天恵】
なんかすごい能力的なヤツ、無くても生きていけるがあると嬉しい。
魔法は魔法で別にある。
【ゴブリン】
居る、一匹みたら三十匹。
【ドラゴン】
居る、とても強い。
わたくしはヴェルヴェット・コンラート。
王国が誇る大名門貴族コンラート家の第二子にして長女。
今日も家名に恥じぬ働きをせんと野望を胸に、当主たるお父様へ朝のご挨拶をするために執務室へ顔を出したところですの。
「我が娘ヴェルヴェットよ!優秀な兄と比べて貴様の持つ天恵はあまりにも劣悪!!この名門コンラート家の面汚しめ!故に貴様は勘当だ!今すぐこの家を出ていけ!追放である!」
ドアを開けて二秒で野望が砕かれましたわ。
その辺のゴブリンの襲撃計画でももう少し長持ちしましてよ?
というか、追放?なぜ?
兄上よりわたくしが劣っている自覚はありますが、あんなドラゴンから角と羽根と鱗取っ払って顔面を良くした上で他据え置き見たいな生き物と比べる方がおかしくありません?
「口答えは許さん。せめてもの施しとして当面の生活費となんか倉庫に眠ってたこの古臭~い剣と、周辺地域の地図ぐらいはくれてやるからさっさと出ていくが良い」
えーと、この剣ってウチの初代様が当時の国王陛下から頂いた家宝の剣では?
「知らぬ!ガラクタであろう!」
いやいや、お父様以前。
「この剣今売ったら一国が買えるぐらいの金額になるんやぞ、売らんけどな?ガハハ!」
って言ってましたよね?
「ガハハは言って無いと思うなぁパパン……いや知らんけど?」
パパンはキモいので二度と使わないでくださいお父様。
こっちの地図も先月国へ出した報告書に記載されてないモロ隠れ里っぽいところにバカみたいな花丸マーク付いてますが?
「子供の落書きじゃない?」
領内の重要拠点もバッチリ記載された地図に落書きするそのガキから追放しません?
お父様?ここ最近王宮の方で王位継承争いで第一王子派と第二王子派がものすごく対立してるとのうわさがありましたよね?
「あるね」
コンラート家は第二王子派でしたよね?
「そうだね」
最近、第一王子派がかなり優勢になってきたという話が。
「いやいや?第二王子まだ行けるまだ行ける、担ぐ奴ミスったなーとか思ってないヨ?」
おう、娘の目ぇ見て話さんかいこのインチキ親父……はい、はい、なるほど。
「自分の置かれている状況を理解したか娘よ」
まぁ、はい。
それで?勘当されて追放でしたっけ私。
「うむ、お前は天恵もカッスい上に貧魔力の無能なのでさっさと家を出ていけ、従者たちにも旅支度の準備をさせてるから」
なんだか必要以上にボロカス言われてる気がしますが、これ一発殴っておいても良いヤツかしら?
まぁ家を出なくては行けないのはわかりました、ただそうなると兄上はどうなるのですか?
「あいつはお前と違って母親が第一王子派の家だし、まだ生きてるからギリ大丈夫。最悪あっちの家の子になるから」
お義母様のご実家のブラン家はコンラート家に匹敵する大名門ですものね。
商家の娘だった亡きお母様と違って確かに後ろ楯としては申し分ありませんね。
ならお父様はどうするおつもりで?
「ワシはまぁ無理かなー?さすがにいろいろ通さないと行けないスジがあるからねぇー。
まぁ今まで方々に作った貸しと、未返済の借りを駆使すれば首はくっついたまま失脚できるよう段取りしてるから!成功率6割ぐらいで」
太いんだか細いんだかわからない命綱つかんでますわね。
まぁ無策というわけじゃないのはわかりました。
「うん、というわけで、悪いけど勘当されて、追放されて、上手い事やって、生き延びてねがーんば」
軽いなぁこのお家。
「ダテにこの家風で何代も続いてないからねぇウチ。
まぁ諸々が落ち着いたらお兄ちゃんとも会えるだろうからサ!それまでは通信規制とか徹底してね?手紙とかダメよ?」
あぁもう、わかりました!それではおさらばです父上!
こうしてわたくしは父上への別れの挨拶を済ませ、振るった拳の赤みが引く暇もなく既にバッチリ旅支度を済ませた執事と共に旅立ったのでした。
登場人物メモ
【ヴェルヴェット・コンラート】
わたくし、天恵がカッスい上に貧魔力、それを補ってあまりある顔と頭の良さを持つ。
なんか追放された。
弱点は秘匿。
【グログラン・フォン・コンラート】
わたくしのお父様、コンラート伯。
インチキ親父、王国に巣食う妖怪。
なんか追放してきた。
弱点は顎、積極的に狙うべし。
【オックス・コンラート】
わたくしのお兄様、出番は無かった。
たぶん人間の形をしたドラゴンか何か、顔は良い。
弱点は妹、活用すべし。
【執事たち】
わたくし……のお父様の家臣たち。
明らかにわたくしよりもずっと先に話を聞いて準備してた。
弱点は給与。