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今からお前に決闘を挑む  作者: アスク
日輪の華は戦場を照らす-後編-
55/79

作る為には素材から




「体力はもうほぼゼロ。天井に打ち付けられるダメージで死ぬか、落下ダメージで死ぬか。お引き取り願おうか?お客さん」


 

 その爆破は、魔法ダメージなのかも知れない。錬成師は魔法使いから派生する職だから。

 物凄く痛い。痛覚的な意味ではなくダメージ的な意味で。しかしまだ、死んでないぜ?バトル屋さん。



「天井に打ち付けられたら死ぬ、落下したら死ぬ、じゃあ、どっちにもならなきゃ死なねえんだよな」



 私は背後に右手を伸ばす。手がその棒に引っかかる。それを掴めば打ちつけられないし、落ちないし、死なない。



「なっ!?」


「驚いたか?うちも驚いてるよ、こんな所に思わぬ助け舟があるんだからなぁ!」



 右手が掴んだのは天井に縦に突き刺さった【鉄製の長槍】

 先程邪魔だと投げ捨てたものが思わぬ形で私の命を救う。吹っ飛んだエネルギーで右手を軸に回転。ポールダンサーもビックリだろう。

 ここまでの軌道を逆再生するように謎って、再びバトル屋から一歩分ぐらい離れた場所に着地する。

 微妙な距離だがやるしかない!


 錬成はおそらく大きさや効果が強力なものほど具現化に時間がかかる。だとすれば奴の選択は取り回しの良い、中〜近接武器で1発当てにくる!



「【錬成……】」



 バトル屋が武器錬成する早さと私が武器をインベントリから出す早さは同じくらい。持ち手の部分から徐々に姿を表す。

 私のは【青銅の剣】、バトル屋もやはり【最初の霊剣】

 この範囲じゃ技量幸運のせいでどう避けても当たってしまう!ならば先手を打つのみ!



「お前は右利き!」



 小手を撃つ。剣を手放す……左手に剣!?霊剣は囮か。



「【青魔晶の剣】


 畜生、イージーウィンを狙おうと思ったのにこうなると正真正銘の早撃ちだ。ああそうだとも。今弾くことに使った【青銅の剣】は勿論本命を私の利き手に持った【煌黒の剣】を通すため!

 奇しくも私とバトル屋のした選択は同じだったってわけだ。



「【連】!」



 その一刀、先に届いたのは私。肘を打った。【青魔晶の剣】は振るわれることなく。奴の手から零れ落ちる。

 そう、いくら回避不能だろうが、クリティカルでダメージが増えようが、さしで勝負したら本職が勝つ!



「【斬】!!」



 第二の刃は、スキルの仕様で身体の限界以上の速さを弾き出す。高速。バトル屋の喉笛を掻っ切った。



「【撃】!!!」



 終結。コンマ秒の差で剣が先に届いた私の勝ち。バトル屋は白い湯気になって消えた。




◆◆




 テキトーに賭けた100エールを手に入れたのはいいとして。勝利した。これで約束通り、バトル屋は私の武器を作ってもらう。

 しかしバトル屋、難しい顔をしていた。



「鬼桜氏。君には謝らなければならない」


「あぁ?まさか作れないとかいわないだろうな」


「いや、その、まさにその通りで実のところ今の吾輩では作れない」


「はっ!?」



 なんという。私は騙されといたというのか!……と激昂する事はせず。話を聞くとしよう。

 話を急かして狂夏をビビらせてしまった前例がある。きっとなにか訳があるんだろう。



「聞こうか」


「おお?あの桜ちゃんが落ち着いて人の話を聞こうとしている」


「っせーな。うちだって四六時中キレてるわけじゃねーんだ」



 寧ろ私自身は滅多にキレないけども。鬼という肩書きと、口調が荒っぽいのと、意志とは関係なしに甲高い声が出るせいでよく間違えられる。

 私の話はおいといて武器が作れない理由について、改めて尋ねた。



「まず再確認させてもらうと、鬼桜さんのオーダーは『スキルリキャスト短縮が可能な修練度Aクラス武器』」


「そもそもゲームシステム的に不可能?」



 横から一言いれたのは店長だった。確かにそうだ。そもそもゲーム内にそんな効果を持った武器が無ければ逆立ちしたって無いのである。



「断定はできないが、不可能では無いと推測している。耐久値が全損した武器をもう一度使えるようにするスキルや素材は確認されてるからね。つまり少なくとも効果として存在している」


