スキルとはよくわからんがお前は倒す
「ステータスを開くのじゃ!」
「あぁ?何言ってんだお前」
戦いがはじまって間もなく、調停者はそう言った。
「ゆーとるじゃろう?ステータスを開かんかい」
『ステータスを開きます』
「うぉお?」
突然目の前に現れた文字の羅列。上に自分の名前と下に40とか20とか数字が並んでいた。
なんだか戦いに水を刺された気分だ。
「これがお前さんのステータスというやつじゃ」
「……おい、筋力40ってなんだよ。3億ぐらいあってもいいだろ舐めてんのか」
「いいや、それが普通じゃよ……まあお前さんの場合その数字は気にせんでもええじゃろう。スキルを確認するのじゃ!」
「次から次へと」
『スキルの詳細を開きます』
まったく、全部自動でやってくれるからいいものの、折角の戦闘中なのに台無しだ。えーなになに?パッシブにアクティブ?
ああ、なんだ?めんどくせえな!
「うるぁ!」
「おおっと!?おぬしまだ説明の最中じゃぞ!?」
「ガタガタうるせーなぁ。あんまり小難しいこと考えるのは得意じゃないんだよ」
今の一振りはカスったようだな。仮面な傷がついてるぞ?
「よろしい、ならばスキルの力をもってお前さんを倒してやろう」
「上等だよ。ステータスだかスキルだか知らねえが全部返り討ちだ」
「1つ目じゃ!【呪文:高速の加護】」
「うおっ!?」
押して引いて押して引いて、目まぐるしく動いて翻弄してくる調停者は、確実に私のHPを削っているのだとわかる。
現実よりは軽いが、痛覚があった。
集中、集中だ。どれだけ速かろうと動きを見極め先読みすれば反撃の余地はある。
癖、パターン、予備動作、全ての事象から次に起こす行動を割り出す。
「そこ!」
「んなっ」
突きつけられた右足蹴りを剣で弾き返し、体制を崩したその瞬間に、ぶちかます。
突進。肩に直撃し仮面の婆さんは吹き飛ばされていく。
「やりおるな、お前さん!ならば良い、しかしここからが真骨頂じゃ」
「あぁ?」
先程は樹形図、武器と自在にものを描いていた青と白の光、それが回転し始め、何か膨大な力を生み出しているのは見てわかる。
「2つ目!【呪文:一筋の閃光】」
放たれた光、一撃即死と言わんばかりの一閃。すんでの所で回避したが、頬をかすった。
かわりに被弾した地面がえぐれて盛り返されていた。
「あぶねえ……」
「冒険していれば、スキルは沢山覚えられる。じゃが使えるスキルにも制限はある」
「随分と親切に教えてくれるじゃねーか」
「わしは調停者、聖霊の案内人である故……3つ目、錬成:水晶槍」
生み出された武器。追いつかぬ思考、振るわれたガラスのような棒は、既に私の右手から剣をはたき落としていた。
高速から弾き出される一撃が私の顔面を引っ叩かれ、怯んだ隙に腹に突きが入る。
「戦闘で使用できるアクティブスキルは覚えている中から5種類じゃ、覚えておくと良い!【一筋の閃光】」
またしても放たれる凶悪な光の矢。
これと、武器作るやつと、速くなるやつ。残る二つはなんだろうか。情報戦で負けている。そして迫る制限時間、その上で高速の足には届かぬこちら側の攻撃。
それだけじゃない。攻撃範囲でも劣る。遠距離からあの閃光を放たれ続けたらいつか死ぬ。
なんとかしてこちらの土俵に、引き摺り下ろさなければならない。ここから勝つ手段は、至近距離での封殺が必須。
「ほれ、4つ目じゃ!【詠唱:魔獣種-レッドガルム-】」
「あぁ!?」
魔法陣と共に現れたモンスター。行手を阻む、赤い体毛の野犬。おそらく調停者が使役しているだろうそいつは私に食らい付いてかかる。
「邪魔だ!」
頭蓋を砕いて殺す意思で力一杯頬の横を蹴飛ばす。キャンと悲鳴を上げようがお構いなし、倒れたそいつの首を手刀でへし折る。
耐え兼ねたか、そいつは白い光を帯びたのち消滅する。現実なら死体が転がっていただろうが、これはゲームだった。
