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私立英証雌雄学園  作者: 甘味 桃
第7章:一別の夏
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『第8節:名前が書いてあるプリンを何故食べるのか』


そして僕らはみんなの元へと向かった。

A+の帰還に多くの生徒が歓喜する。付属品の僕は直ぐに蚊帳の外へと追い出される。

何故か手島が僕の所に来ると、窈窕の佐倉という人から事件の一部始終を聞いたらしい。


「お前も、頭討伐に協力したそうだな」


僕のもう1つの魂のおかげだけど、そういう事にしなければ話がややこしくなるから

肯定する。どうせ手柄目当ての調子乗りとか、罵倒されると思ったけど、意外にも謝意を

述べられる。それは薬師丸先生から聞いた話だった。


「百合を助けてくれて・・・あ、ありがとな」


百合さんは両腕を失い、鞘に用意されていた血液増幅薬を飲まなければ絶命するほど、

瀕死だった。まあ、僕がいなければ死んでいたとも言えるけど、何より薬を用意していた

あんたが、百合さんを助けたと言うべきだろう。


「私も話に加えてくださる」


2人きりでいたのが目立ったのか、百合さんが歩み寄ってくる。


「一成、ありがとう。貴方が私の為にと用意してくれた薬が無ければ、私はこの世にいなかった。そしてごめんなさい。武力A+である事に慢心して、余計なお世話と否定して」


武力A+が瀕死となる状況なんて考える方が難しい。けれど、万が一の事態を考えた

手島の百合さんへの想いは、以外と純粋なのかもしれない。


「謝罪はいらねえよ。無事だったなら、それで」


「・・・一成、婚約の話を戻してもらえるかしら」


「何でだよ。お前はもう自由の身だろ。元々許嫁の話はなかったのに、百合がA+ってだけで決まった話だ。薬の件で恩を感じてるなら、気にするな」


あーなるほど。百合さんが武力A+だから、優秀な子孫を残すために両家の親は2人を

取り繕うとしたんんだ。手島は百合さんの申し込みを断るが、百合さんは改めて

許嫁ではなく、学生らしい申し込みを切り出す。


「では、私と付き合ってください。升園家の人間としてではなく、窈窕の生徒として

告白します。私は貴方のことを愛しています。」


「ば、だって、お前は香織が好きなんじゃ。」


ん???サラッと爆弾発言だが、それ本人の前で言う?


「まあ、そこら辺の話は置いといて、あんたの気持ちはどうなんですか」


本人の本音を諭すように言うと、手島は口元をガクガクして分かりやすく動揺する。


「よ、よろしくお願いします」


2人は俯きながら手を重ねる。本日は2組のカップルが誕生、僕には一切女っ気が無い。

というか、僕のリア充成分は自分ではなく他人へと流れてるんじゃないか?

心の中で愚痴っていると、次に手島は謝罪してきた。


「香織、謝らなければいけないことがる。負けた腹いせに、お前の悪い噂を

周りに広めてたんだ。本当にごめん」


「さいですか。じゃあ、お1つお願いを聞いていただこうか。

僕が隠してる能力については、ご内密に」


「そんな事でいいのか?」


「魔力系には重要なんですよ。秘匿にしておかなければならない能力なもんで」


「分かった。口が裂けても話さない」


「私も、一切口外いたしません」


「では、お2人の時間をお楽しみください」


視線を合わせては照れくさくそっぽを向き、また合わせる。初々しいカップルを早急に

視界から外し、旧校舎の寝室へと歩き出す。歩くと途中で、ふと、重大な事に気づく。

窈窕の佐倉さんは僕のもう1つの魂を知っている。手島は僕を毛嫌っていたから、保身のため強いという情報ではなく、ズルをしたという情報を拡散していた。

それは問題無いが、佐倉さんは普通に情報を拡散しかねない。急いで口封じしなければ。

しかし、窈窕の魔力クラス3年ということしか知らず、お疲れモードの集団に飛び込む勇気もない僕は、どうすれば良いのかと考え込む。すると、再び眼前に獰猛な幻獣が何もない空間から現れる。


