知らなかった。真のドMは優しいんだ
「ごめんなさい!」
「ハッハッハッ。絶対許さねぇ。でも話を聞こうか?」
俺はタクヤ。ごく普通のアラサー。こっちのおじさんは『マック』さん。俺とマックさんはネットで知り合った。俺は女子高生のフリをしてマックさんからさんざん金を巻き上げた。お礼の『エッチな自撮り』はネットで拾ってきたもの。それで実際オフ会で会ってみたら中身がこんな汚いニートだったらそりゃあ怒るよな。でも俺は直接謝りたかったんだ。
「……親の借金がありまして。でもそれは正当な借金じゃなくてヤクザに騙されて……」
「知ったことじゃないな」
ですよね。マックさんから貢いで貰ったお金は全部返済に使った。俺はクズだ。金の為にマックさんを騙して……
「取り立てもキツくて。奴ら暴力を奮うんです。まだ半分も返せてなくてあの……」
「へぇ。借金があったらおじさんを騙してもいいんだぁ?知らなかったな」
「ごめんなさいごめんなさい!」
この人ネチネチ責めてくるタイプだ。でも取り立てに比べたら優しいもの。
「ハゲでデブでチビでメガネでさぁ!やってらんないよねぇ?清楚系お嬢様女子高生じゃなくて僕はこんな不細工にお金を払い続けてたんだぁ?取り立てだかなんだか知らないけど顔も傷だらけで不細工に磨きがかかってるねぇ!?なーにが『エッチな女子高生です!貢いでくれるパパ募集♪』だよ!騙された~!」
「……返す言葉もないです」
「でも興奮してきたな。私はドMだからね」
「は?」
マックさんがドMなのはDMでのやり取りでよく知ってたけど。今の話の流れで性癖関係あるかな?
「正直たまらんよ」
マックさんは俺の肩を叩いた。
・
「……すいませんでしたぁ」
翌日。顔をパンパンに腫らしたヤクザ達が俺の家の玄関で土下座をした。
「今まで支払って貰ったお金は全部お返ししますぅ」
な……にが起きているんだろう?まさかマックさん?俺は再びマックさんと会う約束をした。
・
「そうだよ。僕が全部片付けた。おじさんは金も力もあるからね」
「やっぱり!でもなんで!?」
「ドMだからさ。おじさんがネカマに騙されてドMの私は興奮した『滅茶苦茶酷いことされてる!騙された』ってね。そのお礼さ」
「あ……あ」
この人ガチのドMなんだ。すごく気持ち悪い。でも。すごく……カッコいい。
『トゥンク』
僕の心臓が弾んだ。
「さらばだ。二度とこんなことするなよ?」
・
あれから5年。僕は変わった。具体的に言うと性転換した。最新の整形はスゴい。誰がどう見ても僕は清楚系女子高生にしか見えないだろう。おじさんに。マックさんに愛される為に死ぬ気で働いて韓国まで行ったんだ!今日。僕はマックさんに告白する!地下の扉を開けた。目隠しされた白ブリーフ一枚のマックさんが三角木馬に股がっていた。
「目隠しを外してくれぇ!」
と叫ぶマックさんはどこか嬉しそうだ。流石ドM。
ここは『ドM性感夜叉髑髏』。マックさんがここの常連なのを知って僕はここで働くことを決めた。
最高の再会の為に!
「おいっ!やめろ!写真を撮るな!」
僕はシャッター音を最大にしてマックさんを連写した。マックさんに相応しい女になるためにMが喜びそうな事を覚えたんだ。
「いきなり写真とはね。店長に聞いた通りとんでもない新人だ」
やった。喜んでくれた!僕はマックさんの目隠しを外した。見て!マックさんの大好きな清楚系女子高生だよ!?マックさんの性癖も知ってる!好きなだけいじめてあげる!
「チェンジ!」
「えっ!?」
「可愛すぎ!散々苦しめられて出てくるのがクソ不細工なのがいいんだよ!Mの気持ちが分かってないなぁ!」
分からない。分からないよ。ドMのきもち。
「まぁでも滅茶苦茶好みだよ」
「えっ?」
『トゥンク(特大)』
「君はまた次回ね!おい!店長!とびきりのブスを頼む!!」
再会は散々だった。でも控え室に戻って何時間経っても僕のドキドキは治まらなかった。
「絶対振り向かせて見せる!」
僕の恋はこれからだ!




