名探偵
カガリ達が立ち去った後のギルドは騒然としていた。
「さっきのって、」
「あぁ、『孤高の魔女』...だよな?」
ギルドにたむろする冒険者達が口々に発する声は、リンドブルム達に刺さる。
勇者の混乱する思考の中で、唯一ハッキリとした憤りがあった。
何故あの役立たずなんだ、と。
「どうします?一旦出ますか?」
意外と平然としたリーシェが切り出す。
彼らがここにいる理由は二つ。役立たずの切り捨てと、その代わりを探すことである。
一つ目は滞りなく終わった。だが、その直後にイレギュラーが起きた。まるで自分たちが不要としていたカガリが、とても有用な人材であるかのような勧誘。
「勇者様。考えすぎですよ。」
リーシェは全てを見透かしているようである。
「代わりを探さないなら、一旦出ないか?」
あまり周りを気にしないハイゼルもどこか居心地が悪いらしい。
「...あぁそうだな。」
とりあえず騒ぎのギルドを後にする一行。
仲間を追い出したという後ろめたさから、喧騒すら自分たちへの侮蔑を孕んでいる様に感じていた。
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所戻って酒場
「で、どうしてパーティぬけたの?」
シェーンがカガリに、さもただの世間話が如く、尋ねる。
「いえ、その...」
カガリは言い淀む。それはそうだ。混乱の最中ではあるが気持ちの整理はほとんどついていない。
なんとか自分を騙してパーティを抜ける決心をつけたところから、それほど進めてはいない。
「わかった!見切りをつけたのね?」
あまり上手くいってなさそうだし、と得意げに話すシェーンの言葉が突き刺さる。
「そう、です。見切りをつけられました」
ハッキリと言われた。足手まといだと。
忘れようとした言葉が脳内で響く。
「見切りをつけられた?何故?アナタ程の魔導士が?」
シェーンは返した。この魔女ここで初めて困惑の山を抱える。
「何故って...」
カガリの言葉が詰まる。全てのことで足を引っ張ってきた、としか言えないが。言葉がうまく紡げない。
そんな彼女を無視してシェーンが矢継ぎ早に言い放った。
「アナタ、前のパーティで一番強かったわよね?」
カガリは意味が飲み込めず困惑するしかなかった。