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今からお前に決闘を挑む  作者: アスク
日輪の華は戦場を照らす-後編-
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熱線放つ土竜と陽数珠


 真っ暗闇な洞窟、同じところを行ったり来たりで苦節3時間を突破したところで遂にこのエリアにたどり着いた。黒色の砂土岩で囲まれた小部屋のような場所、その中でアクセントカラーのように輝くオレンジを拾い上げてみれば【陽数珠の原石】であった。



「遂に見つけたな」



ーーーーー


【陽数珠の原石】

リキャストタイムの短縮に関する武器や宝石、ポーションに加工できる。洞窟の中で太陽のように自ら輝く原石。


ーーーーー


【陽光の砂】

陽数珠の原石が砕けて砂になったもの。通常のポーションと配合すると【ハイクイック】に変化する。


ーーーーー



「っしゃぁ!あるだけ全部持ってこうぜェ!」


「カセイに賛成!ねぇ!アタシも貰ってもいいよね姉貴!」


「持ってけ持ってけ」



 私の取り分を確保し、二人も続く。流石に今の力では一人でいけない場所だった気がするから独り占めはしない。



「桜ちゃん」


「あぁ、なんだ」


「今、楽しい?」


「まあまあ、かな」


「そうか。ならゲーム進めた甲斐があったよ」


「いつか30万と7000円は返す」



 いやいいって!と断る店長だが、いやでもお返しは受け取ってもらうぞ。

 口ではまあまあと言ったがこのゲームは楽しいが過ぎる。視野が広がるというかなんというか。

 大前提として強者とのバトルが一番だけど、世界観とかスキルの多様性とか妙に細かい設定に引き込まれるものがある。



「よし、素材は十分だよ鬼桜さん」


「けーるか」


「レッツ帰宅帰宅ぅ!!……ふぁふぁっ!?」



 最近狂夏の第一発見率とそれに伴うビビり芸が味を占めてきた気がするなと思うのである。



「おいそこどけゴルァ!!」



 硬直した狂夏の目と鼻の先、鶏頭のバカに吠えられたそいつは、小部屋の入り口をすっぽり塞いでいた。

 そいつの言葉を代弁するなら「おまえらうちの家で何してんだぁあ?」と言ったところか。



ーーーーー


タルピードラゴニック

種族:地竜種


ーーーーー



 洞窟入口からここまで、実は緩やかな下り坂でここは地下。そんな中でこの小部屋は実に人工的で不自然極まりなかったが、本当に部屋であったのだ。

 生態系の一番下に砂を食う鉱石虫というゴキブリ感満載の甲虫がいる。その上に小判ではなく石が背中から生えてる鼠のストーニウス、さらにその上に蜥蜴やら蝙蝠やら捕食者がいる。

 しかし頂点捕食者はこれらとはまた違う。

 地中に部屋を作る捕食者。土竜(モグラ)だ。



「モグラっていうかまんまドラゴンだな」



 毛に覆われてずんぐりむっくりでシルエット自体は完全にモグラなのだがその顔は爬虫類特有の面で鱗があり、背中は例によってオレンジの鉱石が生えていた。というかこいつデカすぎ。



「顔面ガラ空きだぜバーーカバーーーカ!!」



 【拳術:弩砲の鉄拳(ボンバーフィスト)】なるスキルを発動させ、横っ面を引っ叩く……がまるでびくともしてない様子。



「スキル鑑定不可。格上だ」


「なるほど?」



 がばっと口を開いた。喉の奥が陽光を放ち……おいおい、まさか冗談だろう?



「グルォァォァス!!!」


「【荒ぶる旋風】!!」




 太陽の如し燃る炎の柱と、アメリカ西部の異常気象を彷彿とさせるような風の柱がぶつかり合う。痛覚は押さえても熱風は伝わるようで、なんとも熱い。熱いが、熱く燃えてるのは私の心も同じくだ!!



「はっはぁ!息のいいやつ発見!!!【強化化(パワード)】」


「マジかい桜ちゃん。挑むのね」


「ついていきまっせ姉貴!!」



 目的達成してるし撤退が正解だろうが、挑まずにはいられなかった。

 強化ガラスを割って侵入を試みる場面がある……普通ないか、いや私の場合はあるんだ。

 その時どうするかって?一点に圧力を集中させてヒビ入れて叩き割る。

【鉄製の短槍】を出して首辺りに横から突き刺す……滑って弾かれたが傷痕はついたな。しかも何もしてこないと?これならもう一発!



「なんだおまえすっとろいなぁ!!」


「いやモーションの隙だ、警戒を怠らないほうがいい!何かくる」


「忠告ありがとうバトル屋さんよ!【死線の心眼】」



 お前の行動を見させてもらう。どれどれ……赤の判定はモグラの周辺と……それだけか?

