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異世界デスゲーム  作者:
幼少期
12/14

その時

 ついに俺は7歳になった。

 結局いつまで経ってもルイスは帰っては来なかった。

 そして魔法を封じられる時が来た。

 

 「迎えだ!」 

  

 朝早くに俺を軍人が家の前まで呼びに来た。

 途端に汗が出てきた。

 

 「早く行きなさい」


 「行ってくるよ」

 

 マリーに言われて扉を開けた先では古びた馬車が止まっていた。


 「おまえはリル・ラウスだな?」


 「はい、そうです」


 「では、馬車に乗れ」


 軍人が高圧的な態度で言った。

 軍人は一般人とは違い魔法が扱えることができるためか自分が特別な存在だと錯覚しているそのためか上から目線なやつらが多いから嫌いだ。

 軍人の役目は都市の治安維持と政治をするだけだ。

 

 軍人に言われて馬車の中に入ると、このあたりの子供が乗っている。

 もちろんクレアもいた。

 

 「あ、ラウスではないか!」

 

 クレアが話しかけてきた。


 「君も乗るんだな?」

  

 「当たり前だ」


 「これからなにをするんだ?」

 

 「そんなことも知らなかったのか」


 クレアにこれからどうなるかを親切に教えてやった、魔法が封じられることを。


 「それじゃあ、これから魔法が使えなくなるのか!?」

 

 「あまり大きな声を出すな」

 

 魔法の存在は、一部のやつしか知らない。 魔法のことが他のやつに知られてしまうと色々と面倒なことになってしまう。

 クレアは、何故か魔法を使えてしまったようだが。

 

 「酷いじゃないか、もう魔法が使えなくなるなんて」


 「ところで、なんで君は知っているんだ?」

 

 そうだ、この魔法が封じられることも一部のやつしか知らなかったのだった。誤魔化そう。


 「軍人さんが言っているのをたまたま聞いてしまったんだよ」


 「そうなのか」


 信じやすいやつで助かった。

 


 「着いたぞ!」


 「降りろ」


 クレアと他愛もない会話をしていると、どうやら目的地についたようだ。

 

 馬車から出るとそこは、俺が住んでいる都市ノースの管理をしている貴族の城だった。

 いつ見ても大きい。


 「ここは」


 クレアが驚いていたのか声が漏れていたと思えばそのすぐあとにニヤリと笑っていた。

 こいつ何か知っているのか?

 いや、ただたんに貴族の城に驚いただけかもしれない。


 「付いてこい」

 

 軍人にそう言われて俺達は城の中に入っていった。

 城の中は、自分の家とは比較にもならない位の大きさだ。

 どことなく教会の雰囲気に似ている。


 「ここに立っていろ」


 軍人にそう言われ俺達は城の中央に立たされた。

 軍人が何処かに行ってもうすぐ神父がここに来るだろう。

 そう思っていると軍人が何処かに行った途端にどこからか神父姿の老人が足音をたててこちらに近づいてきた。

 なぜ、神父が来るのかを知っているのかというと昔、魔法を封じられる時が来た子供が連れられて行くところの後をつけたからだ。

 初めて老人に着いていったときは、驚いたものだ。なにせ、クレアに教えて貰った教会の神父だったのだから。


 老人が、指につけていた指輪を外した。

 あの指輪が魔法を封じるための装置だ。


 「目を閉じなさい」

 

 老人がそう言ってきたが目を閉じている間に魔法を封じるつもりだ。

 だが、俺は指輪を昨日のうちに俺が作った偽物にすり替えておいたのだ。

 指輪をすり替えることは、実に簡単だった。教会の神像の指に指輪がついていたからだ。あの教会の神父はほとんどいるようでいないようだったから誰にも気づかれずに俺の作ったそっくりの指輪にすり替えれた。

 これで魔法を封じることができないし指輪が俺のものとなった。

 強力な武器が手に入った。

 老人が指輪を俺達に向けて振りかざした。

 偽物の指輪とも知らずに。


 老人がその場を去ると、さっきの軍人がやって来て俺達は、また馬車に乗せられて家に帰らされた。


 「またね」

 

