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捕食者Xに献身

「ま、麻栗? あの、えっと、目、目が、怖い、怖いです」

「あれ? ふふ、大丈夫だよぉ聖くん。怖くない、わたし怖くないよ?」

「いやあの怖いよ!? 完全に獲物を食らおうとしている類の目をしていらっしゃるんだが!?」

「獲物じゃないよぉ。食べようとしているのは彼氏……つまり聖くん、だよ?」

「食するという行動自体は何も変わらないんだが!?」


 そんな言葉を交わし合っている間にも、じりじりと麻栗は迫ってくる。

 そのまなざしは、なんだろう……これまで見てきた麻栗のどんな表情にもまるで似ていない。


 とろんとした目つきはその瞳の奥に飢えた獣の獰猛さを隠し持っているようだし、にっこりと上げられた口角はまるで『これからお前を食ってやるぞ』と牙を見せつけて相手(つまり俺のことだが)を脅しつけているかのようでもある。


 なにより彼女の発する声が、そして仕草の一つ一つが、艶めかしいを超えてもはやエロい。エロすぎる。彼女から放たれる淫靡なオーラが、俺の目を捉えて離さなかった。


 そこには普段の清純っぷりが欠片もない。完全にログアウトしていらっしゃった。


「えっとね、これは聖くんも悪いんだよ? わたしはちゃんと、せめて最初は段階を踏んで進めようと思ってたのに。そうしないと聖くんをびっくりさせちゃうかなって、一応は分かってたはずなのに」

「お、おう。なら今からでもそうしよう? 段階を踏みなおそう? 階段飛ばしは危ない危険」

「えいっ」

「おわっ!?」


 これはなんかヤバい気がして落ち着かせようと試みた俺だったが、麻栗はそんな俺の胸を可愛い掛け声と共にトンっと押す。

 普段なら、この程度の力に押し倒される俺ではないのだが、この時は不思議と抵抗することもできず、あっさりと後ろに尻もちをついてしまった。


 そして、尻もちをついた先は麻栗のベッドの上で……これ以上後ろに逃れることもできない。しかも前方には、清純派で通っている、付き合い始めたばかりの愛しい彼女が迫ってきているのであった。


「ね、聖くん。今ならね……辛うじて理性が残っている今ならね、聖くんに一つだけ選択させてあげる。――おとなしくその身をわたしに差し出して? そしたら優しくシてあげる」

「ま、麻栗! その辛うじて残った理性を総動員して考え直せ! 勢いと本能だけで行動すると後から絶対に後悔するぞ!?」

「ん~……」


 人差し指を唇に当て、麻栗は一瞬考え込んだ。


 それから、熱に浮かされたような表情のまま、ひときわにっこり、やべぇクスリでもキメてそうな笑顔を浮かべ、


「それってつまりぃ……優しくする必要も遠慮する必要もないってコト?」

「ち、違――」


 違う、と言いかけて息を飲みこむ。

 なぜなら麻栗が、俺の目の前でおもむろに服を脱ぎ始めたから。


「この日のためにたぁっくさん勉強したんだぁ……勉強の成果、たくさん体で味わってね、聖くぅん♡」

「勉強ってなに!? なんの勉強!? ってかちょ、待、ちょ――アッー!」


 服を脱ぎながらそんな言葉を告げた彼女は、全裸になったところでついに俺へと襲い掛かるのであった。

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