プロローグ
魔王城にて勇者パーティーとの熾烈な戦いが繰り広げられていた。
「これでどう! “アトミックファイヤ”!!」
白いローブを身に纏った金髪青眼の女性が魔王に手を翳し火属性魔法を唱えると巨大な火の玉が魔法陣から出現し真っ直ぐに飛んで行く。
「魔法と言うのは、こうやって扱うのだ……“ファイアボール”!」
「なっ!?」
巨大な火の玉に対して魔王は下級魔法“ファイアボール”で対抗し威力の違いを然らしめる。
「きゃあ!!」
ファイアボールはアトミックファイアを取り込み更に威力を増すと魔法を唱えた女性の近くで爆発し女性は爆風で吹き飛ぶ。
「セレニア!!」
「くっ、なんて威力なの……まるで歯が立たないわ!」
吹き飛んだ女性セレニアを金髪緑眼の勇者が支える。
「あまり無理するな、今回で呪われた運命を終わりにするんだからな。」
「どうした、もう終わりか?」
「何油断してんだ? 俺様が居る事をわすれてんじゃねーぞ!!」
バチバチと迸る電気を拳に纏わせ魔王へと殴りかかる筋骨隆々の蒼い短髪をし紅い眼をした男性が力任せに殴打しようとするが魔王も拳を振り抜き力の差を弁えさせる。
「油断? 違うな、これは余裕と言うのだ!!」
「うぐっ、ぐっ……ぐあああああ!!」
「ラガルト!!」
拳と拳が打つかり合いラガルトと呼ばれた男性は全力を出しているにもかかわらず魔王は軽く指で弾くと男性は城の壁へと打つかり瓦礫に埋まる。
「つまらんな、半端な力は己の身を滅ぼすぞ? 聞こえてはおらぬか……。」
「アルト様?」
「後は俺がやる。」
「フッ、所詮仲間なんて者は居ても邪魔にしかならんかったな? そこの女に先の筋肉バカを片付けさせろ、貴様との戦いの邪魔になりそうなのでな。」
「セレニア、魔王の言う通りだラガルトを安全な場所まで避難させてくれ。」
「え?」
「なに、必ず生きて帰る。」
「ええ、アルト様どうか死なないで。」
セレニアはラガルトを瓦礫から掘り起こすと担いで魔王城から離れて行く。
「魔王、お前はさっき仲間が必要無いと言ったな?」
「現に何の役にも立ってなかったではないか。」
「それは違うぞ、仲間が居たからこそ俺はここまでこれた……弱さを補い合うことで強くなれるんだ!」
「補え合えてたか? まあ良い、剣を抜け勇者よ……我が力その身で味わうが良い!!」
勇者アルトは聖剣エクスカリバーを抜き、魔王は魔剣グラムを抜くと互いに構える。
魔王城の外では、セレニアがラガルトを馬車まで連れて行くと紅い長髪で黄色い眼の小柄な女性が待っていた。
「やっぱり、アルトと魔王の一対一の戦いになったんだね……」
「ええ、ラガルトも一撃でやられて……」
「セレニアは大丈夫なの?」
「私は大丈夫よ、ニーアの方は魔物に襲われなかった?」
「見ての通りよ、何処にも魔物一匹見当たらないわ……何故かね。」
(おかしい、教会で聴いてた話と乖離してる?)
「それより、馬車を出すわよ! アルトから避難する様に言われているのでしょう?」
「お願い。」
魔王城内部では魔王と勇者アルトの激しい鍔迫り合いで火花が散っていた。
「やはり良いな、命のやり取りと言うのは! なあ勇者よ何故我を倒さんとする?」
「何故だと? お前が世界を脅かすからだ!」
ガキンと魔王の剣を弾くと互いに剣をぶつけ合い、床に罅が入る。
「俺の住んでいた村もお前ら魔物に襲われ火の海と化した!! もうこれ以上、好きにはさせないぞ!!」
「何っ!?」
勇者アルトの剣が光り輝くと魔剣グラムを魔王の手から弾き飛ばし渾身の突きが魔王の心臓を穿つ。
「かはっ……見事だ……勇者アルトよ……これで……望んだ……平和……が……ガフっ……」
(遠ざかるな……)
「はぁ……はぁ……はぁ……勝った?」
勇者アルトが魔王に勝利し魔王城が崩れ始め、魔王は瓦礫に埋もれながらに思考を巡らせていた。
(魔王となり勇者に討たれるか……次の転生先は勇者の息子だな、失敗は赦されない……我は人間も魔族も救わねばならぬ、その為なら手段は選べぬ……)
そこで意識は途絶え、暗闇が続くと赤子の産声が耳に入る。
(なんだ? 人の子が泣いておるのか?)
暫くして自身の声である事を理解し、周囲を見渡すとセレニアと呼ばれた女性に抱き抱えられ近くには涙を流しながら喜ぶ勇者アルトの姿があった。
「アルト様、男の子です。」
「ああ、有難うセレニア! 俺の子を産んでくれて!」
(複雑な気分だが、仕方あるまい二度目の転生は勇者の息子でなければ解決出来ぬ問題が山積みとなっておるからな。)
「アルト様、名前はどうしましょう。」
「そうだな、“マオ”なんてどうだ?」
「ふふ、良いですね♪」
アルトとセレニアの間に産まれマオと名付けられスクスクと育ち五歳になった。
そして、木剣を手にし素振りを縦横斜めに毎日二十回行い突きを倍の四十回繰り出し鍛錬をし続けた。
「ふんっ! はっ! やっ! ……。」
(やはり人間の子供の身体では、あまり力が入らんな何かしら強化の術を探るか。)
「マオ、魔法学園からスカウトの話が来てるわよ!」
「母さん?」
(魔法学園からのスカウト?)
「ほらこれ、マオ宛よ。」
手紙を受け取り内容に目を通すと王立魔法学園の中でも最も優秀とされる者達だけがスカウトされ集められる学科への入学への推薦状だった。
「確かに名は我だな。」
「どうするの? 入学するかしないかは任意みたいよ?」
「剣術だけでは物足りん、入学しようか。」
「そう言うと思ったわ、入学手続きしてくるわね。」
(ふむ、この学園のマーク……教会が絡んでいると見て間違いないか。 下手に行動を起こすと目立つだろうから暫くは様子見だな。)
世界最高峰と呼ばれる王立魔法学園の手続きをセレニアが終えると翌日には学園への入学が決まり直ぐに学園へと着いた。
「ここが王立魔法学園か、紙に書かれている場所は此処だな。」
ガラッと扉を開くと数名同い年の子供が何人かの姿が目に入る。
(スカウトされた者と言えど、こんなものか……まあ子供なら仕方ない事ではあるがな。)