 そう言ってクレアは家の中に入っていった。

 俺は一応魔法が使えるか確認のために水を出してみたら、魔法はちゃんと使えていて水が出た。 

 これからはまた、いつも通りの生活が始まる。


 その晩いつものように夕食を食べているとマリーが唐突にクレアの話をし始めて思い出したことがあった。

 クレアの魔法を封じていないことだ。魔法がまだ使えることを気づかれてしまうと後々厄介なことになってしまう。

 そう思ってクレアの家に行ったのだが何度呼んでもクレアは出なかった。

 もう空が暗いのに何処かに行っているのだろうか。

 明日にでも魔法は、封じればいいだろう。

 そう思って俺はベッドに入っていった。




 何やら音が聞こえてきた。俺は何かの音で目覚めた。

 腕が痛い、きつく縄に縛られているような感覚だ。

 目を開くと、目の前には椅子に縄で縛られたマリーが眠っていた。

 !?

 どういうことだ。

 幸いマリーは何もされていないようだが。

 盗賊にでも侵入されたのか?! 

 俺も縄で椅子に縛られているため動けない。

 魔法で解くしかないな。

 

 「ナイフ」


 ナイフを出そうとしたがナイフは出なかった。

 どうしてだ!? 俺は確かに魔法が使えたはずだ。まさかと思うが指輪で魔法が封じられたのではないだろうか。

 でも、盗賊ごときに指輪のことを知っているやつなんているはずがない。

 神父に指輪が偽物だと気づかれたのか? 気づかれたとしても誰が指輪をすり替えたのかわ、分からないはずだ。

 なら誰がこんなことをしているのだ。


 この状況はかなりまずい。

 このまま死んでしまうのか? まだやり残したことがある。

 なんとしてでもここから脱出しなければいけない。

 何度も俺は縄を解こうとしたがこの幼い体では縄を引きちぎれもしない。

 俺は魔法が使えないとこんなにも無力なのか。

 もう、諦めてしまおうか。

 そう思った瞬間、扉が開く音がした。

 盗賊だろうか? クレアだったらいいのに。

 俺は僅かな希望を求めていた。

 こちらに来る足音がだんだん近くなってきた。

 いったい誰なんだ?

 

 そいつを見た瞬間、俺は安堵した。

 俺の前に現れたのはクレアだった。

 でも、なぜクレアが俺のところに来たのだろうか?

 

 「起きたのか、ラウス」

 

 「いや、あらた」


 !?

 何故こいつは、俺の前の世界の名前を知っているんだ!?

 正体が誰なのかは察してしまったが認めたくない。

 そんなの嫌だ、認めたくない。クレアがあのゆうとだというのか? 俺は家族を殺した相手と一緒に仲良く過ごしていたというのか!? 

 俺は今にもこいつを殺したくなっていた。

 きっと今の俺は誰にも見せたこともないような顔をしているのだろう。


 「もう、分かっていると思うけど僕はゆうとだよ」

 

 「あの、君の家族を殺したゆうとだよ」


 「ちなみに、2年ぐらい前の殺人鬼の正体は僕だよ」

 

 「そんなにも怒った顔をしないでおくれよ」

 

 「僕みたいに笑顔でいなよ」


 俺が何もできないことをいいことにゆうとが笑顔を近づけてきた。

 なんともその笑顔が不気味でならない。

 昨日までのクレアの顔とは、全く違うものに見える。

 こいつはまた、一体何をする気なんだ?! また、俺から大切なものを奪うのか?!


 「だいたいあらたが気づかないのが悪いんだよ」


 「せっかく、ゆいちゃんの口調を真似たのに気づかないんだから」


 そうだ、今思えばたしかに妹のゆいの口調に似ていた。だが、俺はゆうとだと思いたくなかったんだ。


 「少し待っててね」


 そう言ってゆうとが玄関の方に行った。

 しばらくすると玄関の方から何かを引きずる音が聞こえた。

 次第にその音は大きくなり、ゆうとの姿が見えた。

 ゆうとが引きずってきたのは、ベルとダンだった。あのいつも一緒に遊んでいたべルとダンだ。

 ゆうとがベルとダンを縄で椅子に縛り付けた。

 俺は何もできずにただ見ていることしか出来ない。


 「何をする気なんだ!?」


 「気になる?」


 「その瞬間までのお楽しみ」


 「じゃあ、ちゃんと見ててね」


 ゆうとがそう言うと、どこからか剣を出してきた。

 まさかと思うがゆうとはまた、あれをするというのか?