「じゃあ何が無理なんだ?」



 こほんと咳を一つ。単刀直入にその理由を告げた。



「吾輩一人では作るのに必要な素材を集められない」


「「あぁそういうコト」」



 理解する店長と狂夏。こいつらが何を理解したのかすら理解できない私。



「どういうこと?」


「生産職っていうのは通常戦い向きではないからね。素材集めは別の人に頼ることになる」


「こいつなかなか強かったぞ」


「この方は例外!普通こんな動かないしバトル屋さんも対モンスターじゃ厳しんじゃない?」


「そうだな。少なくともパーティを組まなくてはキツい」


「本来生産職の方々はどっかの戦闘系クランの専属になって素材と(エール)を仕入れてもらう代わりに生産物を作成するんだけどね……」



 本来なら。とバトル屋を見やる。つまりこの人があらゆる面で生産者として異端で例外だと。



「吾輩はどこの専属にもならず、勝者にのみ武器を作ってやる。だから素材も自分で集めているんだ……が、さすがに未開拓の効果武器を4日は素材集め検証時間諸々含めて少なすぎる。だから、武器の完成を保証できない」



 まあ、ですよねーと店長は言った。確かに私も欲張りをしたきらいはある。がそれならそうと最初から言えばいいのに。

 だから私はそういうと、バトル屋は頭を下げる。



「すみません、めんどくさいんでちゃちゃっと倒しておかえり願おうかと思ってました、舐めてました、ハイ」


「おーけー。正直に白状する奴は嫌いじゃない」



 事実、結構追い詰められたし。その判断はよかったと思う。しかし勝ったのはこちら側なので正解ではなかったという話。



「つまりバトル屋さんは時間さえあれば作れるってーわけだよね!違う?」



 流れを切り替えるように狂夏が投げかけた質問は私も言おうとしていたことだった。4日じゃ無理なだけでこれが例えば8日あれば変わるのか、と。

 その答えはYESだった。



「やはり時間が足りない。もしも、もう少しの猶予があれば……」


「ふーん、決闘王選抜の日時はボク達の力じゃ変えられないからねぇ」


「なら、やはり不可能……」


「ったく、誰が期間を伸ばして貰って解決しようなんて言ったよ」



 店長も狂夏も意地の悪い奴だ。仕方ないから私の口から言う。少々こっぱずかしいが。



「つまり時間さえ作れりゃいんだろう?じゃあ短縮するしかないじゃんか」



 木刀十三号を担いで、出入り口の方を指差した。



「うちらが1日で素材集め完了させる。残り3日で作れ」


「わーお、すんごい自分勝手ぇ」


「ったりめーだ。なにせ協力関係だからな。問答無用でついてきてもらうぞ」


「流石のヤンキーさんだ、敵わないなぁ」


「アタシはいつでもついていきまっせ!姉貴!!」



 ふん、たまには高慢に振る舞うのも悪くない……勝利をもたらすってことで貸し借りチャラにしちゃあくれないか。



「よかろう、それなら作れる」



 ふとバトル屋を見る。表情は仮面で隠されてわからないが笑った気がした。




A武器は素材からなにからレアモノをかき集めて錬成術師が作ることができる最高峰の武器。

ただこの指標は必要な修練度であって強さではありません。必要練度Bの方が優秀だったりする場合もある。

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