 3秒経過。視界内で大した情報は得ることが出来ず、とりあえず後ろに緊急回避して態勢を整えた。すると……モグラは居なくなっていた。



「店長さん!」



 狂夏の呼び声、私は店長の方を見やると、なぜ叫んだのか理解したがもう遅かった。

 店長の足元、地表が割れ、竜の鼻先がのぞいたと思えば、次の瞬間上空に打ち上げられたではないか。



「【音速化(ソニックアクセル)】」



 両足跳びで上空から落下する店長まで急接近して抱きかかえ、モグラを跨いで部屋の奥側へと消えた。おそらく大丈夫だろう。

 さて部屋のど真ん中に居座った家主からすれば私たちはコソ泥。日本ならいざ知らずゲームの異国なら生かしてはおかぬという殺意を感じる。再び口をがばりとあけて火炎放射してきた。



「出るまでが遅いから当たらねえよ!」



 しかしそれは相手もわかっていたのか、間髪いれず四つん這いになった。わさわさと震えだす背中の鉱石。この動きどこかで……マーニウスの変異個体?石が飛んでくる!



「下!」



 咄嗟に蹲み込んだのは正解だったか。マーニウスの小判飛ばしと同じ要領でオレンジ色の石を撒き散らしてきた。こいつとマーニウスって親戚なのだろうか。予習してよかった。




「また穴掘りが来る!」


「俺にまかせろ!【撃振天上】!」



 音もなく地中に身体が浸かりかけていたそいつの顎を下に潜り込んだカセイが拳で叩き、巨体ごと打ち上がった。

 骨の砕けるような音、よくみりゃ鱗が剥がれて地面に散らばっている。



「狙うは目ん玉……」



 空中に放り出されて無防備だ。鉄製の矢を放つ……が、やっぱり慣れないな。上にそれてしまった。



「外したか」


「いや、そうでもないみたいだ」



 モグラを通り越して飛んでいく矢だったが、その軌道はぱたりと消えてしまう。何が起きたのかと思ったが私の目には確かに少女の影が見えていた。


 狂夏だった。矢をキャッチしそのまま目ん玉に突き立てた。落下するモグラは大声を上げて怒ったようで、その場で寝返りを打って狂夏を振り落とす。

 背中の鉱石の明度が増す。口を開けた。



「また火炎放射……いや、様子がおかしい!?」



 光はさっきよりも濃密で顎は外れんばかりに開かれて、"溜め"の時間がやり長い。



「もっと凄いのが来る!?」


「させん!起爆!」



 仮面のバトル屋、起爆なんていう単語を言うからには爆弾で、それがどこに仕掛けられたのかと思えば。



「大口開けて、入れてくださいと言われているようなものだ」



 喉。内側から破裂したように膨らみ、火炎放射もとい白熱のビームが上に暴発する。黒岩の天井を貫いて、部屋全体が唸りを上げる。

 ぐらりぐらりと揺れ続け、吊り下がる岩の柱が一つ二つと落ちてきた。



「やるじゃねーかバトル屋」


「お褒めに預かりまして光栄だ。やはり爆発はいい」



 普通に放たれてたらひとたまりもなかったが難を逃れる。無駄撃ちをしたなモグラよ。プレイヤーもモンスターもスキルの連発はできず、必ずリキャストタイムを要するのだ!

 爆撃され怯んだ後隙を狩るべく近づいた。が、なんと言うことだ口を再び開けた。



「なに、再発射!?」



 背中の鉱石は光を失い真っ黒に。そのかわり喉に火力が充填され即時発射可能な状態が見て取れる。

 脳裏によぎった単語は「スキルリキャストの短縮」仮にもし背中の鉱石が【陽数珠の原石】と同じ素材だとするならば。

 ノータイム二度目の熱線が私の体を包み込み一瞬で焼き切る……いいやまだだ。【カウンターアポート】発動。いくら魔法的攻撃だろうが8割軽減。流石に体力は残った。風前の灯火だけれど。



「錬成。【鉄製の大盾】」



 盾でガードしたバトル屋、上空に退避した狂夏、カセイは直撃してたが流石にタフで余裕がありそう。全員生存……あれそういや。



「狂夏、店長は?」



 無言で後ろを指差した。部屋の端っこ。それこそビームの範囲外ぐらいまでの遠くの場所でなにやら瞑想していた。





 

 

 

ちなみにWorld Interceptにボスモンスターみたいな概念はありません。ただし討伐難易度で階級分けはありギルド内で見ることが可能。

NPCもモンスターも全員同一のワールドマップ場を自由に歩き回れます。世界観に沿った行動パターンは持っていますが。


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