 

 「やめてくれ……」


 「そうそう、その絶望した顔が見たかったんだ」


 ゆうとがベルの頭上に剣を振り上げた。


 「起きろ!!」


 「ベル!!」


 ズバ


 ゆうとは剣を一切躊躇せずにベルの首に目掛けて振り下ろした。

 床にベルの頭が血とともに転げ落ちた。

 やめろ……


 「やめてください……」

 

 「なんて言った?」


 「もう、やめてください」


 「やだ」


 そう言ってゆうとは、ダンの首を切った。

 その光景はあまりにも残酷すぎた。俺の視界は赤く染まっていた。

 

 「どうして……」


 「ベルとダンは、友達じゃなかったのか?!」


 「友達は、あらただけだよ」


 「それよりもよく見てよ」


 「あらたのせいでこうなったんだよ」


 ゆうとは、二人の生首を見せながら言ってきた。

 ゆうとの顔は笑顔だった。ただの笑顔さえも俺は恐怖していた。


 「あらたはね、幸せになっちゃいけないんだ」


 「ずっと今みたいなその絶望した顔を見せてよ」


 ゆうとが俺の絶望している顔を望んでいるのなら絶望していない顔をしよう、なんなら笑ってやろう。

 そう思って俺は無理にでも笑顔をつくった。

 これが俺の最大の抵抗だ。


 「強がれるのも今のうちだよ」


 ゆうとは、俺の顔を見て不満そうに言いながらマリーの方を向いた。

 ゆうとがマリーを見た瞬間に俺の顔は、笑顔ではいられなくなっていた。


 「マリーだけでもやめてください……」


 「俺が代わりに死ぬから」

 

 「でも、それじゃあ、あらたは苦しまないでしょ」


 「わかった、ゲームをしよう」


 「僕が次にする行動を当てたらマリーを殺すのはやめよう」


 「本当か!?」


 「僕は嘘はつかないからね」


 よし、これならマリーが殺されないで済むかもしれない。考えろ俺、次にゆうとがする行動を。

 あのゆうとなら次に何をするんだ。

 …………………

 分からない、あいつがすることが想像つかない。いつだってゆうとは予想外のことをしてきたからだ。

 


 「時間切れ!!」 


 「さあ、答えを聞かせてくれよ」

 

 「お前が次にすることは、マリーを殺すことだ!!」


 「……………」


 ゆうとは沈黙した。

 これは、当たっているのか!?

 ゆうとがマリーの縄を解き始めた。

 よし、当たっていたということだな。

 そしてゆうとがマリーをこちらに椅子ごと移動させた。


 「君の回答は、果たして当たっているのか」


 「どっちなんだ?」


 「残念、不正解です!!」


 「!?」

 

 「正解は〜〜」


 終わった……

 ゆうとは剣を取り出した


 「あらたの手でマリーを殺させるでした!」


 ゆうとがそう言いながら俺の腕を斬り落とした。

 いたい!! 腕が焼けるようだ。

 そしてゆうとが俺の腕を拾い上げ、手に剣を握らせた。ゆうとが俺の腕を動かしてマリーの首に刃が通りそうになった。


 「やめろ……」


 その瞬間、マリーの首が跳ねた。

 また、守れなかった……


 「あらたが殺したんだよ」 


 俺はゆうとが何を言っても聞くことしかできなかった。

 俺の視界は涙でぼやけていた。

 もう、怒りすら湧かなくなっていたかもしれない。

 そんな俺にゆうとが笑顔で顔を覗きこんできた。


 「いいね、その顔」


 ゆうとの笑顔が恐怖でしかならなかった。

 この笑顔を見るならば死んだほうがましだ。


 「殺してくれ……」

 

 「だめ、それじゃあ幸せになるじゃないか」


 「もうなんでもいい……」


 「それじゃあ、プレゼントをあげたいと思うよ」


 そう言った瞬間、ゆうとは真っ白の仮面を取り出した。

 何をする気なんだ?

