表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私立英証雌雄学園  作者: 甘味 桃
第8章:セミの音を聞く間もなく
90/95

第5節:陰陽師ってまだいるのかな

唐突な発言の真意を確かめる術はないため、そのまま自分の考えを返答する。


「・・・まあ、僕自身はどうなっても良い。けど父よ、僕の質問に答えてくれ」


流石の僕も穏やかではいられない。


「囮薬を飲んだのは、楓の自己責任。だが元々は、父の管理の杜撰さが原因だ。

 それで、党首としての才を失ったら、まさか見捨てるとは言わねえよな」


微弱な魔力を込めて、怒っているのを表現する。

父がどう出るのか分からない。けれど、弟を守るためなら人類の禁忌である親殺しも覚悟してる。


「・・・すまない。やはり先に話すべきだった。

 というより、香織の質問に答える前に話さなければならない」


「それって、僕が安心院の名を捨てれば楓を救えるって事?」


「正確には違う。実は、党首とその妻になった者のみに伝えられる、安心院の真実がある」


「ほうほう。安心院の真実!?」


歴史ある家系安心院。一族はおろか、実の息子にすら大和の存在を秘匿にしていた。

秘密だらけなのはしょうがない、実は秘伝の忍術があると聞かされても驚かない。

けれど「安心院の真実」何だ何だ、その中二心をくすぐるような話。早く聞きたい!


「安心院が何故魔力を持っているのか、そもそも、魔力の起源とは何か。

 そこから説明する」


交流会前、和さんの質問と同じ内容。だがそれは、楓が答えを出している。


「説明も何も、父から不明だと教わったけど」


交流会では哲学のつもりで魔力について考えた。

不明だと知っていても、あらゆる事象には理由がある・・・とか言ってみたり。


「思い出してみなさい。香織はその昔、答えに気づいている」


たかだが17年の人生を思い返す。魔力という単語が行き交う日常で、気づかないうちに僕は真実に触れていた。いつだ、違ういつかじゃない。何を言ったかだ。

それなら、僕が父の前で発言した内容に絞れる。懸命に父と一緒にいた時間を遡り、遂に答えにたどり着いた。


「・・・魔力植物」


「そうだ」


魔力植物については、父からの指導で教わった程度。だと思っていたけど違う。

奏が一族の記憶を呼び起こした事件。その時僕は、確かにこう言った。


「奏が魔力持ったら最強になれそう。今度は魔力植物を盛ろうかな」


辛子を盛ったのが事の発端であり、僕は張本人なのに全く反省していないのでこっぴどく怒られた。何気ない発言だったけど、まさか真理を突いていたとは知らなかったな。


「植物が原因と分かっても、栽培方法は確立していない。

 魔力を持つ人間を増やすには」


「子を授かる事」


再び首を縦に振り、父は話を続ける。


「それこそが、安心院が魔力の家系として栄えた理由。魔力は後生に続くほど弱まっていく。良くて隔世遺伝でA-以上を宿す。しかし安心院は魔力A、希にA+を継続的に

 授かる事ができている」


つまり、沖田先輩や佐倉さんのご先祖が、その昔魔力植物を食べたという事か。


「何で世間にこの事実は広まってないんだ?」


「発見したのが、安心院だからだ。政府にすらこの情報は伏せている」


「・・・ヒュ~。政府すら知り得ない事実を、安心院が統制してると」


「だからこそ、党首にならなければ知ることが許されない」


「ははー。分かった。楓を救うための魔力植物を探しに行けと」


安心院の名を捨て、1人の人間として世界を股にかけて魔力植物を探しに大冒険。

ついでにありったけの夢をかき集めますか!


「違う」


違うんかーい!

ズコっとこけると、どうやら父の話はまだ終わっていなかった。


「これは安心院が魔力を手に入れた話。次にどのような魔力を手に入れたのか」


そんなの四季忍術と考えるのは普通。つまりそうではない。

一族の真実という単語の意味がようやく繋がった。


「四季忍術じゃ・・・なかった」


「そう。四季の美しさを具現化し幸せを表現する様な、純潔なものではない。

 人は幸せには疎いが、不幸には鋭い。その不幸を生む感情」


おいおい嘘だろ。言いたい事は分かったけど、それが事実なのも納得いく・・・けど。


「負の感情だ。つまり、忍術ではなく呪術。忍者ではなく呪術師なんだ」


「分かった。もう分かったよ。いや正確には、新たな疑問が生まれたけど。

 安心院の名を捨てる意味は分かった」


呪術をどうやったら忍術になるのかという疑問は後だ。

だって、そんなのは後でいくらでも知り得る。

父が楓を救うため、僕に頼みたいのは・・・。


「香織には、呪術師になってもらう」


あるのか。魔力の起源とか、驚きの事実の連続だけど、全く・・・笑えてくる。

安心院には、裏の家系である呪術師が存在している。

それがどんな能力で、呪術師となった僕はどうなるのか。

恐怖が無いと言えば嘘になる。けれど受け入れる覚悟ができている。

楓を救うためなら、どんな事もやってやる。


「一族の名を捨て、呪術師となり大切な弟を救う。いい話だ」


「違う」


・・・流石に今回は心の声ではなく、自分の口で言おう。


「違うんかーい!」


始めて父にツッコんだ。観客のいない客室で親子漫才が繰り広げられる。

一体誰が笑うのかと思っていた。けど息子にツッコまれたのが嬉しかったのか、お笑いが好きなのか、父は下を向きながら身体を小刻みに揺らし笑っている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