「ケルベロス・・・なら」


「よっと。あ、安心院君」


楓達を送り届け終えたのか、ケルベロスの能力で沖田先輩が現れる。

総合戦出場者は、佐倉さんの空間魔法に避難したから顔を知っている。


「沖田先輩、窈窕の佐倉という人はどこにいますか」


「萌香さんならさっき学園に帰ったよ。帰宅希望者をケルベロスの能力で学園に送ったの。

 赫夜ちゃんも、楓君と一条君を看病するって学園に帰ったわ」


うわー!最悪だ。窈窕は男子禁制。よほど重要な用事でない限り、立ち入る事はできない。

もし事件の調査とかで、会場にいた佐倉さんがベラベラ話したら・・・マズい。


「安心院君のこと凄い誉めてたよ。爪を隠した能ある鷹だって」


「それ、いろんな人に言ってました?」


「ん~私以外には話してないと思う。学園に着くと、萌香さん1人で校舎に向かってたし」


うっし、ぼっち万歳。学園内で広まる心配はないから、調査前に口封じしないと。


「どうしたの?」


「ちょっと、佐倉さんに用事が。そうだ、母なら」


一族内専用の緊急連絡端末を取り出し、母に連絡する。この端末を使うのは初めてであり少少しワクワクするが、落ち着いた母の声を聞くことで平静を取り戻す。


「何があったの」


緊急のため無駄を省き、用件から入るため話は速く進む。窈窕の人との思い出話をよくしていた母なら、生徒と面会できるよう取り入ってくれないかという考えは、見事的中する。


「それで、どんな風に告白するの」


「・・・は?」


「言葉とムードは大事よ。会う前に必ず私に相談しなさい」


佐倉という人に会いたいとしか伝えてないため、僕が好きで会いたいと勘違いしている。

訳を説明すると、いつも冷静な母から初めて落胆した声を聞く。


「あらあら、せっかくだし食事に誘えば?」


「窈窕は英証と違って、外出禁止だよね。連れ出したら僕殺されちゃう」


「家同士の会合なら、特例で外出許可がでるのよ。うちはいつでも大丈夫だから、

 堂々と誘いなさい」


ここでちまちまと話し合っても意味が無いと判断し、「へーい」と返事をして電話を切る。

面会の目処が立ちつつあるが、お嬢様学園に1人で行く事を考えると少し憂鬱だ。

格好に礼節に、気をつけなければいけない事だらけ。うおー面倒くせー。

それに手ぶらじゃあれだよな、何を持って行けば良いんだ。

頭を抱えていると、気遣いの鬼が近くにいるのを忘れてた。


「だ、大丈夫?」


「大丈夫なのかどうかも分からないです。沖田先輩から見た佐倉さんって

どんな人ですか?」


「あまり話した事ないけど、さっき話した感じだと良い人かな」


なら話は通じるか。そうだ、女性からの意見を得よう。


「女性って何を送られると喜びますかね」


「プレゼントとか貰ったことないし、う~ん。

 佐倉さんにだよね、今度一緒に買い物行く?」


「マジッスか、お願いします」


沖田先輩に挨拶を済ませ、校舎に向かう。女性目線から選んでもらえるなら安心だ。

ふ~安心安心。にしても沖田先輩がプレゼント貰ったことないとは意外だな。

意外だ意外だ・・・あ、やっべ。女の子と2人で出かけるの初めてだ。

焦りだした直後、通常端末に非通知からの着信があり、一瞬恐怖を覚えたが、相手の第1声のせいで恐怖が継続される。


「今晩は。香織」


凜とした声の主は奏の許嫁、二 扇律。何故、僕が恐怖しているのか。

扇律さんが僕を呼び捨てする時は・・・。


怒っている時だから。


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