 ゆうとは仮面を俺に被らせてきた。その瞬間、俺の体が変化するのを感じた。

 

 「どう?」


 ゆうとが仮面を外すとそう言って鏡を見せてきた。

 そこに写っていたのは可愛らしいクレアの姿だった。

 これは、俺なのか?!


 「いいでしょ、僕の姿可愛いでしょ」


 中身がゆうとなら可愛いのかもしれない。こんなの屈辱的だ。


 いつの間にか、さっき斬り落とされたはずの腕までもあった。

 いまだ!!

 俺はゆうとの首を掴んだ。


 「死ねぇ!!!」


 ゆうとは苦しそうにしながらも笑みを浮かべてきた。

 俺はその笑みに怯んで一瞬力が抜けてしまった。その一瞬でゆうとに仮面を被られた。

 ゆうとが仮面を被るとみるみるうちに体が変形していった。その姿は元の世界のゆうとだった。

 少女の体では成人男性のゆうとには勝てるはずもなく為す術もないまま、また椅子に縛られてしまった。


 「気分はどう、あらた?」


 俺のことを笑顔で覗かきながらゆうとが聞いてきた。

 もう何もできないなら死んでしまおう。

 そう思って俺は舌を噛んだ。

 噛めない…… 舌が噛めない。何度、力を込めようと何かに守られているかのように噛めなかった。


 「もしかして舌を噛もうとした?」


 「残念でした、あらかじめ君が死ねないようにしといたから」


 「もうやめてくれ、死なせてくれよ……」


 そうだ!! あれでゆうとを殺せるかもしれない。


 「じゃあ、もうすぐ朝が来る頃だからお別れだ」


 「またね」


 そう言ってゆうとが俺を抱きしめてきた。

 

 「タッチ!!」

 

 「しまっ!」


 ゆうとが後ろに退いた。

 よし、これでシールドが剥がれたはずだ。


 「やってくれたね」


 あの、ゆうとが笑顔ではなく怒りの顔をした。

 俺は笑顔以外のが見れただけでもなぜだが勝てた気がした。


 「まあ、でもいいよ」


 「僕はいつでも君を見ているからね」


 そう言ってゆうとは去ってしまった。


 辺りを見渡すと生首が転がっていて部屋が赤い色に染まっていた。

 縄は緩んでおりもう解けてしまった。この部屋のありさまを見て俺は無力感と恐怖で座り込んだ。

 地面に涙が垂れた。

 そして俺はマリーの生首に近寄った。マリーの生首を見るとゆうとの笑顔に見えた。

 違う!! これはマリーだ。

 そう思って俺はマリーの生首を抱きしめた。



 気づけばもう朝になっていた。

 俺は一旦外に出て軍のところ駆け寄った。


 「クレアさま、どうしたのですか?!」


 軍人はあのエヴァンスだった。

 俺はエヴァンスに盗賊に侵入されたと説明した。クレアに殺されたと言っても今の俺の姿がクレアなのだから自首しているようなものだ。ベルとダンについては泊まっていたということにした。

 本当は全て話したかったがこの姿では駄目だ。



 

 マリー達の遺体が処理されて数時間が経った。


 「クレアさま、ラウスという少年についてなんですがお聞きしてもよろしいでしょうか?」


 「ラウス君は、盗賊に連れ去られました」


 「何故ですか!?」


 「私もわかりません」


 「そういえば、なんでさっきから『さま』呼びなんですか?」


 「それは、あなたが貴族の娘だからです」


 なんだと、俺の家の隣のやつが貴族の娘だと?! ありえない。


 「なんであの家に住んでいるんでしたっけ?」


 俺はクレアの家を指しながら言った。


 「覚えていないのですか? 口調も変わっているし」


 「うん、実はショックで記憶が曖昧になってしまったたんだ」


 「そうですか、ならフレッド様に相談してみますね」


 なんだがエヴァンスは嬉しそうだった。

 これから俺はクレアとして暮らしていくのか……

 なんとも複雑な気持ちなんだ。

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