『第10節:単行本は帯が有る方が好き』
萌香さんにみんなを異空間に移してもらい、楓君がいる所まで運ぶと、まだダニーと百合さんは着いていない。でも、遠方から銃声と大樹が斬り倒されるのが確認できる。
着々とこっちに向かってる。
「・・・魔力を感じない。うそ、え、楓は諦めたの?」
「大技って香織君が言ってたし、連発出来なくて準備してるんじゃないかな。」
「そっか。それはそうと、2人とも早く来てよー。」
萌香さんは一刻も早く結界から出たいのか、ずっと慌てている。
「ちょっと。私じゃ力不足?」
「A+1人と3人。どっちが安心かって聞かれたら後者でしょ!」
「う、確かに。」
「でも良かった。留学生の貴方達がいなかったら、今回の事件は対応できなかった。」
「ダニーがいてくれたのは本当に偶然だけど、どうして帝王に。」
「そう言うレーン財閥のお嬢様はどうして英証に?
私あまり人と交流しないからそこらへんの事情知らないの。」
「え、英証は生徒の自主性を第1に考えてくれるから。向こうじゃA+は政府の為にって
管理教育されて私の自由を奪いかねないし。」
「へ~。レーンの生まれでも自由が無いんだ。そんなの嫌よね。」
「うん。英証に来て、みんなと出会えて良かった。」
これは本当。みんなとの過ごした日々は一生の宝。けれど、ダニーの顔を見る度に
思い出してしまう。あの・・・。
「おーい。シャロー、萌香―。」
大樹が斬り倒され、百合さんとダニーが現れる。後は結界に穴を空けて脱出を。
すると背後から何かを高速で斬りつける音が聞こえてくる。
「シャロ!」
「萌香!」
「「そこから離れろ!!!!!!」」
突然血相を変えて百合さんとダニーは速度を上げて突き進んでくる。
次の瞬間、後方からガラスが割れた様な音、次に遠方から何かが弾ける音が轟く。
背後に何がいるのかは分からない。けど・・・。
2人の言われたとおりこの場を離れないとと思い、萌香さんを抱えて離脱する。
「お、鬼だ。」
後方にいる何かを見た緑さんは言葉を漏らす。鬼。まさか妖怪までいるなんて。
そう思ったけど違った。
「奏君?」
結界の向こう側から現れた奏君は今まで見たことがないオーラ?を放っている。
後ろには楓君がいる。外の様子は分からないけど、とにかく無事で良かった。
「奏。」
「あ、この前英証で手合わせした奴。」
2人が警戒してたのは奏君のただならぬ気配。それもしょうがない。同じ学校の私も
あんな奏君を見たことがない。
「そこか。」
奏君は向かい合う百合さんとダニーを無視して突き進む。まるで標的がその先にいると
分かっているみたい。
「シャロ先輩。良かった、無事でしたか。」
「楓君も無事みたいね。奏君は無事と思って良いのかしら。」
「はい。訳あって正気ではないのですが、問題はないと思います。」
「やけに殺気立てて走っていったな、奏の奴。」
「お前も見たことある。確か、香織の弟の。」
「楓です。兄上は・・・この魔力、まさか!」
ダニーと百合さんの会話の最中、香織君ともう1つの魂が入れ替わったのを感知すると
楓君は視線を会場の中央に向ける。
「うっそ。もうあのキメラを倒してる。やっぱ安心院は化け物ね。」
キメラの姿は消え失せている。きっと、もう1つの魂が倒したんだ。
「キメラ。あの神話上の。やはりこちらにも。」
「ってことは、会場にもあんな化け物が現れたのね。みんなは無事なの?」
「無事かは分かりませんが・・・。」
楓君の話では、外では何者かが魔力植物でみんなを眠らせ連れ去った。驚くことに会場には八岐大蛇が現れ赫夜さん、奏君、楓君は3手に分かれて外の通信、大蛇の撃破、結界の破壊を試みた。奏君の変貌は謎の酔いによるもの。気づけば赫夜さんの魔力が消えている。結界はあるのに。
「まさか赫夜さんも連れ去られちゃったのかな。」
「・・・いや。」
「一方通行の条件で強度を底上げしたんだ。」
魔力組の楓君と緑さんが真相を予測する。
「会場の外の結界は脱出可能、侵入不可の条件で組み込まれてたら
結界が健在で赫夜って人が感知できないのも納得いく。」
「じゃあ、他の奴らは外に放り出されたんじゃないか。万が一、奏達みたいに
取り逃がした奴がいた時の為に、保険で大蛇を用意してたのも説明できる。」
窈窕組の考察は的を射ているけど、ダニーが反論する。
「でもさ、会場の結界は出入り不可能なのはおかしくないか?
今の話だと、敵は会場にいる誰かを閉じ込めるのが目的だろ。
なら、侵入可能で脱出不可にすれば条件ってやつが適応できるんじゃ。」
その意見に反論したのは楓君だった。
「確かに敵の目的は総合戦参加者の誰かを閉じ込める事。
正確には、総合戦出場者のみを閉じ込める事だと思います。」
「部外者の侵入は避けたいって事か。」
「はい。そのための3重の結界。①会場の結界は対象のみを閉じ込めるため出入り不可。
②会場の外は1度出れば入ってこれない。③旧校舎の周りは恐らく、入れるけれど
出られない。②と③は①にたどり着けないようにするための一方通行。」
「どゆこと?」
「③は外を警護してる教師陣用。結界を確認したら中に入りたいと思うでしょ。
でも条件的に入れるけど②があるから①にはたどり着けない。②の結界に閉じ込め
られた人は外に出ようとするけど、③があるから出られない上に戻って来れない。」
「シャロ先輩の言うとおりです。赫夜さんはきっと、破壊しようと攻撃したら
そのまま外に出てしまったのだと思います。」
「結果的に②と③に閉じ込める。奥が深い!!・・・でも、奏って奴が結界を破ったぞ。」
「はい。ですので、敵は次の策に移るはずですが、その気配が無い。」
「その次策も、あの一族共のせいで無駄となったな。まったく、あの一族の存在は昔から 鬱陶しいことこの上ない。」
気づけばそこに、白と黒のボーダー柄を着た男性が1人。声色も髪型も顔つきも、何もかも
特徴が無いのが特徴の人がいる。いつ、どこから、どうやってそこにいたのかは分からない。
けど、口調から黒幕の可能性が高い。
「夏季風物詩 花火 憑依」
楓君が真っ先に攻撃に移る。右腕が色彩豊かに輝く。するとダニーが私と緑さんを抱えて
その場を離脱する。百合さんのダニーの動きを確認すると、空高く跳躍した。
「安心院体術 地の術 殺凸」
綺麗な爆発音が響く。あれが安心院の大技。攻撃が目的なのに見る者を虜にする。
しかし、楓君は結界に閉じ込められ、攻撃は敵に届いていなかった。
「萌香、手荒で悪いが、投げるぞ。」
「なげ、キャーーー!!」
ダニーは萌香さんを軽々と会場の外に投げ込む。それも当然。
あの男からは圧倒的な敵意を感じる。ここにいては危険。
A+3人で叩けば・・・甘い見立てを1秒後に後悔する。




