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私立英証雌雄学園  作者: 甘味 桃
第7章:一別の夏
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『第1節:なして学校には球技大会なる行事が存在するのか』


不幸とは奪われること。不幸とは裏切られること。

だから私は人に与える。だから私は人を信じる。

得た製造技術を駆使して、人と繋がりを大切にして。


日本での生活は辛いことも勿論あったけど、幸せな時間の方がずっと多かった。

英証は林道さんが言ってた様に、自分の学びたい事を自由に学べる。

ステータスで卑下になる人もいたけど、心から笑い合える友達に出会えた。

私はこれから、大切にしたい人達、私を大切にしてくれる人達と生きると決めた。なのに・・・

また奪われた。愛する人の命を。天罰なのかな。裏切られたのは私の思い込みで、ダニーの気持ちに気づかなかった事への。


「そうか。お前達を最も追い詰めたのは、この俺という訳か」


事件全体の解説を終えると、先ほど目的を達成して喜びの表情を浮かべていた頭 卵値は

また感情を込めずに感想を述べる。


「結論を言えばそうね。怪物の登場は驚いたけど、結界に幽閉、A+の戦闘員3人を

 相手取った貴方の方が恐ろしいわ」


これは事実。怪物を倒したのはかの一条一族、安心院一族。その2人が倒したからと言って、決して弱いという訳ではない。それでも、剣豪の百合さんの両腕を奪い、私の兵器を

破壊し、ダニーの心理を読み自殺に追い込んだ。私に手を出さない契約でも、終局に引き入れた時点で私を殺す目的を達している。悔しいけど完敗。


「親切丁寧に解説してくれたし、更に礼として質問があれば答えるよ」


聴きたいことがありすぎて、何から聞けばいいのかと迷った。一先ずは・・・。


「貴方はどうして、えっと、こんな事を?」


「知力のA+にしては、記憶力が無いのか。依頼されたからだよ」


「違くて。貴方は終局に閉じこもる事が、計画に含まれてるって言ってたわよね。

 つまり初めから死ぬつもりだったの?」


「そういう事か。本当は獄中で生涯を終えようとしたが、脱獄させられてな。

 依頼を受けるのぐらいは構わないが、その後の面倒は見ないなどど言われた。逃亡生活は

面倒くさいため、俺が自死をしてもいいという条件で引き受けた訳さ」


黒幕は脱獄を手引きした依頼主。精神操作をできる(本当は違うけど)殺人鬼を、刺客に使いたい気持ちは分かる。でも、相手が協力するかは別。黒幕はそれでも、命令を強制させるほどの手段を持つほどの強者?


「その依頼主については教えてくれないのよね」


「残念ながらな。先の禊の契りで、依頼主について話そうと思考した時点で、俺は死ぬ」


「計画全般は杜撰なのに、周到な所はあるようね」


「お前は怒るかもしれないが、俺に殺された方が良いかもしれない。さもなくば、新たな刺客が送り込まれ、新たな被害者が出ているだろう」


本当に腹ただしい。被害を出したのは他でもない自分のくせに、何を悠々と今のうちに

殺されろなんて言えるの。けど、私がいるせいで他の誰かが傷つくのは嫌だ。

残酷な現実を突きつけられ、生まれて初めて自分の存在を呪いたくなる。手を自分の心臓の位置に置くと、鼓動が速くなっているのが分かる。このまま握りつぶしてしまいたい。

そう思っていると再び強大な衝撃音が壁から轟く。


「まさか、まだ奏君と香織君は戦っているの。」


「へー、これが安心院の魔力か。それに対抗する一条の戦闘力も凄まじい。

 なるほど。政府が俺を逮捕した理由が、よく分かったよ」


「え、あの2人が・・・安心院と一条が貴方の逮捕に関与してるの?」


気になっていた事の1つ。本当は政府直属の頭が、何故逮捕されたのか。


「私設運営の調査組織で、唯一安心院が俺の存在にたどり着きそうになったんだ。

 俺は殺せば問題無いと提言したが、政府はもし安心院を敵に回せば、一条も相手に

 する事を恐れ、逮捕する事で自分達の闇を葬った」


・・・私の後輩達は、それほどまで凄い人だったんだ。うんうん。今更驚く必要はない。

もう知っている。香織君の才能を奪った弟を想う寛大さ。楓君の自分以外の人の為に

行動できる優しさ。奏君の直向きに努力する賢明さ。赫夜さんの正しい事を成そうとする純粋さ。私は、とっくに知っている。


「残念だったわね。政府に利用されて監獄生活だなんて。」


「そうでもない。独房では注文した品は用意させたし、快適だった。

代わり俺は得意の結界魔法で、監獄のセキュリティを強化してやった。」


感情を込めずに、淡々と真実を語る頭の言葉を聞けば聞くほど、分からない。

戸籍がないからと政府に利用されて、都合が悪くなれば投獄され、いくら快適な生活を送れたとしても、そんな自由の無い人生をどうして許容できるの。うんうん。

考えても仕方がない。私が今するべき事はどうにかして結界を解除させて、頭にみんなを

傷つけた罪を償わせる事。どうしたら、どうしたら・・・。

頭を使うのは専売特許の筈なのに、思考がまともに働かない。


「助けて」


不意に漏らしていた。考える事を放棄して本音が出ていた。この言葉が届くのは、目の前の殺人鬼にだけ。横たわるダニーには届かない。


「助からない。事実だ。せめてもの救済は自死だな。俺はシャーロットを殺せないし、 

武器が破壊され自死する術は、舌を噛み千切り出血死するのみだ」


・・・そうだ。私の武器は消されたんじゃなくて、破壊されたんだ。

壊れたなら、直せばいい。でもそんな隙は、いや、待つんだ。出にくだけで感情はある。

さっきも真に嬉しくて、高笑いをしていた。なら、真に心が疲れれば表情に出る。

好機を逃さず、絶対に活かす。だから待つんだ。その時まで。


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