「苦戦せんのう」
「時間稼ぎたぁ、気に入らねーな!」
ただでさえ五分という時間制限があるのだ、あんな犬畜生に構ってる暇はない。
落としていた霊剣を左手で拾い上げ、すぐさまそれを前方へ向けて投げ飛ばす。
「【高速の加護】」
投げた剣は簡単に避けられる。
だが避けてくれたなら狙い通りだ。本命は右手に持った2発目。閃光で盛り返された地面から拾い上げた小石。
避けた先へ豪速球の偏差撃ち。削ぐべきは奴の機動力、狙うは勿論弁慶の泣きどころ。
「んなぁ!?」
「大当たりだ」
足をくじいてその場で転倒、残り時間を数えるのは開始5秒で辞めたが、体感もうそろそろタイムオーバーだ。
「落とす!」
倒れた調停者に飛びかかって、すかさず関節技を決め込む。肩固め。いくら速かろうが0距離で縛って、絞めあげれば、逃げることはできない。
「ふっ、ぐっぅ!」
「落ちろおおおおお!!!」
「【禁忌……瞬間転移!】」
先程まで捕まえていたはずの奴が突然消えた。
抑え込んだはずの身体、それらは干渉不可な魔法の力によって、全て無に返される。
奴は今どこに……
────背後だ。奴からすればうつ伏せ状態の私にさっきのフラッシュを当てれば勝ち確定だ。
ならばやられる前にやるしかない!
「キックアップ!」
振り向いて確認する暇はない、うつ伏せのまま、身体をしならせ跳ねて、三点倒立。
腕と腰をバネのように使って天に撃ち出す両脚を途中で前後開脚、やはり背後にいたソレを捕らえた。
どうやら蹴りは腕に阻まれていたようで、はじき返される。しかし、弾かれたエネルギーすら利用して跳ね起きてみせる。
態勢が整った。
「錬成……」
「させねえ!」
首目掛けた攻撃と見せ掛ける視線誘導、奴の警戒がそこに集中した瞬間、こちらは大きく姿勢を落とす。
股下に左腕差し込み、右腕を回り込ませて片足をガッチリと掴んだら即座にすくい上げるように力を加えて持ち上げた。
「なっ!?」
バランスを崩す。そのまま引き倒し、ハイクラッチが完全に決まった。
流れるように本日二度目の肩固め。
「使えるなら使ってみろ、瞬間移動」
「ぐぬぅ」
奴は瞬間移動を使えない。その確証が私にはある。
「二度目の【高速の加護】の前に時間稼ぎしたのもそうだ!連続して二回使えないんだろう?」
そう、同じ種類のスキルを連続で何度も使用はできない。
加速を積み重ね、閃光を放ち続け、魔獣の群れを引き連れる、そうすれば私に簡単に勝てるだろう。しかし奴はそれをしない。いやできない・・・・んだ。
「ご名答……スキルにはそれぞれリキャストタイムが存在するのじゃ……ぐっ……見事じゃな」
白い光、それは体力が底を尽きたことを示す。仮面の老婆の消失。そしてここで戦いの終わりを知らせる鐘の音が鳴る。
【バトルが終了しました。勝者:鬼桜】
目が滑るので作中でのステータス描写は極力控えさせて頂きますが、数値見るの好きな人に向けてステータスを載せときます。
現時点での鬼桜のステータス
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プレイヤー:鬼桜
LV.1
職業:ー 所属:ー 役割:ー
所持金:0エニー
HP:160/160
筋力:40(+5)
防御:40(+5)
魔力:10
魔防:20
敏捷:40
技量:40
運気:40
装備中
旅人の服セット
最初の霊剣
所持品
-
スキル
PASSIVE
-
ACTIVE
【両手剣術:斬撃】
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レベルアップするとHPに+3、武器使いは筋力と防御に+3、魔防に+1(魔法使いは魔力と魔防に+3、防御に+1)他に+2ずつされる。
ボーナスとして2ポイントをステータスに好きなように振り分けることができる。