実力試験
堂門 凪 彼は、ひじょーーーに影が薄い。教室にいるこの時も誰も彼に目を合わせないし、見向きもしない。そして彼はこの物語の主人公である
ー1ー
性格、言動これらは産まれ育った場所、環境によって形成されている。そして、もうひとつその環境に左右されるものがこの世界にはある。
超能力
世界中に、何千何万人といる超能力者。
そして世界で今起きている世界第三次大戦による活躍が期待されいる。
そしてここは、そんな超能力者の少年少女を育成するための機関、超能力育成学園
日本中から中高生の超能力者を集め、Eランク、Dランク、Cランク、Bランク、Aランク、Sランクに分けられており、その判別は、戦闘に有用かどうかを教師陣が判断するというもの。世界中でこの能力者を使った戦争が起きており、学生達は日々能力開発に勤しんでいるのだ。
ー2ー
堂門凪彼はこの学園の、高等部から途中入学しているのだが、今日は彼にとって初めての実力試験の日。教師陣の判別に誤りがないかをこの実力試験をし、同時に学園内での序列をきみるためにトーナメント戦をするのだが、その影響で今現在教室はかなり盛り上がっており、、
「今日の結果次第でランク昇格とかマジ⁈」
「初戦はなんとか突破したいよなー」
「僕の、完璧な計算によれば勝率は、30、9563、、、」
「調子乗ってるSランクの鼻っ柱おらねえとなーー!?」
などなどかなり盛り上がっている中、二人ほど周囲の雰囲気を見れば場違いと言っても良いほど静かな状態の人がいた。一人は堂門凪、髪は薄い透明に近い青といった感じで彼の影の薄さを色濃く写しているようだ。線は細く、教師達が見ても「お前しっかり食べてるかー?そんなんじゃあぶつかっただけで骨折れるぞー」と小言を言いたくなるほどなのだ。
そしてもう一人は 潮崎 海音この数千人いるこの学園の、十人しかいないSランクの一人で、このクラス唯一のSランクなのだ。至って普通の女の子なのだが、彼女がSランクだからか、誰も話かけようとしない。
やっぱある程度の実力者になると、アイドル達みたいに囲まれる人気者ってより、 話しかけるのが怖いってイメージのが強いんだろうなーなどと、凪がクラスメイトを観察しながらものふけっていると、、
「なぎ君、、、だよね?」
突然話しかけられ、大きく跳ね上がる凪。
しかし、机が そんなこと許しまへんで と言わんばかりに飛び上がる凪の膝をブロックしたため、
ガッっっしゃん
と強く膝を打ち、抑える凪。
「えーー、と、大丈夫?」
「え!?潮崎さん?どしたの?」
「いや、なんか私達だけ誰とも話してない同士って思って、、、なんか、、ゴメンね?」
「いや、いっやぁああ、そんなことないよお?」
「そう?」
「う、ん」
「そうだ!凪君は実力試験自信あるの?」
「いやぁ、そんなのないけど、、やれるだけはやろうかなと」
「実力試験は基本ね、AやB対E、Dの方が多いんだよね。基本的に下同士の子が戦うより強いって思われてる子と下の子が戦った方が明確にカーストを付けることが出来るから、変な不穏分子なんかを産まずにすみやすいから教師陣の楽の為にそういう風に組まれることが大半なんだよね。だから下の子は初戦突破だけでも難しいんだけど、、凪君は
「E」
「へ?」
「俺Eなんだよね」
、、、、
「まあまあ、まだ負けってきまったわけじゃないし?もしかしたら下の方の子かもしれないじゃん?初戦突破全然いけると思うよ?」
「そんなふうに慰めてくれる優しさが、俺の心の傷をさらにえぐっていくよー(泣)」
などと他愛もない話をしていると、
「「それではこれより実力試験を始めます。前日に発表されたブロック区に移動してください」」
「ねえ、凪君。」
「ん?何?」
「勝ってね!」
、、、
「うーん、、まぁ、頑張る」
ー3ー
この学園、グランドだけでも東京ドーム数個分の広さがあるので、「空間移動者」や、「身体能力強化者」じゃないとかなり時間がかかる。
そして普段動いていない凪は、ヘロヘロになりながらも、Oブロックに来たわけなのだが、なんと!
初戦は凪ということになっているではありませんか!!
「そー言えば、前に配られたプリントにそんなことかいてあったかな?」
などと独り言を呟きながら、リングに向かう。
「「それではOブロック一回戦Eランク 堂門凪 対 Bランク 豪炎寺ひかり ですので所定の位置についてください」」
そして凪と、相手のひかりと呼ばれた男子がリングにつく
そしてそのタイミングを見計らったようなタイミングでアナウンスが入る。
「「それでは、始めてください」」
試合のゴングが鳴る
100平方メートルのリング
リタイア有りの場外有り
そして 能力の使用は勿論あり!
ー4ー
試合が始まった瞬間に、いかにも小物らしい顔をしたひかりが、さらに小物らしい言葉を投げかけてくる。
「お前、Eなんだろ?リタイアしろ。そしたらなにもしねぇ。さっさとしろ。」
「悪いけど、負けられないんだ!本気でいかせてもらうよ!」
しばしの沈黙、
それは、面食らったような、あり得ない行動を見て動揺しているようにみえる
「はは、あっっっっはははは!!本気でいく?Eランク如きが、、、
舐めんなよ?!」
ひかりの手の平から炎が出る。
「殺したらアウトだもんなぁ? い ち お う 手加減してやるよ」
ボォぉォぉぉぉ
火の玉が飛び出る。300度を超えるような威力なのに手加減しているとでもいうのだろうか?
