第2話
実験の成功は極一部の者しか知らされなかったが、
同じ指導教授を持つ別の研究室にシーグライダーに密かに観察する人物がいた。
学生食堂やドリンクコーナーで周りの学生の会話を注目していた明林はシーグライダーが成功したのだと確信した。
決意すると深呼吸をして急いで帰り支度をし、家路についた。
途中コンビニの外にある公衆電話に百円硬貨を入れ、ある番号にかけた。いきなり留守番電話の案内が聴こえ、今何時か聞いてくる。
明林はある言葉を呟き、電話を切った。
コンビニで普段なら食べない少し値段が張るケーキを買い、アパートに帰ると、黒塗りのリムジンが道を塞いでいた。
車から恰幅のいい中年男性が降り、明林に向き合う。
久しぶりあるね。明林。
なぜあなたが?
彼は亡き父の友人で日本語学校の校長の王大老だった。
明林の頭の中で記憶が引き出され、計算が行われ全て納得がいった。
そうか。そうだつたのだ。
我が国では考えられないことだが人材交流として留学費用や生活費用まで出して先端研究の施設に留学生を受け入れている。
彼はそういう子供を支援し、先進国の先端研究施設や企業に送り込み技術を盗ませているのだ。
盗ませた情報は全て本国に送られ、大したことがないと思われる情報でもほとんどすべて特許申請され、サブマリン特許とされる。
のちに、有用な特許が現れたときに取引材料として利用されたりするのだ。
つまり日本の研究のすべてが未完成とはいえ、その国ではサブマリン特許として登録されてしまっているのだ。