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今からお前に決闘を挑む  作者: アスク
日輪の華は戦場を照らす-後編-
38/79

たしか、十戒と出会った

いない間にブックマークと評価が伸びてて椅子から転げ落ちました

ありがとうございます!



 目を覚ましたらお昼になっていた。最後の記憶は自警団の連中と戦って、残った2人が強くて、100勝を突破して、それから、それから……。

 十戒ってやつが目の前に現れたんだったか。


 私はベッドの上にいた。仕切りが鉄の頑丈なやつだ。耳には例のヘッドホンがついている。

 きっと強制的にログアウトしたんだろう。



「あーーー」



 意識が朦朧とする。頭が痛い。ていうか、なんていうか。



「みゃーーーん」



 猫を吸いたい。




◆◆




「おいおいせっかく勝利の宴をあげようとしたのによ、どこいったと思ったぜェ……で、なにしてんだお前」




 突然姿を消した桜。嘉靖は、狂夏に「探してくる」と一言断ってからログアウトし、修理屋【陽炎】にきていた。

 確かに桜はそこにいた。そしてそれをみている店長は苦笑している。



「かわいーなーーねこ」


「ごろろろーーー」



 顎の下を撫でられて、喉を鳴らす三毛猫の店長代理。それをにんまりと満足そうな笑顔で眺める桜。普段の威厳が嘘のように、甘ったれた声を出していた。




「これは所謂あれだね、オーバーヒート」


「あァそれか。んじゃほっとけば治るな」


「私の店長代理だにゃーー」


「ミャーーーーッ!!」



 本気を出した後の反動か、極度の疲労による甘えん坊モードともいうべきか。

 実は過去にも複数回こうなったことがあるので、店長と嘉靖も今更慌てるわけでもない。

 が、それでも反応に困るというもの。



「みゃーーーーー」


「ミャーーーーー」



 擦り寄る女子、擦り寄られる三毛猫。一時的に、幼児退行……とまではいかないが、桜の根底にある女の子な部分が露わになってしまうのであった。




◆◆



 ごっほん……




「見たか?」


「にャーーん」


「死ね!」


「ぐぼはぁっ!」


「あっ、嘉靖君が死んだ」



 大変お見苦しいところを失礼した。大丈夫、私は今すこぶる冷静だ。

 現在修理屋【陽炎】のガレッジ。空き瓶入れを椅子のように立てて向き合う三者。インスタントな火鉢と店長差し入れの焼き鳥を食べながら喋っていた。



「ま、まあ仕方ないよ。そういう時もあるさ。お、女の子だからね桜ちゃんも」


「イエローカード」


「ひぇっ……取り敢えず!久々に本気出したみたいだけど、ゲームは気にいってくれたかな?」



 気にいったかと聞かれれば答えは当然YESだ。気にいった、ああ気にいったさ。なにせあんだけ強い奴と戦えたんだ。満足だ。

 だがしかし。



「アッシュ・ベルナデッタに唐獅子牡丹、まずはあいつらを倒すまでうちは止まらないぞ」



 そう言ってやると店長は微笑んでいた。



「楽しそうで何より」


「まあな。あーーー、実は今日ここにきたのは店長代理と戯れるって理由だけじゃない(・・・・・・)。話があってきた」



 そう、このゲームに一番詳しいであろう店長に聞きたいことがあってわざわざ店に来た。それは勿論十戒について。



「お!なんの話だァ?」


「あっ、生き返った」


「ったりめえよ。俺は頑丈だからよ」


「脳みそも硬いけどな、全教科赤点」


「副教科赤点じゃねえ、はい論破ァ!」


「んなもん授業聞いてりゃわかんだから当たり前だろ」


「俺らそもそも高校中退してっけどなァ!」


「「ハハハハハハ!!」」


「君ら会話のレベル低すぎない!?」



 うるせーうるせー!こいつと一緒にされるのだけは勘弁だ。もっと頭がいいことぐらい言えるっつの。例えばほら、その、アレだ。



「おい、うちのバイクどうなった?」


「うん、話逸らしてきたね。それはもうちょいまって」



 見ると先日のズタボロっぷりから間違えるくらい綺麗になった相棒が。



「きれいに治ってるけどな」


「見た目はね。中身がそれはもうオンボロだから」



 とまあ、与太話もほどほどに、本題に入ろう。



「単刀直入に。例の十戒が出た」


「っ!?」


「あ、店長が死んだ」



 ガタン、と音を立てて店長が後ろに崩れた。背が小さいので絵的には可愛いかもしれない。よたよたしながら立て直す。



「うっそでしょう?」


「はっはァこれで十戒に会ってないのは店長だけになったなァ」


「君らリアルラック極振りかな?」



 運は……そこそこだと思ってる。



「てか嘉靖、あんたも十戒と会ったのか?」


「おう?でっけー緑色のヒトだぜ」


「うちは黒い服着たイケメンだったな。たしかノースリーブだった気がする」



 微かな記憶だが肌がやたら白くて肩が目立ってたような。

 おっと、店長が興味津々だな。



「貴重なサンプルデータだよこれは。いやね、僕はてっきり十戒ってのは十個の凄い魔法と武器だと思ってたんだよ。で、嘉靖君が緑巨人に会ったから10体のモンスターかなって。そしたらどうだい人間ときたか」


「急に饒舌になるな……」


「ようわからんがテンション上がってきたぜ!」



 あからさまに興奮している店長だったが、むっすーーっと頬を膨らませて、場酔いしてる嘉靖を指差した。


「この鶏クソポンコツは忘れたとか抜かしてたから聞きたいんだけど十戒の名前わかる?ほんと、嘉靖君恥を知れ恥を」


「っせーなァ、一々覚えられっかよ」



 つんつんと人差し指でおでこをつつかれている。それをやめろと振り解く。



「あーーうちもワスレタ」


「はぁぁぁん!?情報戦舐めとんのかワレェ!」



 わかりやすいように憤慨する店長に、硬いのをいいことに今度は頭をばっしばし叩かれサンドバックと化した嘉靖を鼻で笑う。

 嘘だよ、ちゃーんと覚えてる。



「ローグ。真なる覇神ローグヴァルハロード。あんたが重要って言うからなんとか覚えたぞ、感謝しろ」


「さんきゅーなのだよ。なるほど、人間ときたか」


「つまるところ十戒ってなんだ?敵か?強いのか?」



 直球で私の思ってることを言う。十って付くから10人いるとかだろうか?

 店長は渋い顔をしてうーーーんと俯く。



「結局なんなん?って質問に対して僕が言えることは『それな』なんだけどね。曰く、十戒とは世界」


「はぁ?なーーにいってんだ?人間だろ?」


「俺の十戒は巨人だったぞ?」



 それもこれもチュートリアルのNPCに根掘り葉掘り聞きまくったことなんだけどね、と注釈を入れてから、店長は説明を始めた。



「この世界のストーリーって覚えてる?」


「「忘れた」」


「おーけー。パッケージの文章を踏襲しながら説明といこうか。十戒と世界について」



 腰を据えて話すようだ。タバコを咥えて、ライターに火をつける。すーーーっと吸って、煙を吐いて、肺を汚す循環運動。本当に童顔に似合わないなと思いながら、私も焼き鳥を喉に流した。

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