第3話 魔族の仲間との再開
数日が経ち王立魔法学園で学ぶ事の無意味さを知り授業を受けるふりをしながら学園内を探索し噂話を耳にする。
「なあ知ってるか?」
「何を?」
「最近だけど教会の信者が妙に増えてることだよ。」
「そうなのか?」
「家の母さんも、ついこの前まで神なんて信じて無かったんだが何時の間にか心酔する様になってな。」
「何だよそれ、怪しくね?」
(教会の信者が増えているのか、我も転生前に魔族を集め人間側の動きを調べさせ転生後に詳細を聴くつもりであったが盲亀浮木であるからな、どうしたものか……)
顎に手を当て魔族の仲間にどう連絡を取り合うか考えていると廊下の先から誰かが真っ直ぐに走って来るといきなり抱き着かれる。
「むっ?」
「みーつけた! 会いたかったよー!!」
よく見ると元々人間から吸血鬼となり魔族へと成り変わった金髪でツインテールの紅い眼をした幼女マホメットであった。
「マホメット!?」
(この国は魔族が入って来れない様に結界が張られていた筈だが……いやマホメットは元々人間か、普通魔族は体内の魔力を無くす事は出来ないが吸血鬼なら別と言う訳か。)
「魔王様、ずっと会いたかったんだよ♡」
「そうか、此処では人目が付く移動するぞ。」
「はーい。」
取り敢えず人気の無い校舎裏へと移動しマホメットから情報を提供してもらう。
「で、何故あのような場で我を魔王と判断した?」
「魔王様の気配を感じて居ても立っても居られなかったの♡」
「もし違っていたら危ない所であったのだぞ、それに我の事はマオと呼べ!」
「はいマオ様♡」
「後で良いから皆にも、そう呼ぶ様に命じておったと話を通しておくのだ。」
「はーい♡」
「あーそれと我の代わりを務められる者を用意しといてくれるか?」
「勿論ですとも!」
マホメットに命令を下し、その場を後にすると先程の気掛かりな情報を話していた二人を見つけ話を聴く事にした。
「そこの二人、少し話がしたい。」
「ん、ああスカウトされたクラスの子か。」
「別に面白い話なんて無いぜ?」
「盗み聞きする気は無かったのだがな、親が宗教に嵌まったとかなんとか。」
「その話か、最近の事なんだけど母さんが仕事帰りに何時も通ってた道が通行止めになってたみたいでな、別の人気の無い道を近道だから進んだ時に暗がりから魔物が現れたんだってよ。」
「魔物? この国は結界で覆われてる筈だが? その魔物は人型だったりするか?」
「いやそれがさ、魔物はトカゲみたいな姿の“リザードマン”だったって言ってたな。」
「リザードマン……」
「そんで襲われてるところを運良く通り掛かった教会の信者の方に助けてもらってから毎日教会へ足を運ぶ様になったな。」
「そうか、あまり面白い話ではないな。」
一通り情報を集め終えると物陰から何者かが手招きするのが見えた。
(流石はマホメットだ、仕事が早いな。 この学園で学べる事は十分学んだ……後は情報集めくらいしかすることがないからな。)
周囲に目をやり誰も見ていない事を確認すると草叢に隠れている者に出て来る様に合図する。
「今なら誰も見ておらん、出て来るが良い。」
「はっ! 魔王様!!」
草叢から出て来た者は自分に瓜二つの姿をしており、完璧に相手の思考や動作を読み取り本人に近い行動をとれる“ドッペルゲンガー”であった。
「成程、ドッペルゲンガーも元々は人間から成り変わった魔族だからな魔力を持たずに潜入が可能と言う訳か。」
「魔族様、後はこの私にお任せください。 学園に戻られる頃には学園中の者達が魔王様に心酔している事を約束しましょう!」
「ああ、頼んだぞ。」
(別にそこまでしなくとも良いが任せよう。)
生徒や教師の目を掻い潜り街中を移動すると人気の少ない路地裏にマホメットが待っており小さな物置小屋へと案内される。
「マオ様、こっちこっち!」
「この様な場所から何処へ向かうと言うのだ?」
「この地下扉を降りれば皆待ってるよマオ様♡」
地下扉を開き地下への階段を下って行くと何名か顔の知れた魔族が集まっていた。
「魔王様、我らは姿が変われど貴方様に忠誠を誓ったことを忘れてはいません!」
「今一度、魔王様の下で仕わせてくださいませ!」
「皆、魔王様が亡くなられて転生後であっても忠誠を誓うと約束した者達で御座います。」
「そうか、我は自由に生きよと命じた筈だが?」
「「「ですので自由に生きています!!」」」
「はは、今は姿の見えない奴らも同じ考えという奴か?」
地下空間に居たのはピンク色の髪にウェーブのかかった、ムチムチとした露出度の高い服装の“サキュバス”のリリス、茶色い髪の毛が肩までかかるくらい伸びた“フェンリル”のルリー、頭上に巨大な紅い花を咲かせ緑色の髪が腰まで伸びた“アルラウネ”のアラネの人型の三人が片膝を付き頭を垂れる。
「それが、魔王様亡き後に次なる魔王として成り変わろうとする愚行に携わる者が何名か。」
「やはりか、だが我と志同じくするなら別に構わぬが余計な事をしておる者も居るのだろう?」
「はい、魔王様の考えに逆らう不届き者が何名か。」
「分かった、だが今は身体を休めよ。 明日から行動を始めるとしようか。」
「「「はっ!」」」
「ところで魔王様、その……ご褒美欲しいなぁ……なんて。」
マホメットがそう言うと他の三人も顔を赤らめ接近して来ると周囲が良い香りに包まれる。
「これで良いか?」
「はわ〜♡」
「んゆ〜♡」
「あはっ♡」
「はっはっはっ♡」
四人の頭を撫でると凄く嬉しそうにしながらその場に倒れていく。
「さて、褒美はこれくらいで良いか? 我はもう寝るとしよう、む? 敷布と布団が一つしかないな、皆で使うとしようか。」
「「「「ままま、魔王様と一緒の布団で添い寝!!」」」」
「どうした? 我と寝るのは嫌か?」
「滅相もありません!」
四人で一つの布団に入り一夜を明かす事になった。