表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導士カガリの受難  作者: あまつや
1/15

気弱な魔導士


ここは人間領と魔王領の境、辺境の湿地ブリスガリダン。

立ち込める瘴気が一部の魔物を除き、あらゆる生物の侵入を拒む。

魔王討伐の旅路を進む勇者達にとって一二を争う難所である。

ここを超えれば魔王城も目前となり自然と気合も入る。

そんな一行を通さまいと、一際大きな沼より巨大な蛇の魔物が現れた。毒龍ブリスガリダンである。泥中を自在に移動し、通りかかった人や動物、果ては魔物まで足下から丸呑みにするこの湿地の主である。


「ハイゼル、リーシェ、カガリ、散開しろ!」


勇者リンドブルムが指示を出すとパーティメンバーは呼応し戦闘陣形を組む。今まで何百何千と行われてきた動作だが、魔導師カガリは沼地に足を取られ遅れをとってしまう。

剣士ハイゼルの防御支援範囲に届かず、さらには魔物にスキを見せてしまった。


「遅いぞ!カガリ!」


ハイゼルが体勢を崩しながらもカバーに入る、と同時に賢者リーシェが防御魔法を飛ばす。


「魔導防壁・三重展開!」


ハイゼルのバランスを欠いた剣撃とプロテクトに弾かれ、ブリスガリダンは一旦距離をとる。


「カガリ!なにをやっている!」


前衛に立つ勇者が、後ろを見ずに怒号を飛ばす。


「ご、ごめんなさい」


「ちぃ、いいからさっさと攻撃魔法を飛ばせ!」


勇者は毒龍に斬りかかりながら指示を出す。そこに含まれる苛立ちを隠そうともしない。

その間リンドブルムとハイゼルは毒龍に攻撃し気を引いている。


「は、はい」


「火炎召爆!」


毒龍の真上に魔法陣が展開され、巨大な火柱が上がる。

熱気が辺りを走り、一時瘴気を払う。

勇者達は間合いを置き、瘴煙が晴れるのを少し待つ。

その間、攻撃に転じれる様、武器は構えたままである。


「やったか?」


ハイゼルが呟くと、姿勢の変わらない毒龍が現れる。

火炎に焼かれ鱗は逆立ち、腐臭にも似た匂いが立ち込めるが、双眸にはより殺気が篭っている。


「まだだハイゼル!」


勇者は咄嗟に剣を構え直しとびかかる。神託の能力により沼地を物ともせず、2、3間を一息に詰める。


「おう!斬波一閃!」


同時にハイゼルは剣撃波を放つ。


リンドブルムは斬波の着弾と同時に、剣撃を重ねる。


反撃に転じようとした毒龍は二重の斬撃をその首に浴び、紫の血を吹き出しながら沼に倒れ込んだ。


「今度こそ倒したな」


「その様ですね」


ハイゼルとリーシェが毒龍の亡骸にかけより剣先でつつく。


「あぁ...」


リンドブルムはその方を見ずに返事をした。


「あ、あの」


「今はまず、湿地を抜けるぞ」


カガリが話し出したのを遮り、リンドブルムは歩き始める。


やれやれ、といった感じでハイゼルとリーシェも後に続き、申し訳なさそうにカガリが続く。


沼地の主と呼ばれる強敵を倒したにも関わらず、勇者達を包む空気はブリスガリダンの瘴気よりも重く、澱んでいる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