尻穴に彼女の指突っ込まれて虚無顔になったことのあるやついる?
「聖くん聖くんっ! この後、一緒に行ってほしいところがあるんだけどいいかな?」
放課後になると、まるで飼い主へと駆け寄る犬みたいな勢いで、麻栗が俺の席までやってきた。
荷物を整理する手を止めて、俺は麻栗へと視線を向ける。
「ああいいぞ。どこに行きたいんだ?」
麻栗はにっこりとイイ笑顔を浮かべ、答えた。
「スポーツジム!」
***
それから数十分後。
俺は麻栗と共に、駅前にあるスポーツジムを訪れていた。
会員登録の必要なタイプの、本格的なジムである。
「スポーツジム」という麻栗の口振りから、俺はてっきりスポッチャのような運動施設を想像していたが……こんな場所へと連れてこられるのは少々予想外であった。
そんな風に意外に思う気持ちもあり、ジムの前までやってきたところで俺は麻栗に話しかけた。
「お、おい……いきなりこんなところに連れてこられても、会員登録してないんだから俺たちだと利用できないんじゃないのか?」
ジムの近くに建っている看板には、「通常コース1ヵ月八千円から!」とかって書かれたりとかしているが、社会人ならばともかく学生の俺たちにとってはそれだってなかなかの大金だ。
当然、その持ち合わせがあるわけでもなく、不安に思って麻栗に確認してみれば、彼女は「あ、そうそう!」と言ってバッグから財布を取り出した。
「はい、これ! 聖くんの分っ」
そんな言葉と共に、彼女が俺に一枚のカードを差し出してくる。
カード自体にプラチナ加工でもされているのか、受け取った時の手触りは硬質だ。そして表面には、『ジムMUSCLE VIP会員登録証』の文字と共に、俺の名前が印字されていた。
「……なにこれ」
「聖くんのジムの登録証だよ! ちなみにわたしのはこれね」
そう言って麻栗がもう一枚、彼女の分のカードを取り出し掲げてみせた。
紛れもなく、俺が渡されたものとまったく同じデザインのカードであった。
「……い、いや! いやいやいやいや! なんで!?」
こんなものを発行した覚えなどない。なによりそのための金もない。
思わず動揺の声を上げる俺に、麻栗は朗らかな口調のまま言ってきた。
「実は聖くんと一緒にジム通いしたいなって思ったから、勝手にカード作っちゃった。VIP会員だから一週間ぐらい時間かかっちゃったけど。テヘッ☆」
「テヘッ☆ じゃねえええええええ!」
思わず声を上げる俺。
「こんなところ、通うだけで金がかかるだろ!? さすがに俺の財布にはそんな余裕とかねえぞ!? しかもVIP会員とか!」
どれだけの値段でその待遇を得られるのか予想もつかず、思わず青くなる俺。
そんな俺を安心させるかのように、麻栗は「大丈夫だよっ」と言ってくる。
「思ってたより安かったよ? 年会費でだいたい……一人50万円ぐらい? 24時間365日利用ができて、個室やシャワーも使い放題って考えたら、すっごいお得だよね?」
「高っけぇわ! ってかその金が俺にはないんだって!」
「だいじょぶだいじょぶ。わたしが聖くんの分まで全部払うから」
あっさりとそう言い切る麻栗。
「わたし、お金だけは稼いでるからね! それにどうせわたしたち結婚するでしょ? だからわたしのお金も聖くんのものだと思ってくれて大丈夫!」
「そう思えるほど図太い神経してないが!?」
「聖くんの全ては聖くんのもの、わたしの全ては聖くんのもの……でしょ?」
「そんなジャイアニズムを掲げたこともない!」
「もぉ~、運動嫌いだからってこんなところで怖気づくのは男らしくないよ? わたしと一緒にぃ……汗、流そ?」
「ビビってるのは別の理由だ!」
「っていうかこんなところでいつまでも話してたら他の人の迷惑だし、入るならさっさと入っちゃおうよ」
「急に常識的なこと言うのやめてくれます!?」
そんな俺の抗議も虚しく、俺は麻栗に腕を引っ張られてスポーツジムの中へと連れ込まれる。
そして受付にVIP会員証を出すと、事務の人に「こちらへどうぞ」とVIP用の個室へと通された。
そして……。
***
「………………………………………………」
VIP会員の個室。
そこには、下半身を丸出しにし、ケツの穴に麻栗の指を突っ込まれている状態で、虚無顔になっている俺の姿があるのであった。
……いやほんと、マジでどうしてこうなった!?
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