しかし
凪は ただ Eランクの判定を受けただけ。
それは、弱さには 繋がらない。
ピタァ
火の玉が止まる
空中で静止しているが、火は生きている。しかし落ちる気配も、消える気配も無いまるで、そこに縛り付けられているように
「なっ!!」
「このてーどの実力なら無傷で一回戦は突破できそうだね」
「あんま、舐めんなよ!」
ひかりは今度は両手の掌から炎を出す。そして、胸の前で腕を交差させるようにして炎を飛ばす。だが、
凪はその二つを先程と同じように自身の超能力を使って、空中に留める。
しかし、
「芸がないやつだな。」と、ひかるが言った直後
炎が爆ぜた。
そして近くにあった最初の炎にも連鎖し、凪は爆風をまともに受けた。
超能力があると言っても生身は、ただの高校生。爆風や、膨大な熱を浴びればただでは済まない。
とひかるは考え勝利を確信したが、、、あの立ち込める煙の向こうに影が立ち上がったように見えたのは気のせいなのだろうか?
ー5ー
この学園のとある一室にて
鼻歌を歌いながら、窓に手をかけ、凪の試合を見る海音。そんな彼女に、この教室には彼女一人しかいないはずにも関わらず、どこからともなく彼女に話しかける声があった。
「なぜ彼をそんなに気にかけるんだい?聞いた話によると彼は、Eランクの判定を受けているはずでは無いのかな?」
「でも、それが本当の実力を表すとは限らない。」
それから彼女は、後ろを向き
「でしょ?」
そしてその行動に反応するように部屋の一室の影が盛り上がる。それは、人のような形をしている。
「確かにそうだが、基本Eランクを受けた生徒は成功した事例も少ないのも事実。
「私クランに誘おうと思ってるんだよね」
声に被せるようにそう言い放つ彼女。
「!!!そこまでなのか?彼の将来性というのは。」
と驚く何者かに、
「あのさー、君あんまり情報集めなくていい立場にいるからって、怠ってるでしょ。ましてや あの件 もあるのにそんな神経が知れないなー。」
何者かは何も言えず黙っていると、
「国内にも目を光らせておかないと、、、背中から グサっっっ だぞ?」
などかわいらしく海音が言うと、少し間をあけ、
「ねぇ、彼がなんで高等部からこの学園に入ったと思う?」
海音はそのまま続ける、
「彼ね、中学行ってないんだって。」
「なぜなんだ?能力の基礎はあそこで作るのが基本だ。その機会をものにせず、彼は何をしていたんだ?」
「国内ランキング第五位の朱雀 美波の祖父にあたる人物って言えばさすがに分るよね。」
驚く何者かを無視して彼女は続ける。
「朱雀 慈吾朗日本の一時代を築いた人物の一人。彼に3年間指南されたらしいよ。」
ー6ー
試合はあれからかなりの時間をかけ現在進行形で続いているのだが、、、試合を見る生徒、審判の目にも明らかにわかる様に優劣がついている。なぜなら、、先ほどからひかりはかなりの技の量を出している炎の柱で包んだり、炎をその手に纏わせて何度も殴りつけるなどしているにも関わらず凪は、一つの傷も負っていないのだから。
「ちくしょう!!なんで火傷の一つもつかないんだ?テメェどんな能力なんだよ!?」
凪はしばし考え、
「うーん教えるメリットってのはあんまないけどまあ教えてあげるよ。僕の能力は‘’集約,,ありとあらゆる物質を任意の場所にあつめ、そして任意の対象のみを集めることも可能な汎用性の高い能力だよ。」
「だけど!!俺の炎を浴びて火傷しない理由にはならないだろ!」
「あーそれ?そんなの簡単さ。俺の能力で窒素のみを集めることで一切の燃焼をふせいでるだけさ。」
彼の能力は汎用性が高い。つまり、数千数万に登る選択肢を的確に選び、ランク上なら格上の相手を圧倒することが可能な凪は、たかが最低辺と呼べる人間では無いのだ。
「もう、そろそろ終わらしてもいい?」
対するひかりは、すでに泣きそうになりながら、
「ちくしょう、EなんかにEなんかに、クソ くそ!」
など怒りを露わにしているがそれで、何かが変わる訳もなく。
凪の必殺の一撃である、気体を集め目に見えない鈍器を振り回すのと同等の威力を持つ拳が放たれようとしたその時、
唐突に凪の足を掴んだものがあった。当然ながらひかるの手では無い。何か凪の真下から生えるように出ている。急すぎる展開に凪はついていくことができず、そのまま勢いに押されリング外へ。
審判にも生徒達の死角になるように生えていたし既にその手は消えている。
「「勝者 豪炎寺 ひかり 。それでは次の生徒はリングに上がってください。‘‘‘‘‘‘」」
こうしてあっさりとした終わりにはなったが、ここから 堂門 凪の歴史に残る物語は始まったのだった。