第5節:陰陽師ってまだいるのかな
唐突な発言の真意を確かめる術はないため、そのまま自分の考えを返答する。
「・・・まあ、僕自身はどうなっても良い。けど父よ、僕の質問に答えてくれ」
流石の僕も穏やかではいられない。
「囮薬を飲んだのは、楓の自己責任。だが元々は、父の管理の杜撰さが原因だ。
それで、党首としての才を失ったら、まさか見捨てるとは言わねえよな」
微弱な魔力を込めて、怒っているのを表現する。
父がどう出るのか分からない。けれど、弟を守るためなら人類の禁忌である親殺しも覚悟してる。
「・・・すまない。やはり先に話すべきだった。
というより、香織の質問に答える前に話さなければならない」
「それって、僕が安心院の名を捨てれば楓を救えるって事?」
「正確には違う。実は、党首とその妻になった者のみに伝えられる、安心院の真実がある」
「ほうほう。安心院の真実!?」
歴史ある家系安心院。一族はおろか、実の息子にすら大和の存在を秘匿にしていた。
秘密だらけなのはしょうがない、実は秘伝の忍術があると聞かされても驚かない。
けれど「安心院の真実」何だ何だ、その中二心をくすぐるような話。早く聞きたい!
「安心院が何故魔力を持っているのか、そもそも、魔力の起源とは何か。
そこから説明する」
交流会前、和さんの質問と同じ内容。だがそれは、楓が答えを出している。
「説明も何も、父から不明だと教わったけど」
交流会では哲学のつもりで魔力について考えた。
不明だと知っていても、あらゆる事象には理由がある・・・とか言ってみたり。
「思い出してみなさい。香織はその昔、答えに気づいている」
たかだが17年の人生を思い返す。魔力という単語が行き交う日常で、気づかないうちに僕は真実に触れていた。いつだ、違ういつかじゃない。何を言ったかだ。
それなら、僕が父の前で発言した内容に絞れる。懸命に父と一緒にいた時間を遡り、遂に答えにたどり着いた。
「・・・魔力植物」
「そうだ」
魔力植物については、父からの指導で教わった程度。だと思っていたけど違う。
奏が一族の記憶を呼び起こした事件。その時僕は、確かにこう言った。
「奏が魔力持ったら最強になれそう。今度は魔力植物を盛ろうかな」
辛子を盛ったのが事の発端であり、僕は張本人なのに全く反省していないのでこっぴどく怒られた。何気ない発言だったけど、まさか真理を突いていたとは知らなかったな。
「植物が原因と分かっても、栽培方法は確立していない。
魔力を持つ人間を増やすには」
「子を授かる事」
再び首を縦に振り、父は話を続ける。
「それこそが、安心院が魔力の家系として栄えた理由。魔力は後生に続くほど弱まっていく。良くて隔世遺伝でA-以上を宿す。しかし安心院は魔力A、希にA+を継続的に
授かる事ができている」
つまり、沖田先輩や佐倉さんのご先祖が、その昔魔力植物を食べたという事か。
「何で世間にこの事実は広まってないんだ?」
「発見したのが、安心院だからだ。政府にすらこの情報は伏せている」
「・・・ヒュ~。政府すら知り得ない事実を、安心院が統制してると」
「だからこそ、党首にならなければ知ることが許されない」
「ははー。分かった。楓を救うための魔力植物を探しに行けと」
安心院の名を捨て、1人の人間として世界を股にかけて魔力植物を探しに大冒険。
ついでにありったけの夢をかき集めますか!
「違う」
違うんかーい!
ズコっとこけると、どうやら父の話はまだ終わっていなかった。
「これは安心院が魔力を手に入れた話。次にどのような魔力を手に入れたのか」
そんなの四季忍術と考えるのは普通。つまりそうではない。
一族の真実という単語の意味がようやく繋がった。
「四季忍術じゃ・・・なかった」
「そう。四季の美しさを具現化し幸せを表現する様な、純潔なものではない。
人は幸せには疎いが、不幸には鋭い。その不幸を生む感情」
おいおい嘘だろ。言いたい事は分かったけど、それが事実なのも納得いく・・・けど。
「負の感情だ。つまり、忍術ではなく呪術。忍者ではなく呪術師なんだ」
「分かった。もう分かったよ。いや正確には、新たな疑問が生まれたけど。
安心院の名を捨てる意味は分かった」
呪術をどうやったら忍術になるのかという疑問は後だ。
だって、そんなのは後でいくらでも知り得る。
父が楓を救うため、僕に頼みたいのは・・・。
「香織には、呪術師になってもらう」
あるのか。魔力の起源とか、驚きの事実の連続だけど、全く・・・笑えてくる。
安心院には、裏の家系である呪術師が存在している。
それがどんな能力で、呪術師となった僕はどうなるのか。
恐怖が無いと言えば嘘になる。けれど受け入れる覚悟ができている。
楓を救うためなら、どんな事もやってやる。
「一族の名を捨て、呪術師となり大切な弟を救う。いい話だ」
「違う」
・・・流石に今回は心の声ではなく、自分の口で言おう。
「違うんかーい!」
始めて父にツッコんだ。観客のいない客室で親子漫才が繰り広げられる。
一体誰が笑うのかと思っていた。けど息子にツッコまれたのが嬉しかったのか、お笑いが好きなのか、父は下を向きながら身体を小刻みに揺らし笑っている。




